
書籍名
Evidence-based approaches to peace and conflict studies; volume 16 Gaza Nakba 2023–2024 Background, Context, Consequences
判型など
242ページ
言語
英語
発行年月日
2025年1月16日
ISBN コード
978-981-97-4867-9
出版社
Springer Singapore
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
本書は、Springer社のEvidence-Based Approaches to Peace and Conflict Studiesシリーズの1冊として編まれた。ガザ情勢の緊迫化を受けて編まれた英語の書籍であり、著者は日本社会で活動してきた研究者を中心としている。
内容の大部分は、2023年11月16日に東京大学駒場キャンパスで開催されたガザ情勢を扱った緊急シンポジウムに依拠する。同じ会場で、わずか1ヶ月半ほど前に、オイルショックから50周年の節目を振り返る公開講演会を開催したばかりだった。日本がエネルギー安全保障の課題に直面し、独自の中東外交に歩み始めた1973年当時、鍵となっていたのはパレスチナ問題だった。田中角栄内閣の二階堂進官房長官は、日本政府としてパレスチナ問題の公正な解決を支持し、パレスチナ人の自決権を支持した上で、「今後の諸情勢の推移如何によってはイスラエルに対する政策を再検討せざるを得ないであろう」と結んだ談話を発表した。中東には後に首相に就任することになる三木武夫副首相を団長とする代表団が派遣され、エジプトやサウジアラビアに対して日本政府のパレスチナ問題への姿勢を説いて回った。オイルショックがイスラエルとアラブ諸国による第四次中東戦争を契機として起きたことを念頭に置いた外交的働きかけである。その後の日本の対中東外交は、1990年に湾岸危機が発生し、国際貢献の名の下で自衛隊が初めて本格的に海外派遣されるようになるまでのあいだ、アメリカの対中東外交とは軌を一にすることなく展開された。
オイルショックから50年の節目に始まったガザ地区での戦闘は、日本政府だけではなく、日本社会に対して、パレスチナ問題への向き合い方を再び鋭く問うことになった。姿勢が問われるのは、もちろん研究者も同じである。実のところ、この書籍は出版が危ぶまれる場面があった。英語圏での発信に際して、本国の担当者がかなり慎重になっていたことが要因である。特にイスラエルに批判的に言及する文言が、問題として指摘された。日本では幸いにも混同されることは稀だが、イスラエルの政策への疑義が反ユダヤ主義の言説として批判されることが懸念されたのだ。この編集作業を通して、図らずも英語圏での言論空間が、過去の反ユダヤ主義との関連によって制限される様子を目の当たりにすることになった。日本の言説空間から英語圏へと飛び出していった本書が、今後どのように評価されていくのか。編者の一人として、大変関心を寄せている。他の英語で執筆されたガザ情勢を扱う書籍と読み比べることも、本書に関しては推奨されるだろう。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 特任准教授 鈴木 啓之 / 2025)
本の目次
Introduction: Nakba(s) That Killed All the Norms
Keiko Sakai
Where Will Separation Lead? The Humanitarian Crisis in Gaza and Future Prospects
Hiroyuki Suzuki
Israel’s Ongoing Annexation of East Jerusalem: Oppressing Palestinian National Sentiments Before and After October 7
Kensuke Yamamoto
Culture and Resistance in Palestine: Rap Music from Gaza
Kaoru Yamamoto
In the Shadow of Israel’s Prosperity: The Illiberal History of the Liberal International Order
Taro Tsurumi
How Public Opinion in Israel Shifted: Insights from Post-Cross-Border Attack Opinion Polls
Hiroshi Yasui
From Oil Weapon to Mediation Diplomacy: An Examination of the Gulf States’ Responses to the Gaza War
Koji Horinuki
The Myth of Vertical Integration in Regional Conflict: Iran and the “Axis of Resistance”
Yasuyuki Matsunaga
Gaza War 2023–2024 and Reactions from Neighboring Countries: Egypt, Jordan, Lebanon, and Syria
Rawia Altaweel
The Gaza War from the Perspective of International Law
Ai Kihara-Hunt
Japan’s Foreign Policy Regarding the Arab-Israeli Conflict and the Palestinian Question from the Perspective of Three Factors
Ryoji Tateyama
Epilogue: Unsolved Settler Colonialism and Devastation of Global Norm
Keiko Sakai
関連情報
Juno Kawakami, responsible editor for the book Gaza Nakba 2023–2024: Background, Context, Consequences (https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-97-4868-6) interviewed the volume editors, Hiroyuki Suzuki and Keiko Sakai, about topics related to their book. (Springer Nature 2025年8月28日)
https://communities.springernature.com/posts/gaza-nakba-2023-2024-background-context-consequences
ナクバとパレスチナ―「ナクバ」とは何か(鈴木啓之さんインタビュー・前編) (Dialogue for People 2025年6月9日)
https://d4p.world/31937/
ナクバとパレスチナ―国際規範に反する虐殺を止めるために(鈴木啓之さんインタビュー・後編) (Dialogue for People 2025年6月9日)
https://d4p.world/31939/
シンポジウム、イベント:
Book Launch: Gaza Nakba 2023-2024 Background, Context, Consequences「ガザ・ナクバ2023-2024」の出版を記念して (千葉大学グローバル関係融合研究センター 2025年2月9日)
https://www.chiba-u.ac.jp/crsgc/research/files/20250209_flyer.pdf
ガザ紛争を考える:イスラエル、パレスチナと国際社会はどうなるか (科学研究費補助金基盤A「空間・暴力・共振性から見た中東の路上抗議運動とネイション再考:アジア、米との比較」(研究代表:酒井啓子)、日本エネルギー経済研究所中東研究センター、東京大学中東地域研究センター(UTCMES) 2023年11月16日)
https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/UTCMES/2023/11/02/symposium/

書籍検索


eBook


