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書籍名

知財とパブリック・ドメイン 第2巻 著作権法篇

判型など

420ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2023年2月

ISBN コード

978-4-326-40415-5

出版社

勁草書房

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本書は、合計三巻本で構成される『知財とパブリック・ドメイン』の第2巻であり、著作権法を扱う。この一連の企画は、科学研究費助成事業・基盤研究S「パブリック・ドメインの醸成と確保という観点からみた各種知的財産法の横断的検討」(2018~2022年度) の成果である。
 
従来、「パブリック・ドメイン」は、知的財産権の及ばない領域のことを意味するものとして、ともすれば、意識的または無意識的に、知的財産権に対立するものと考えられることが多かった。しかし、知的財産権という制度を設ける目的が、知的財産の創作を促すことで産業や文化の発展を期するところにあるのだとすると、じつは、知的財産権は究極的には皆が利用できるパブリック・ドメインを醸成することを目的としていることになる。
 
ところが、従来の知的財産法学の世界では、知的創作物や創作者概念に関心が集中する反面、パブリック・ドメインは知的財産権の対象ではないものとして消極的に定義されるに止まり、スポットライトが当てられることは稀であったと指摘する文献に接したことが、本研究の端緒となった。たしかに、知的財産法の目的が産業や文化の発展にあるのだとすると、知的創作物の創作の奨励とその保護は、産業や文化の発展を実現するための手段だということになる。そして、産業や文化の発展は、パブリック・ドメインを豊かにしその利用を確保することで果たされるはずである。そうだとすると、パブリック・ドメインの醸成こそが、知的財産法の究極の目的であると理解しなければならない。
 
たとえば、本巻が扱う著作権法の分野では、創作者の立場から事前の選択肢に焦点を当てる結果、多数の選択肢から少数のものを選びとるとただちに創作性を肯定する結論がとられることがある。工業デザインについても創作した以上は、著作物性を認めるべきであるという結論がとられることもある。著作権を制限するフェア・ユースを導入するためにはそれを支える立法事実があることが要求される。存続期間延長の効果が不明な場合に、創作者の保護を優先する国際情勢との調和を理由として、期間延長を認めるという見解が主張される。これに対して、本研究は、後発の利用者・創作者に十分なパブリック・ドメインを残すためには、事前ではなく、事後の選択肢に焦点を当て、そのような少数の選択結果については著作物性を否定する。また、全ての創作物が著作物となるわけではなく、著作権法が保護を与えるべき創作物を文化の範囲要件で限界づけるという発想の下、工業デザインについて著作物性を否定する。そして、著作権の制限や存続期間の場面でも、むしろ著作権の保護を主張する者のほうに、立法事実を要求している。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 田村 善之 / 2025)

本の目次

第1部 総論

第1章 文化創出におけるパブリックドメインの役割──オープンソースソフトウェアとマッシュアップの事例[ブラニスラヴ・ハズハ(翻訳:津幡 笑)]
 I はじめに
 II 著作権法に関する伝統的な見解の限界
 III オープンな生産形態とプロプライエタリな生産形態
 IV 結論

第2章 著作権法による自由[上野達弘]
 I はじめに
 II 3つの最高裁判決
 III 考 察
 IV おわりに

第3章 フランスにおける著作権と表現の自由の「公正なバランス」の探求──Klasen事件・カルメル派修道女の対話事件を中心に[比良友佳理]
 I はじめに
 II 従来の判例
 III Klasen対Malka事件破毀院判決(2015年5月15日)
 IV カルメル派修道女の対話事件破毀院判決(2017年6月22日)
 V Klasen事件差戻控訴院判決(2018年3月16日ヴェルサイユ控訴院)
 VI カルメル派修道女の対話差戻控訴院判決(2018年11月30日ヴェルサイユ控訴院)
 VII おわりに

第4章 ダウンロード違法化拡大になぜ反対しなければならなかったのか?──インターネット時代の著作権法における寛容的利用の意義[田村善之]
 I はじめに
 II 改正の経緯
 III なぜ反対しなければならなかったのか?
 IV 改正法の解釈上の課題

第2部 著作物性

第5章 著作権法上のアイデアに関する一考察──アイデア・表現二分論におけるアイデア二分論の試み[金子敏哉]
 I はじめに
 II アイデア・表現二分論を巡る議論状況
 III アイデア・表現二分論におけるアイデア二分論
 IV おわりに

第6章 香りと味の標章性・著作物性再考──欧州の判決例等を手がかりに[駒田泰土]
 I はじめに
 II 香り・味の標章性
 III 味の著作物性
 IV 考察
 V おわりに

第3部 著作権の保護範囲

第7章 著作権の保護範囲[田村善之]
 I 序
 II 類似性要件の位置付け
 III 類似性の判断基準
 IV 類似性要件の判断手法

第4部 著作権の制限

第8章 柔軟な権利制限規定の設計思想と著作権者の利益の意義[前田 健]
 I はじめに
 II 柔軟な権利制限規定にみる「著作権者の利益」
 III 「柔軟な権利制限規定」の柔軟性
 IV 条文の解釈
 V おわりに

第9章 著作権の制限規定の立法をめぐる今後の課題──2018年・2021年著作権法改正を踏まえて[村井麻衣子]
 I はじめに
 II 2018年・2021年著作権法改正
 III 著作権の制限規定の改正をめぐる傾向と今後の課題
 IV おわりに

第10章 権利制限規定・法定許諾による著作物の利用と対価の還流──英豪両国の著作権法を手がかりに[小嶋崇弘]
 I 問題の所在
 II 英国著作権法におけるライセンス優先型権利制限規定
 III オーストラリア著作権法における法定許諾
 IV 若干の検討

第11章 著作権法における補償金スキームによる利益配分モデルの補完[孫 友容]
 I はじめに
 II 著作権法における補償金制度
 III 補償金スキームのメカニズム
 IV 補償金スキームの役割と課題
 V おわりに

第12章 美術鑑定書判決以降における引用の裁判例に関する総合的研究[平澤卓人]
 I はじめに
 II 裁判例の判断枠組みによる分類と集計
 III 32条1項の適用を否定する要件毎の集計
 IV 「目的上正当な範囲内」要件の考慮要素
 V 「公正な慣行に合致」の要件について
 VI 総合考慮説について
 VII 新二要件説について
 VIII 各要件の判断方法についての検討
 IX おわりに

第13章 Google v. Oracle事件合衆国最高裁判決──Java APIを実現するプログラムのフェア・ユースについて[奥邨弘司]
 I 事案の概要
 II 判旨
 III 検討

第14章 欧州におけるデジタル消尽の行方──Tom Kabinet事件CJEU判決を踏まえて[奥邨弘司]
 I はじめに
 II 検討の前提
 III Tom Kabinet事件
 IV まとめにかえて

第15章 著作権,パロディ,パブリック・ドメイン──ドイツ及び日本著作権法に対する文化的影響の検討[クリストフ・ラーデマッハ(翻訳:森 綾香)]
 I 背景──パロディとは何か?
 II ドイツ著作権法におけるパロディ(2016年以前)
 III 「欧州的」なパロディの例外
 IV 日本法におけるパロディ
 V 比較考察
 

関連情報

書籍紹介:
あとがきたちよみ 『知財とパブリック・ドメイン 第2巻:著作権法篇』 (勁草書房編集部ウェブサイト『けいそうビブリオフィル』 2023年3月13日)
https://keisobiblio.com/2023/03/13/atogakitachiyomi_chizaitopd2/

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