東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白とベージュの表紙、帯に制服を着た学生のイラスト

書籍名

ちくま新書 1834 教育にひそむジェンダー 学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる

著者名

中野 円佳

判型など

208ページ、新書判

言語

日本語

発行年月日

2024年12月5日

ISBN コード

978-4-480-07663-2

出版社

筑摩書房

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教育にひそむジェンダー

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本著は、他大学で非常勤講師として行ってきた「ジェンダーとメディア」「教育と社会」などの授業をもとにした新書です。専門分野に関わらず気軽に読んでもらえる一般書になります。「2020年代、もう男女平等でしょ?」と思う人にこそ、是非手に取ってもらいたいと思います。
 
出産祝いに始まり、赤ちゃんのときから大人のバイアスは少しずつ、子どもに忍び寄ります。保育園や幼稚園で差し出される玩具、家庭での親のふるまい、学校での教員の声がけ、あるいは、CMや絵本、アニメなど私たちが日常で接する様々なメディア…。
 
教育社会学を中心とする先行研究で指摘されてきた研究結果を取り上げながら、著者の私自身が子育てをしながら直面したことや大学生たちの実体験についてのコメントを織り交ぜ、どのようなジェンダーバイアスが様々な場面に残っていて、それがどのような害悪をもたらすのか、それを減らしていくためにどのような取り組みがはじまっているかを解説します。
 
本学については、男女比が8:2であることが知られており、著者が所属している多様性包摂共創センターのジェンダー・エクイティ推進オフィスでは意識啓発のための“言葉の逆風”キャンペーンなども実施してきました。本著の見解は、組織を代表するものではありませんが、このキャンペーンについても言及し、なぜ東大を受ける女性が少ないのか、他大学で実施されている「女子枠」についてどう捉えるかなどについても、議論をしています。

実は東京大学構成員は、女性であっても、ジェンダーバイアスのネガティブな声がけをあまり受けてこなかったという人も多いようです。私自身も、「さすがに今の大学生はこんなこと言われてきた人はいないと思うけど…」というような発言をしてしまったことがあります。
 
でも、2020年代の今も、根強いバイアスはあります。本著内の大学生のコメントなども見ていただきながら、自分が免れてくることができたバイアスの影響について、想像力を働かせてほしいと思います。
 
そして、大学生の皆さんが、これから社会に出ていくうえで、子どもと直接かかわる仕事に就く人や家庭をもち親になったときはもちろんですが、その他のあらゆる商品やサービス、コンテンツ、政策などを作る側になっていく際に、既存のジェンダー不平等な構造に加担や助長をしてしまっていないかを振り返り、確認する参考にしてほしいと思います。
 

(紹介文執筆者: 多様性包摂共創センター 准教授 中野 円佳 / 2025)

本の目次

第1章 赤ちゃんから刷り込まれるジェンダー ―― おもちゃの好みは遺伝か環境か?
赤ちゃんのときから刷り込まれるバイアス/3歳ごろからの性自認と幼稚園の役割/性自認と遊びの中の役割/ジェンダー規範の「内面化」/なぜバイアスを持つのか/バイアスを持つことは悪いことか?/根拠がなくても実現してしまう/変わるバービー人形/変えていくための動き/幼少期に覚える家庭での役割/つくられた「母性愛」/家庭での役割/高度な家事をやめるのも手
 
第2章 小学生が闘うジェンダー ―― 理想と現実のギャップ
シンデレラ願望/変わるプリンセス像/かわいくて、強くてもいい/マイクロアグレッションと『リトル・マーメイド』の実写版/娘に読ませたいプリンセスもの/子ども向け番組の偏り/性的な描かれ方/公的な場で見えてしまうことが問題/ゾーニングという解決策/大人の「期待」を読み取る子どもたち/ピンクのランドセルを選ぶ男の子/青い目、茶色い目/性犯罪防止に何ができるか/日本版DBS導入へ/性教育
 
第3章 中高生の直面するジェンダー ―― 思春期特有のジレンマ
「サッカー部」にいる女の子はマネージャー?/男女の体格差/ジェンダー・フリー/「隠れたカリキュラム」の是正/なお残る「役割」のジェンダー/「校長」は男性?/ディスカレッジされる女の子/女子の理系選択/女子校・男子校の意義はあるか/別学のメリット/多様性は居心地が良くない/共学の定員は1対1である必要があるか/性教育は共学でも不十分/性的同意/「教えてほしかった」
 
第4章 大学のゆがんだジェンダー ―― 差別とセクハラの温床なのか?
医学部女性減点問題の衝撃/女子枠は逆差別か/女子枠はスティグマになる?/他のマイノリティ性への配慮/東大女性2割の原因/女性への”言葉の逆風〞/親の教育期待差/娘に投資しない/実家から離れない/浪人を避ける/女性はリスクを回避する?/成功不安?/差異か平等か/なぜ大学や企業に多様性が必要なのか/社会の設計を誰がするのか/女性の透明化・商品化がはびこるキャンパス/偏差値の高さと女性への目線/DEIについての教養/声をあげる大学生たち
 

関連情報

試し読み:
女子校・男子校の存在意義とは? (webちくま | note 2024年12月27日)
https://www.webchikuma.com/n/ndc9f942a98c1
 
書評:
安東由則 (武庫川女子大学教授) 評「女子の進路選択 見えぬ壁 知らぬ間の色眼鏡、自覚を」 (『日本経済新聞』 2025年9月13日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91289340S5A910C2MY6000/
 

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