東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に植物をあしらった人の顔

書籍名

植物顔 日本・フィリピンの草木花実写真

著者名

寺田 鮎美、 ジェイディー・アン・パスカル (編)、ジャン・マヨ (写真)

判型など

166ページ

言語

日本語、英語

発行年月日

2025年11月

ISBN コード

9784910734095

出版社

東京大学総合研究博物館、フィリピン国立博物館

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

植物顔

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本書は、東京大学総合研究博物館とフィリピン国立博物館が共同で主催した特別展示『植物顔−−日本・フィリピンの草木花実写真』の図録である。2025年にJPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」で開催された本展示は、アートとサイエンスを架橋する国際協働プロジェクトとして、学術標本と写真芸術を組み合わせた新たな展示のあり方を示した。
 
本書の図版の中心をなすのは、マニラを拠点に活動する写真家ジャン・マヨによる「Faces and Flora」シリーズである。フィリピンおよび日本に生育する在来植物でモデルの顔を飾ったポートレート写真は、従来の美術史的フローラ表象を想起させつつも、植物のクローズアップ静物写真の造形とともに配置され、斬新なビューティーエディトリアルの表現を創出している。日本の植物を対象にした写真は、東京大学大学院理学系研究科附属植物園 (小石川植物園) で2025年4月に撮影された新作である。また、東京大学植物標本室 (TI) およびフィリピン国立博物館植物標本室 (PNH) が所蔵する標本を、マヨが撮影対象とした種と対応させて紹介し、芸術作品と科学的記録とが相互に照らし合う視覚体験を実現している。
 
本書の独自性は2点に集約できる。第一に、植物芸術写真と植物標本を対として提示することで、芸術表現と科学資料がいかに響き合い、互いを豊かにしうるかを明示した点。第二に、日本とフィリピン両国の在来植物を題材とし、新たな芸術表現を提示すると同時に、標本を科学的に読み直す契機を与え、在来植物の重要性を再考する場を生み出した点である。
 
構成は、マヨ自身のアーティストノートと本展キュレーターによる2本のイントロダクションに始まり、フィリピンと日本で撮影された植物写真と標本の図版を中心に展開される。写真には植物学的な解説が、標本には採集者や収集の経緯といった歴史的背景の記述が添えられ、確かな学術的裏付けをもつ。芸術写真・標本・学術解説を三位一体で提示することにより、単なる写真集や標本目録を超えた複合的な学術成果として結実している。その結果、本書は、標本という学術資料がいかに芸術と共鳴し、また芸術が科学的理解を深めうるかを示す格好の手引きとなり、「アートサイエンス」の研究と実践の最前線を示す記録として高い意義をもつ。さらに、日本とフィリピン両国の博物館が協働してコレクションを公共に開放することにより、植物相の理解や生物多様性保全への意識を広めている点も社会的に重要である。また、植物とともに撮影された多様なモデルたちの姿は、ジェンダーやアイデンティティの多様性に関わる現代的課題に光を当てる役割を果たしている。
 

(紹介文執筆者: 総合研究博物館 特任准教授 寺田 鮎美 / 2025)

本の目次

展覧会情報
序文  西秋良宏
序文  ジェレミー・バーンズ
博物館紹介
特別パートナーフォトグラファー紹介
アーティストノート  ジャン・マヨ
イントロダクション1 本展覧会について  ジェイディー・アン・パスカル
イントロダクション2 「植物顔」のビューティーエディトリアル考  寺田鮎美
[図版]フィリピンの植物
[図版]日本の植物
小石川植物園紹介
主要参考文献
フォトクレジットおよび協力者一覧
 

関連情報

特別展示:
NEW! 植物顔 – 小石川植物園の花木 (小石川植物園内公開温室前 2026年5月19日 – 8月16日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/id/IMT0301
 
植物顔 – 日本・フィリピンの草木花実写真 (INTERMEDIATHEQUE 2025年7月12日 – 11月9日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/id/IMT0288

著者コラム:
研究者コラム:寺田鮎美「ミュージアムとジェンダー (6) - Museum and Gender 6」 (INTERMEDIATHEQUEホームページ 2025年10月31日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/rescolumn/view/year/2025/id/RC0305
 
研究者コラム:寺田鮎美「花鳥画のように見る鳥類標本 - Like a Bird-and-Flower Painting」 (INTERMEDIATHEQUEホームページ 2025年9月25日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/rescolumn/view/year/2025/id/RC0303

研究者コラム:寺田鮎美「標本と写真の時間感覚 - The Sense of Time in Specimens and Photographs」 (INTERMEDIATHEQUEホームページ 2025年9月17日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/rescolumn/view/year/2025/id/RC0302
 
研究者コラム:寺田鮎美「ジャン・マヨのレンズが捉えた日本の草木花実 - Japan’s Native Flora through the Lens of Jan Mayo」 (INTERMEDIATHEQUEホームページ 2025年8月6日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/rescolumn/view/year/2025/id/RC0300
 
研究者コラム:寺田鮎美「植物顔とは - Faces and Flora」 (INTERMEDIATHEQUEホームページ 2025年8月1日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/rescolumn/view/year/2025/id/RC0299

イベント:
NEW! ソトラボ第16回 写真トーク
植物顔@小石川植物園 Faces and Flora (東京大学総合研究博物館小石川分館庭園 2026年5月22日)
https://www.um.u-tokyo.ac.jp/sotolabo/index_jp.html
 
レクチャー&トークセッション『「植物顔」のコンセプトを読み解く』  (INTERMEDIATHEQUE 2025年7月12日)
https://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/id/IMT0289
 
関連記事:
寺田鮎美『植物顔―日本・フィリピンの草木花実写真』― 省察と展開 (東京大学総合研究博物館ニュース『Ouroboros』Volume 30, Number 3 2026年3月31日)
https://www.um.u-tokyo.ac.jp/web_museum/ouroboros/v30n3/ouroboros_v30n3_top.html
 
フィリピン大使、学生グループによる 「Faces and Flora」展訪問で日比強固な関係を強調 (フィリピン共和国大使館ホームページ 2025年11月11日)
https://tokyo.philembassy.net/ja/ph-ambassador-highlights-strong-philippines-japan-ties-in-student-groups-visit-at-faces-and-flora-exhibit-culmination-week/
 
フィリピン大使館、芸術と科学を融合させた写真展示会にて、日比友好月刊を祝う (フィリピン共和国大使館ホームページ 2025年7月22日)
https://tokyo.philembassy.net/ja/philippine-embassy-celebrates-philippines-japan-friendship-month-with-photography-exhibition-merging-art-and-science/
  
研究助成インタビュー
助成から10年の今と未来「モバイルミュージアムで地方の教育機会を創出し、ジェンダーなどの多様性の要素も加える」 (公益財団法人トヨタ財団ホームページ 
https://www.toyotafound.or.jp/activity/evaluation/joint00_contribution19.html
 

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