令和8年度 東京大学大学院入学式 祝辞(國部 毅 東京大学校友会 会長)

令和8年度 東京大学大学院入学式 祝辞

ただ今ご紹介に預かりました國部でございます。

東京大学校友会を代表いたしまして、この度東京大学大学院に入学された皆様、そして、そのご家族の皆様に、心よりお祝いを申し上げます。

私は1976年に本学の経済学部を卒業し、現在は三井住友フィナンシャルグループの名誉顧問を務めておりますが、一昨年(2024年)7月から東京大学校友会の会長を拝命しております。

東京大学校友会は、2004年に発足した全学同窓組織です。

本学の卒業生・修了生・在学生・教職員の方すべてが会員資格を有しますので、東京大学を卒業された方々は既に会員でいらっしゃいますし、東京大学以外の大学を卒業された方々も、この度の大学院入学を経て会員となられます。

校友会会長として、新しく会員に加わった皆様を心から歓迎いたします。

本日配布のリーフレットに校友会の案内が記載されておりますので、後ほどお読みいただければと存じます。

是非、校友会が開催する会合に積極的に参加し、仲間との交友を広げてください。

さて、現代は複数のパラダイムシフトが同時に進行する変化の激しい時代と言われていますが、本日はまず、今からちょうど150年前に日本で起きたあるパラダイムシフトに目を向けてみたいと思います。

1876年、日本では、弁護士法の先駆けである「代言人(だいげんにん)規則」の公布により近代的な弁護士制度が誕生する一方、「廃刀令」の布告により武士は刀を手放しました。

これらは単なる制度の変更ではなく、社会で生じる様々なコンフリクトを、刀に象徴される物理的な「力」ではなく、法と論理に基づく「知性」によって解決しようとする、抜本的な価値観の転換でした。

東京大学は、その翌年に創設されましたが、まさに、力ではなく、知性をもって社会をより良き方向へ導くこと、これこそが学問の使命であり、皆さんがこれから大学院において、人類の知の地平を切り拓いていく最大の目的でもあります。

しかし、歴史が教える通り、皆さんがこれから修める専門知識は、使い方次第で社会を救う力にも、他人を威圧し傷つける鋭利な刃にもなります。

では、手にした知の「正しい使い道」を見定めるためには、何が必要なのでしょうか。

20世紀を代表する哲学者ハンナ・アーレントは、第二次世界大戦の頃の全体主義的な社会を分析する中で、他者の立場から考える力が欠如することの危うさを訴えました。

そのうえで、より良い社会を築くための正しい判断力は、深く思考すること、特に、異なる立場や価値観を持つ他者の視点を持ち、物事に正しく批判的な態度を持って向き合うことで発揮されると説きました。

このアーレントの考え方に拠れば、皆さんが大学院で修める知を正しく使い、真に社会のために役立てていくためには、それぞれの専門領域において研究を深めることに加えて、「その知を何のために使うのか、他者へどのような影響を与えるのか」と問い続ける姿勢が不可欠であります。

そして、自らの研究を、客観的、かつ、批判的にみるためには、時にその専門領域を離れ、多様な人々とつながり、交わることを通じて、「他者の視点」を持つことが重要です。

どうか皆さんには、研究室という鍛錬の場で論理や知性を磨き上げながら、それを現実の社会でどのように活かしていくのか、常に社会と向き合い、他者と会話し、世界とつながりながら考え続けていただきたいと思います。

そして、皆さんがその知性を正しい判断力をもって発揮し世界をより良い方向へと導く真のリーダーへと成長されることを強く期待しています。

皆さんが他者とのつながりを深める場として、東京大学校友会のコミュニティも、大いに活用していただければと思います。

最後になりますが、皆様が健康で充実した大学院生活を送られることを祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。

改めまして、本日は誠におめでとうございます。

令和8年4月13日
東京大学校友会 会長
國部 毅

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