
書籍名
まちを変える都市型農園 コミュニティを育む空き地活用
判型など
208ページ、四六判
言語
日本語
発行年月日
2022年9月15日
ISBN コード
9784761528218
出版社
学芸出版社
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
成熟期を迎えた都市には、郊外の耕作放棄地、公園の低未利用スペース、団地の一角、商業施設の屋上など、さまざまな「スキマ」が点在している。本書『まちを変える都市型農園 コミュニティを育む空き地活用』は、こうした未活用の空間を、地域課題の解決と新しいコミュニティの創出を担う「都市型農園」に変える試みを、国内外の豊富な事例研究を通じて体系的に解き明かす一冊である。
本書では、都市の未利用地を、その土地利用形態や運営主体に応じて事例を体系的に分類している。具体的な「場所」と「人々の活動」を結びつけて分析する手法は、社会科学や環境学、都市計画などを学ぶ読者の研究活動にも大いに役立つはずである。さらに、実践者にとってもアイデアを得るための事例集として活用いただける内容となっている。
都市型農園は、単に野菜や果物などを育てる場にとどまらず、以下のような多岐にわたる社会的な機能を発揮している。
1. コミュニティの再生と多文化共生:高齢化や人間関係の希薄化が進む中で、農作業は世代や文化の違いを超えた共通の活動を生み出す。たとえば、兵庫県姫路市のベトナム人住民による農園や、愛知県刈谷市の「ワールド・スマイル・ガーデン一ツ木」のように、外国ルーツを持つ人々が慣れ親しんだ食文化を維持し、地域社会との交流のハブとなる事例は、多文化共生社会の実現に向けた具体的なヒントを提供している。
2. 環境・教育・福祉への貢献:農園は環境教育や食育の場となり、また利用者自身の自己実現やアクティビティ、社会参画を誘発する福祉的な機能も果たす。さらに、地域住民が提供する生ごみを有機肥料として活用する東京都日野市の「せせらぎ農園」の事例は、都市内で市民が資源循環に主体的に取り組み、環境課題の解決に貢献している。
3. 持続可能なまちづくり(SDGs)への貢献:最終章で語られるように、都市型農園はSDGs(持続可能な開発目標)の達成、特に「住み続けられるまちづくりを」「飢餓をゼロに」「気候変動に具体的な対策を」といった目標に深く関わっている。災害時の避難スペースとしての利用や、雨水タンクによる水確保機能など、防災・減災対策としての側面も分析されており、現代の都市政策において重要な示唆を与えている。
本書を通じて、学術の世界でも頻繁に使われる「コミュニティ」「公共空間」「サステナビリティ」といった抽象的な言葉が、土を耕し、種を蒔き、収穫を分かち合うという具体的な都市型農園での活動の中で、どのように息づいているのか感じ取れるはずである。将来、都市計画家、地域活動家、NPO職員、あるいは公務員などとして、まちづくりに携わることに興味があれば、本書にまとめられた国内外の実践の知見が視野を広げ、ノウハウの蓄積に役立つであろう。身近な「空き地」が持つ無限の可能性が認識され、自らの手でまちを変える機運が高まることを願っている。
(紹介文執筆者: 空間情報科学研究センター 准教授 新保 奈穂美 / 2025)
本の目次
1:都市における農
2:農地・空き地活用に向けた可能性
3:コミュニティ拠点としての役割
■Chapter 1:まちのスキマを活かす戦略
大規模な公有の空き地を有効利用する――プリンツェシンネンガルテン(ドイツ・ベルリン市)
公民連携で条件不利な公園を再生する――平野コープ農園(兵庫県・神戸市)
まちの隙間をゲリラ的に使う――レンゲンフェルトガルテン(オーストリア・ウィーン市)
未利用の民有地を民間主導で活用する――ラファイエット・グリーンズ(米国・デトロイト市)
住宅地内の農地を住民の居場所に変える――せせらぎ農園(東京都・日野市)
ほか
■Chapter 2:コミュニティの課題に向けたアプローチ
都市計画助成プログラムを活用して地区内の生活環境を改善する――フローベンガルテン(ドイツ・ベルリン市)
アートとガーデンの融合で多様な住民同士の交流を活性化する――グーツガルテン(ドイツ・ベルリン市)
居住可能な不動産への転用で若年世代の定住を促進する――クラインガルテン(オーストリア・ウィーン市)
外国人住民が慣れ親しんだ食を得るために耕す――ベトナム人住民が創る農園(兵庫県・姫路市)
団地に暮らす高齢者のアクティビティを誘発する――金町駅前団地コミュニティガーデン(東京都・葛飾区)
過密な住宅地での地域活性化と防災・減災に貢献する――たもんじ交流農園(東京都・墨田区)
ほか
■Chapter 3:都市に農を取り入れるためのポイント
1. 土地を確保する――農園? 公園? 空き地?
