令和8年度 東京大学学部入学式 祝辞(國部 毅 東京大学校友会 会長)

令和8年度 東京大学学部入学式 祝辞

ただ今ご紹介に預かりました國部でございます。

東京大学校友会を代表いたしまして、東京大学に入学された皆様、そして、そのご家族の皆様に、心からお祝いを申し上げます。

私は1976年に本学の経済学部を卒業し、現在は三井住友フィナンシャルグループの名誉顧問を務めておりますが、一昨年(2024年)7月から東京大学校友会の会長を拝命しております。

東京大学校友会は、2004年に発足した全学同窓組織です。

本学の卒業生・修了生・在学生・教職員の方すべてが会員資格を有しますので、新入生の皆様も、本日より会員となられます。

校友会会長として、新会員の皆様を心より歓迎いたします。

本日配布のリーフレットに校友会の案内が記載されておりますので、後ほどお読みいただければと存じます。

是非、校友会が開催する同期の学年会などに積極的に参加し、仲間との交友を広げてください。

さて、ここにいる皆さんは、今日から教養学部の学生となります。

教養学部は、専門課程に進むために必須となる多様な知識や技能を身につけることを目的としています。

一方、近年は、生成AIを始めとする技術の進化が目覚ましく、AIが膨大な知識を集約するだけでなく、クリエイティブな作業まで行うようになっています。

本日は、このようなAI時代に、教養学部で学ぶ意味を考えてみたいと思います。

クリエイティビティ、いわゆる創造性について、イギリスの認知学者マーガレット・ボーデンは3種類にタイプ分けしました。

既存の情報を組み合わせてアウトプットを行う「結合的創造」、有限のパターンから価値ある一手を探しだす「探索的創造」、そして、既存の概念や枠組みを覆すパラダイムシフトのような「変形的創造」です。

このうち、「結合的創造」や「探索的創造」については、AIが素晴らしい成果を産みだしますが、「変形的創造」については、人間の方が強みをもつと言われています。

では、どのようにすれば、人間は「変形的創造」を行う能力を高めていくことができるのでしょうか。

日本の芸道には「守破離」という考え方があります。

芸の道は、まずは師の教えを忠実に守る「守」、そこに創意工夫を加え、師の教えという殻を破って発展させる「破」を経て、最終的に、教えから離れた独自の領域である「離」に至る、というものです。

この「離」の境地は、既存の枠組みを飛び越えるという点で、ボーデンが指摘した、人間ならではの「変形的創造」と言えます。

こう考えると、皆さんが教養学部で学ぶ意味が見えてきます。

つまり、人間にしかできない「離」の境地、「変形的創造」に至るまでには、師から教えを学び、応用していく「守」と「破」という段階が不可欠であり、まさに教養学部は、学問の世界における「守」と「破」の段階にほかならない、ということです。

現代の社会課題はますます複雑化し、AIでは解決できないことが多くあります。

どうか皆さんには、教養学部において多様な知見に触れ、その応用を学ぶことで、人間ならではのブレイクスルーを生み出す創造性の土台を養っていただきたいと思います。

なお、創造性に血を通わすことができるのも人間ならではの能力です。

どれほど革新的なアイディアを生み出すことができても、そこに倫理が欠けていれば、真に社会を豊かにすることはできません。

創造性の土台となる教養を身に着けるとともに、人としての正しさを見極める人間性もまた、これからの学生生活でしっかりと育んでいってください。

教養学部における学びとともに、皆さんが多様な考え方に触れる場として、東京大学校友会のコミュニティも、大いに活用していただければと思います。

皆さまが、人間らしいユニークで温かみのある課題解決策を生み出し、世界をより良い方向へ導くことができるリーダーへと成長されることを、心より期待しています。

最後になりますが、皆様が健康で充実した学生生活を送られることを祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。

改めまして、本日は誠におめでとうございます。

令和8年4月13日
東京大学校友会 会長
國部 毅

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