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実験中に物体が光っている写真

書籍名

「実験」とは何か 科学・社会・芸術から考える

著者名

福島 真人

判型など

400ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2025年4月1日

ISBN コード

978-4-13-010160-8

出版社

東京大学出版会

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「実験」とは何か

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【本書の問い -「実験」化する社会?】
近年我々の周辺でよく聞くのが「実験」という言葉である。実験室はたいてい理系とされるが、実験をするのは科学者だけではない。政治の分野で、特定の政策を実際に試してみてその様子を探ることも実験で、こうした手法の重要性が認識され、多くの試みがなされている。さらに、組織実験、あるいは実験芸術といった言葉もある。
 
社会全体に広がる、この実験という話の裏には何があるのか、これが本書が取り組む「謎」である。
 
【本書の背景 - 科学技術社会学 (STS)】
本書は、80年代以降欧米を中心に活発化した、科学技術社会学 (Science and Technology Studies/STS) の枠組に基づいている。これは科学技術の動態を、社会科学の目を通じて分析するものである。ここでは従来の理論科学偏重であった議論を批判し、実験や観察のリアルを探求してきた。それらは様々な場所、装置、そして組織と関係し、社会一般との間に複雑な交通網を作っている。
 
例えば、実験は仮説を検証するための手続、という話も、現実には遥かに複雑である。分野によってはより即興的な試みも多く、厳密な条件設定はあとからやってくる。また実験規模の巨大化は、思わぬ副作用を生む。プロジェクトが遅れ、人材の育成に支障が生じるのである。
 
【実験の統一性と多様性】
第一部では科学技術社会学 (およびその周辺) による、歴史上の実験(概念と実践)の発展を追う。実験室laboratoryという言葉は、もともとは修道院等での作業場の意味で、それが意味を変え現代に至る。我々が考える実験室の原形は19世紀のドイツで生まれ、そこで実験 (室) と研究者育成がセットになる。他方、実験室内の厳密な環境管理は、フィールドでは難しい。ではどうするか、という問いは、社会における実験にとっても大きな問題である。
 
第二部は、こうした議論をベースに、多様な社会実験のあり方を比較検討する。実験室内のとは異なり、社会に開かれた実験では、様々な新たな要素が加わる。多くの社会実験では、大規模な準備と、膨大な関係者の事前調整がいる。また、社会実験のタイプによっては、データよりも、市民参加を重視する場合もある。
 
第三部はアートの世界である。ここでは話は全く異なる方向に展開する。全ての創作活動はある意味試行錯誤の連続だが、実験芸術というのはその一部に過ぎない。また実験と前衛は同じなのか? 実験音楽のジョン・ケージから出発して、芸術領域における実験の特異な進化を辿る。
 
第四部は様々な領域での実験のリアルを、もう一度科学技術社会学 (STS) の議論に引き戻して、論じなおす。そこでは実験の対比語でもある「理論」との関係をSTSでどう捉えるか、そして拙著『学習の生態学』等で継続して論じている「日常的実験」と、こうした実験一般の関係を問い直す。そもそも実験する社会とは、どんな社会なのだろうか。
 

(紹介文執筆者: 情報学環 名誉教授 福島 真人 / 2026)

本の目次

始めに

第1章 科学実験
序
I STSにおける実験とラボ
II 実験/ラボラトリー概念の系譜学
III 近代的ラボの原型
IV 実験とスケールの問題―ビッグ・サイエンスとその周辺
V 実験と非線型性
VI ラボとフィールドの間
結語

第2章 社会実験
序
I メタファーとしての実験
II 政策における実験
III 中間考察
IV 参加と研究の間で―交通系社会実験
V 小回りに実験する―建築系社会実験
VI ラボ、社会に出る―(都市)リビングラボ
結語

第3章 芸術実験
序
I 実験音楽の世界
II 偶然のもう一つの相貌―デュシャン、ゾラ、パタフィジック
III 中間考察
IV 科学・芸術・STS
V 芸術的研究(AR)というハイプ
総括

第4章 STSと実験再考
I 残された論点
II 理論と実験
III 学習の実験的領域再考
 

関連情報

関連記事:
The Experimental Zone of Learning: Mapping the Dynamics of Everyday Experiment  (『Mind Culture and Activity』24 (4): 311-323 2017年3月)
https://doi.org/10.1080/10749039.2017.1293689
 
Before Laboratory Life: Perry, Sullivan and the missed encounter between psychoanalysis and STS  (『BioSocieties』  2020年6月)
https://doi.org/10.1057/s41292-019-00157-5
 
イベント:
「実験」とは何か ― STS(科学技術社会学)を通して科学と社会を見る目を鍛える (本棚演算株式会社 2025年6月5日)
https://www.localknowledge.jp/2025/05/1940/
 

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