2. 担い手・協力者を探す――無理なく仲間を集めよう
3. 財源を確保する――目指せ自走化
4. 現場をつくり運営する――実現したい目的を意識する
5. 実践者に聞くノウハウ
6. 中間支援組織に求められること
コラム コーディネーターとしての心得
■Epilogue:持続可能なまちづくりと農
1. 農は持続可能なまちの要素――SDGsの実現に向けて
2. 新しい豊かなライフスタイルへ
関連情報
2023年度日本造園学会賞奨励賞・著作部門 (公益社団法人日本造園学会 2023年)
https://www.jila-zouen.org/jila_awards/jila_award_winners/2023gakkaisho
著者インタビュー:
農が都市にある風景があたりまえの社会へ——都市型農園の研究者・新保奈穂美に聞く、〈農〉と〈まち〉 (地域想合研究室 | note 2025年3月11日)
https://note.com/usri_lab/n/n3ca76cd10630
まちなかの空きスペースを農園に、多様な“関わりしろ”が魅力 (日経BP 総合研究所『「新・公民連携最前線」』 2024年11月22日)
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434148/110600134/
誰でも収穫して食べてOKな農園も!? 公園の一角やビル屋上などに都市型農園が増加中! 『まちを変える都市型農園』新保奈穂美さんに聞く3事例 (SUUMOジャーナル 2023年8月15日)
https://suumo.jp/journal/2023/08/15/197523/
書評:
森本健弘 (筑波大学) 評 (『地理』 2023年4月号)
https://www.kokon.co.jp/book/b623990.html
八木洋憲 (東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授) 評 (『都市農地とまちづくり』第77号 2022年10月)
https://www.tosinouti.or.jp/infomag_index_vol77/
書籍紹介:
(『地域開発』646号 2023年夏号)
https://jcadr-or-jp-archive.jcadr.org/kaihatsu/mokuji-3/mokuji_2023/mokuji_summer.html
(『日本農業新聞』 2023年4月9日)
https://www.agrinews.co.jp/
空き家・空き地の可能性を見出すための10冊 (『CEL』Vol.132 2023年3月1日)
https://www.og-cel.jp/issue/cel/1720133_16027.html
https://www.og-cel.jp/search/__icsFiles/afieldfile/2023/02/22/08.pdf
自著解説 (『農業共済新聞』 2023年2月15日号)
https://www.nosai.or.jp/shinbun.php
公園の本棚「多様化する公園」 (公園文化WEB 2022年12月)
https://www.midori-hanabunka.jp/book/%E5%A4%9A%E6%A7%98%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B%E5%85%AC%E5%9C%92
(『グリーン情報』vol.500 2022年11月号)
https://green-information.jp/products/detail/398
(『月刊 ガバナンス』 2022年11月号)
https://shop.gyosei.jp/products/detail/11354
メディア出演:
ポッドキャスト「『つくる』を生活に取り戻す、都市型農園というムーブメント」 (『WIRED』 2023年7月13日)
https://open.spotify.com/episode/5fNLFD3GpFvyCMeTz2xMec?si=c6d82556d9664c06
レクチャー、イベント:
都市農地活用支援センター定期講演会2025『都市における農空間の創出」 (一般財団法人都市農地活用支援センター 2025年11月11日)
https://www.tosinouti.or.jp/2025annual/
Lecture #30 都市の余白を耕す ~暫定利用・市民参加から見えるこれからの農の可能性~(ゲスト:新保 奈穂美 氏) (SOCIAL GREEN DESIGN LECTURE 2025年8月5日)
https://socialgreendesign.jp/lecture/2607
イベントリポート (SOCIAL GREEN DESIGN LECTURE | note 2025年12月17日)
https://note.com/sgd/n/n259b49d50345
秋の夜長 BOOK TALK/新保 奈穂美『まちを変える都市型農園 コミュニティを育む空き地活用 』 (青葉山エリアマネジメント 2025年9月9日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/event-2e2fe2aa8b/
都市の余白を耕す ~暫定利用・市民参加から見えるこれからの農の可能性~ (SOCIAL GREEN DESIGN 2025年8月5日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/event-f677d7a16d/
新保奈穂美×饗庭伸「都市と農――日本と世界のトレンドを読む」|『都市を学ぶ人のためのキーワード事典』レクチャーシリーズ Vol.2 (学芸出版社 2024年5月8日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/event-keyword-02/
都市型農園と住まい:先の見えない時代にフレキシブルな空間を|講師:新保奈穂美 (日本建築学会近畿支部住宅部会 2023年3月12日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-event-kyoto-20230312/
「まちを変える都市型農園」出版記念 / シェラトンファーム スペシャルトーク セッション (ゲスト:新保奈穂美さん) (学芸出版社 2023年1月14日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-event-urban-farming-20230114/
新保奈穂美×佐倉弘祐「農から建築を問いなおす」――『まちを変える都市型農園』刊行記念イベントシリーズ (学芸出版社 2022年12月21日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-event-urban-farming-20221221/
新保奈穂美×大谷悠「都市をスキマから面白くする」――『まちを変える都市型農園』刊行記念イベントシリーズ (学芸出版社 2022年11月29日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-event-urban-farming-20221129/
新保奈穂美×小野淳「農でうみだすゆたかなアーバンライフ」『まちを変える都市型農園』刊行記念イベント (二子玉川蔦屋家電 2022年10月28日)
https://store.tsite.jp/futakotamagawa/event/shop/28716-1616250904.html?srsltid=AfmBOop3rXVrVQ8hdJQf82MSH3Ee37WFWhlk5QuTKVHyRPJ4doSocy_R
新保奈穂美×金田康孝「空き地をもっと自由に使おう」――『まちを変える都市型農園』刊行記念イベントシリーズ (学芸出版社 2022年10月10日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-event-urban-farming-20221010/
新保奈穂美×南部良太「都市の農をデザインする」――『まちを変える都市型農園』刊行記念イベントシリーズ (学芸出版社 2022年9月7日)
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-event-urban-farming-20220907/

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