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ブラウンの表紙

書籍名

Sugar and the Indian Ocean World (砂糖とインド洋世界) Trade and Consumption in the Eighteenth-Century Persian Gulf (18世紀ペルシア湾における貿易と消費)

著者名

DAITO Norifumi

判型など

248ページ、ハードカバー

言語

英語

発行年月日

2024年8月8日

ISBN コード

9781350399211

出版社

Bloomsbury Publishing

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

Sugar and the Indian Ocean World

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砂糖史研究は、砂糖の世界的流通と消費の拡大を反映してグローバル・ヒストリー研究としても行われてきたが、その多くが17世紀以降のヨーロッパ市場の急成長と東アジア市場の動向に注目してきた。これに対して本書は、これまで停滞地帯と見なされがちだった18世紀のペルシア湾に光を当てる。ペルシア湾の貿易は、1722年のサファヴィー朝崩壊後の政治的混乱によって衰退したと考えられてきたが、本書はアジア諸地域から輸入された砂糖の動向を追うことで、混乱の中でも市場が強靭に機能し、消費が継続していたことを論じる。
 
本書は七章からなり、18世紀の砂糖市場の強靭性を以下の三点から論じる。
 
一点目は、代替市場の台頭と都市における消費の継続である (第一章、第二章)。そこでは、サファヴィー朝崩壊後、王朝の首都で消費の中心であったイスファハーン市場が衰退の一途を辿る一方、イラン周辺諸地域に代替市場が発展したこと、それらの市場でも新たな支配勢力や都市住民が消費の中心となり、社会生活を牽引したことが論じられている。またカスピ海沿岸部やイラクには、それぞれロシア、地中海経由でアメリカ産砂糖も輸入するようになったことが指摘されている。
 
二点目は、輸入業者間の熾烈な競争である (第三章、第四章、第五章)。本書は、17世紀以降ジャワ産砂糖を輸入したオランダ東インド会社の史料を活用して、会社の公式な貿易だけでなく、個人の貿易の重要性も強調している。王朝崩壊後は、特にイギリス人私貿易商人の活動が活発で、ベンガルや中国南部から砂糖を輸入する一方、ジャワ産砂糖の貿易にも参入してオランダ人による同商品の独占を脅かした。そこで特に指摘されているのは、彼らは、対価となる貴金属や銅の不足に悩む現地の卸売商人により安く、柔軟な契約を提示することによって市場で優位に立ったことである。
 
三点目は、消費者と輸入業者の間を結ぶ現地の仲介者の役割である (第六章、第七章)。本書は、オランダ東インド会社のブローカーを務め、砂糖と金属の交易に携わった現地の商人、とくにバニヤと呼ばれる商人の活動に注目し、ペルシア湾内外に張り巡らされた彼らの柔軟な商業ネットワークが西アジアの砂糖消費の持続的発展を支えていたことを論じている。そこにおいて、ブローカーは単なる会社の使用人ではなく、自身の商売のために会社を利用したり、他国の商人のために働いたりする主体的な貿易の担い手として描かれている。会社は彼らとの協力なしには内陸部への流通網を維持できなかった。
 
全体を通して、本書は18世紀のペルシア湾を適応と再編の場として再評価し、大西洋世界や東アジアに偏っていた砂糖の歴史をインド洋世界という独自の視点から描き直している。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 准教授 大東 敬典 / 2026)

本の目次

Introduction
1. Sugar Consumption and the Sugar Market
2. Enduring Demand
3. Sugar Trade in the Persian Gulf: The VOC
4. Sugar Trade in The Persian Gulf: The VOC’s Competitors
5. Alternative Sugar Hubs: Basra, Bushire and Kharg
6. Company Brokers
7. Persistence of the Commercial Middle Ground
Conclusion

関連情報

書評:
willem floor 評 (『The English Historical Review』Volume 140, Issue 606, p.1209-1211 2025年10月13日)
https://doi.org/10.1093/ehr/ceaf157
 
Karolina Hutková 評 (『Economic History Review』Volume 78, Issue 3, p.977-978 2025年8月)
https://doi.org/10.1111/ehr.70031
 
イベント:
国際研究集会「砂糖、ワイン、ジャウィ文書:17~19世紀、文化的風景の変容」
第1部◆砂糖 (東京大学史料編纂所共同利用共同研究拠点特定共同研究海外史料領域「本所所蔵在外日本関係史料の多角的利用のための翻訳研究」 2024年11月19日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/events/z0206_00015.html
 
BOOK TALK and LAUNCH: SUGAR AND THE INDIAN OCEAN WORLD featuring NORIFUMI DAITO  (The UP Diliman Asian Center 2024年6月26日)
https://ac.upd.edu.ph/index.php/news-announcements/3400-sugar-and-the-indian-ocean-world-trade-and-consumption-in-the-eighteenth-century-persian-gulf-book-talk-and-launch
 
Research Meeting on Economic History 2024 経済史研究会 第773回: 大東敬典 氏 (東京大学) 「砂糖とインド洋世界」 (Center for International Research on the Japanese Economy 2024年5月20日)
https://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/workshops/history/history2024.html
 
ワークショップ「17-18世紀のインド洋(パートII)」を開催 (東京大学史料編纂所共同利用共同研究拠点特定共同研究(海外史料領域)「本所所蔵在外日本関係史料の多角的利用のための翻訳研究」 2022年11月10日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0206_00022.html
 
ロシア東欧研究所:オンライン研究会「ヨーロッパのアジア進出における外交と条約」 (ロシア東欧研究所 2021年5月22日)
https://www.waseda.jp/inst/cro/news/2021/05/07/5780/
 

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