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書籍名

知財のフロンティア 第1巻 学際的研究の現在と未来

著者名

田村 善之、 山根 崇邦 (編著)

判型など

368ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2021年10月

ISBN コード

978-4-326-40397-4

出版社

勁草書房

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知財のフロンティア 第1巻

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本書は知的財産に関する学際的研究にかかる論文を一冊の書籍に編んだものである。

こと学際的研究に関しては、書籍には、学術雑誌に掲載される論文にはない威力があるように思われる。筆者自身の経験では、法学以外の分野の方で以前から知的財産絡みの業績を公表されているにもかかわらず、私がその存在に気付いたのは書籍になってからだということがしばしばあった。私が著した本がきっかけとなって私の存在に気付いてアプローチしてくる異分野の方も何人かいたことに鑑みると、その逆もまた真であるのかもしれない。結局のところ、書店に並ぶこと、市販されている書籍としてインターネット上に掲示されることの効果は思いのほか大きく、そこには、学術雑誌をインターネットに掲載し公衆にアクセスしうるようにしたとしても超えられない壁があるということなのだろう。

本書は、そのような私の思いを踏まえ、知的財産法学の分野でも学際的研究に関心を有している者、知的財産法学以外の分野でも知的財産に関連する研究をなしている者が一同に会し、それぞれの成果の一端を示してもらえれば、多様な分野の読者の関心を引き付け、上に記した私のような体験が各所で生起するのではないか、それによって、知的財産法に関する学際的な交流はさらに進展するのではないかと考えて、企画された。その際、共同編集者の山根崇邦教授 (同志社大学) とも相談のうえ、各分野の状況をサーベイするような文書というよりは、むしろ、各自の研究の成果の一端を示してもらうような論文のほうが、学際的な交流の起爆剤という本書の目的に適うのではとないかとの発想の下、様々な分野の一線級の研究者に声をかけることにした。

幸い、この企画は、知財法学者はもとより、多様な分野からなる多数の執筆者の賛同を受け、2冊の論文集として完成するに至った。本書はその第一巻に該当し、知財法学者、法哲学者、憲法学者、人類学者、経済学者がそれぞれの関心から、知的財産を論じている。編者からの依頼に応えて、各人にその先端的な研究を、しかし他分野の読者を想定しながら、紙幅の都合のなかで簡潔に記していただいた結果、本書は、所期の目的どおり、学際的な研究の起爆剤というに足りるものとなったのではないかと自負している。とりわけ、本巻に収められた論文は、いずれも知的財産法を考察するうえでその基礎となる思想的な背景、理論的な前提を明らかにするものとして、今後も多分野の研究者に参照されることになるだろう。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 田村 善之 / 2025)

本の目次

はしがき[田村善之]

第1編 知的財産と法哲学

第1章 蜘蛛の糸──『知財の哲学』『知財の理論』からみた『知財の正義』[田村善之]
 I 序
 II 知的財産権の保護は正義の要請か
 III 政策形成過程のバイアスへの関心の程度
 IV 知的「財産」とは何か
 V 結語

第2章 知的財産法制の再考──職業的知的創作の自由の観点から[浅野有紀]
 I はじめに
 II マージェスの知的財産権理論
 III ウォルドロンの権利論批判
 IV 知的財産権の代替案

第3章 知的財産制度の正当化根拠をめぐる権利論と功利主義の相克──知的財産と法哲学の交錯の一断面[山根崇邦]
 I はじめに  
 II リベラルな権利論に基づく知的財産制度の擁護──マージェス『知財の正義』(2011)
 III 実証的功利主義に基づく現行制度への懐疑──レムリー「信念に基づく知的財産」(2015)
 IV 基盤の多元主義に基づく実証原理主義批判──マージェス「功利主義原理主義への反論」(2016)
 V おわりに

第4章 所有権の神話──知的財産権の過去と未来?[大屋雄裕]
 I 知的財産権の正当化という問題
 II 理論的な状況
 III 財産からリベラリズムへ
 IV 情報という財
 V 未来?

第2編 知的財産と憲法

第5章 知的財産権の憲法化の背景と意義[比良友佳理]
 I 知的財産権の憲法化とは
 II 知的財産権の憲法化の背景
 III 知的財産権の憲法化の歩み
 IV 知的財産権の憲法化の意義
 V おわりに

第6章 拡大する商標保護と表現の自由の保障──米国における商標法と修正1条の議論からの示唆[平澤卓人]
 I はじめに
 II 米国での議論状況
 III 日本法における表現の自由との調整
 IV 結語

第7章 著作者の権利に基づく差止めと表現の自由[大日方信春]
 I はじめに──いくつかの事例から
 II 憲法理論の欠如
 III 著作財産権との関係
 IV 著作者人格権との関係
 V おわりに

第3編 知的財産とアーキテクチャ

第8章 アーキテクチャによる法の私物化と著作権制度──ドイツ法との比較法による検討[栗田昌裕]
 I はじめに
 II アーキテクチャと著作権法
 III 法による権利の限界──制限規定によって保護される利益
 IV 法によるアーキテクチャの統御──著作権の制限規定の貫徹
 V 契約とアーキテクチャの協働──デジタル消尽とユーザーの権利
 VI おわりに

第9章 著作権とアーキテクチャ──情報法の視点から[成原 慧]
 I はじめに
 II アーキテクチャとは何か
 III 著作権法における法とアーキテクチャの関係
 IV 間接侵害者の責任
 V 技術的手段の実効性確保のための法規制
 VI 利用者によるリンクの設定とプラットフォーム事業者によるアーキテクチャの設計
 VII ブロッキング
 VIII おわりに

第4編 知的財産と人々の意識

第10章 知的財産をめぐる人々の意識の醸成──現代人類学の視点から[中空 萌]
 I はじめに──知的財産をめぐる法学と文化人類学の対話をめざして
 II 知識が誰かのものになるとき──マリリン・ストラザーンの所有論から
 III 伝統的知識と知的財産権──知識と所有者の設定
 IV プロジェクトの民族誌──所有主体と意識の生成をめぐって
 V プロセスとしての知的財産──学際的対話の可能性

第11章 写真の技術的特性に対する意識──被写体の決定と創作性判断をめぐる議論[酒井麻千子]
 I はじめに
 II 被写体に関する工夫をめぐる議論の対立
 III 「被写体に関する工夫」の内容と意味
 IV 被写体の独占と創作性判断の方法論
 V おわりに

第12章 著作権法上の非変容的利用をめぐる人々の意識──日米独仏の文化比較による実証研究[ブラニスラヴ・ハズハ=清水紀子]
 I はじめに
 II 本研究の背景
 III 調査の設計と実施
 IV 調査結果
 V 結論

第13章 海賊版対策異論──海賊版への前向きの対処方法[田中辰雄]
 I 問題設定──海賊版サイトの取り締まりと定額配信サービス
 II 漫画での海賊版──実証研究
 III 漫画の定額配信サービスの可能性
 IV プラットフォーム間競争
 

関連情報

書籍紹介:
あとがきたちよみ 『知財のフロンティア 第1巻 』 (勁草書房編集部ウェブサイト『けいそうビブリオフィル』 2021年10月8日)
https://keisobiblio.com/2021/10/08/atogakitachiyomi_chizainofrontier1/

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