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SDGsシンポジウム2026を開催 「AIとサステナビリティ: 持続可能な未来に向けた機会と挑戦」

掲載日:2026年5月14日

東京大学とシュプリンガーネイチャーは2026年2月17日に人工知能(AI)と持続可能な開発目標(SDGs)の接点をテーマとしたシンポジウムを共同開催しました。本シンポジウムは、2019年、2021年、2022年、2023年、2024年、2025年にSDGsの異なる側面を議論してきた両組織による第7回目の共催シンポジウムとなります。2026年は、サステナビリティにおけるAIの「挑戦」と「機会」を主要テーマに据え、SDGs達成に向けた進展を加速させるためにAIが提供する機会と、責任ある開発やガバナンスを欠いた場合に生じる挑戦(課題)の両面について探求しました。このテーマは、AIが社会・経済・文化を急速に再編しつつあり、社会の多様な分野において持続可能な発展に深い影響を及ぼしているという、両運営チームの共通認識を反映したものです。こうした背景から、AIをSDGsの阻害要因ではなく推進力とするために、包括的・学際的、かつインクルーシブなアプローチを求める声が高まっています。

こうした優先事項を反映し、2026年のシンポジウムには、AI、サステナビリティ、ガバナンスの境界領域で活躍する学術界、出版界、産業界、および国際機関の第一線で活躍する研究者や実務家が集いました。また、分野、セクター、地域を横断した幅広い視点を取り入れることにも特に重点が置かれました。

開会の挨拶は、東京大学 藤井輝夫総長が務めました。藤井総長は、AIがサステナビリティや研究・イノベーションを含むあらゆる分野において、世界全体にプラスとマイナス双方の影響を及ぼすことを認め、各国がその影響に対処するために独自のAI政策を策定する必要があると述べ、議論の方向性を提示しました。

第1基調講演では、国際連合大学学長 兼 国際連合事務次長のチリツィ・マルワラ氏が、持続可能なAIインフラとデジタル格差について論じました。同氏は、AIがアフリカでの農業害虫の検出から個別最適化学習、気候モデリングに至るまで、SDGs達成の加速に多大な可能性を持つ一方で、その恩恵が不均等に分配されていると強調しました。特に、世界のAI投資の80%以上がわずか2か国に集中していることや、グローバル・サウスの言語やコミュニティがAIの学習データにおいて十分に反映されていないことを指摘し、デジタル格差の自己強化的な性質を指摘しました。同氏は、AIを社会共有の資源として「民主化」することを訴えるとともに、ハードウェア開発における持続可能な素材選定と責任あるサプライチェーンの必要性を強調しました。加えて、ボローニャに新設されたAIとビッグデータを専門とするUNUの新研究所や、新たな書籍シリーズ「Artificial Intelligence and Sustainable Development(人工知能と持続可能な発展)」についても紹介しました。

第2基調講演では、Nature編集長 兼 Nature Portfolioチーフ・エディトリアル・アドバイザーのマグダレーナ・スキッパー氏が、AIを「環境リスクの源泉」と「持続可能な変革の実現要因」という二面的な視点から考察しました。Nature Portfolioの最新論文を引き合いに、AIシステムがもたらす環境負荷(カーボンフットプリントおよびウォーターフットプリント)の大きさを概説し、生成AIによる検索は従来のウェブ検索と比較して4~5倍のエネルギーを消費すること、データセンターが気候に及ぼす累積的な影響を指摘しました。一方で、AIが気候モデリング、早期警戒システム、行動変容、複数のSDGs達成にいかに貢献できるかを示す研究成果も紹介しました。また、家電製品のようなAIツールのエネルギー評価制度の導入など、計測の精度向上と透明性の確保を求めるとともに、研究者と政策立案者がグローバルレベルでより緊密に連携する必要性を訴えました。

4つのプレナリー講演では、AIとサステナビリティの重要な側面が取り上げられました。まず、広島大学IDEC国際連携機構教授のアユーブ・シャリフィ氏が、AI駆動型スマートシティと持続可能な開発目標の探求について論じました。次に、地球環境戦略研究機関(IGES)AI・ニューフロンティアグループディレクターの周新氏が、AIとSDGs相互連関のガバナンスに関する研究を発表しました。日本科学未来館副館長 兼 IBM東京基礎研究所研究員の高木啓伸氏は、フィジカルAIが日常生活を向上させる事例研究を紹介しました。最後に、東京エレクトロン株式会社サステナビリティ グローバルヘッドの荻野裕史氏が、AIと半導体産業の関係性を考察しました。

続くパネルディスカッションでは、横山広美東京大学教授の進行のもと、長期的な「持続可能なAI」の実現に向けた最重要課題や、国内外でのAI開発・利用におけるインクルーシブネスの確保について議論が交わされました。ここでは、精緻に調整された規制の必要性、標準化されたフレームワークの重要性、そしてAIを「インフラ」として捉えることの意義が浮き彫りになりました。 

閉会の挨拶では、シュプリンガーネイチャー・ジャパン代表取締役社長のアントワーン・ブーケ氏と、東京大学未来ビジョン研究センター長 福士謙介センター長・教授が登壇しました。ブーケ氏は、東京大学とシュプリンガーネイチャーの両組織が、SDGsが提起する地球規模の課題に対し、協働の重要性を引き続き提唱していく姿勢を示しました。また、SDGs関連研究に対するシュプリンガーネイチャーのコミットメントや、同社の国連グローバル・コンパクトへの直近の加盟についても紹介しました。さらに、政策に引用される研究論文の78%がグローバル・ノースの著者に偏っている現状を挙げ、グローバルな研究コミュニティへの参加機会を広げることの重要性を強調しました 。福士センター長は、AIは単なる技術ツールにとどまらず、社会・経済・政治システムに深く組み込まれた存在であり、多様な知見の統合が不可欠であると総括しました。また、学際性の価値と、大学が「架け橋」としての役割を担うことの重要性を強調するとともに、2025年10月に開催された科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)においてもAIが中心的な議題であったことに言及しました。

本シンポジウムには、大学・研究機関、民間企業、政府機関、国際機関、市民社会など、国内外から約518名が参加し、その幅広い超学際的な意義を裏付けるものとなりました。

閉会後には、ネットワーキング・ポスターセッションが行われ、東京大学や他大学の学部生・大学院生が、SDGs関連の研究成果を披露し、登壇者や参加者と交流を行いました。



写真:
[上]写真左より、藤井総長、マルワラ氏、スキッパー氏、ブーケ氏、福士センター長
[下]パネルディスカッション(写真左より、荻野氏、高木氏、周氏、シャリフィ氏、スキッパー氏、マルワラ氏、横山教授)
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