
書籍名
バルザック研究アラカルト コントから小説の方へ
判型など
424ページ、四六判、上製
言語
日本語
発行年月日
2024年10月
ISBN コード
9784861109676
出版社
春風社
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
自著紹介ということで、「構成の原理」(ポー) のようなものが書ければ良いのですが、そうはいくはずもないので、「彼自身による『アラカルト』」というつもりで謙虚に書いていこうと思います。
本書はタイトルにある通り、「バルザック」という19世紀前半のフランスの作家を対象とする「研究」書であり、「研究」の後に「アラカルト」とついているのは、かつてフランス語で執筆した博士論文から選んだ数章と、その後、日本語で単発的に執筆した数章を組み合わせた全十章で構成されているからで、したがって、「アラカルト」の五文字には、最初から最後まで通読していただかなくても、それぞれの章を好きなように読んでいただいて良いですよ、という著者からのややお節介なメッセージが込められています。それと同時に、タイトル全体には、「研究」という硬い言葉と「アラカルト」という柔らかい言葉を並べたかった、とか、「研究」を間に挟んで、「バルザック」と「アラカルト」という同じ五文字でア音の文字から始まりラ行の音を持つ文字が続く言葉を並べたかった、という密かなこだわりも含まれています。
中身については副題にある通り、「コントから小説の方へ」ということで、「小説」というむしろバルザック以降に市民権を得た文学ジャンルに結びついた考え方や読み方を無批判的に採用するのではなく、「コント」という「小説」の先祖にあたるとも言えるジャンルや「コント」を特徴づける語りのあり様をバルザック自身が選んだことの意義を重視しながら、バルザックの作品を読み創作の軌跡を辿っていく、という方針のもと、1830年代の創作を中心に、マイナー作品から有名作までをほぼ年代順に論じています。
目新しい研究手法や理論的枠組みが採用されているわけでもない本書に独自な点があるとすれば、単純にそのような研究がそれまで十分に存在しなかったということに尽きるように思いますが、そうなると、「研究」には「創作」と通じるところがあると言えるかもしれません。わたしのこれまでの研究生活は、順風満帆とはほど遠いものであったと言えば言い過ぎになるのでしょうが、それでも険しい道のりであったはずの「研究」を投げ出すことなく、楽しみながら継続していくことができたのも、年月を経るうちに、「研究」に「創作」のよろこびを見出すことができるようになったからなのだろうと思います。
最後に、ここだけの話というか思い出したことを一つ。本書の準備中、巻頭に「献辞」を入れようかと考えたことがありました。家族への謝辞はありふれているので、思いきってボードレールにならって「読者へ」と入れてみるのはどうだろうか、と思案してみたものの、どうにも気恥ずかしいのでやめにしました。それで良かったと思っていますが、それでも、本書を誰よりも読者の皆さまへ捧げたいという思いは今も変わらず持っています。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 准教授 谷本 道昭 / 2025)
本の目次
第一部 コント文学とバルザック
第一章 『最後の妖精』を読む――「妖精譚」の読者/著者バルザック
第二章 若返りの泉――ラ・フォンテーヌの読者バルザック
第二部 コントの作者バルザック
第三章 コントの作者バルザックと初版『あら皮』
第四章 『哲学的コント集』をひもとく
第五章 「コントのような会話」のために――『コント・ブラン』と『新哲学的コント集』
第六章 『コントの理論』――バルザックからバルザックへ
第三部 小説の方へ
第七章 バルザックとパリの泥――『金色の眼の娘』『ゴリオ爺さん』『シビレエイ』
第八章 『ゴリオ爺さん』〈ボーセアン夫人の最後の舞踏会〉をめぐって――「罪を犯した女たち」と人物再登場法
第九章 拒絶された手紙――書簡=小説としての初版『谷間の百合』
第十章 花の小説/小説の花――初版『谷間の百合』再読
あとがき
文献一覧
関連情報
澤田直 選書「2025年上半期読者アンケート」 (『図書新聞』 2025年7月26日号)

書籍検索



