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白い表紙に黒とモカブラウンのタイトル

書籍名

企業法学の方法

著者名

田中 亘

判型など

424ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2024年5月1日

ISBN コード

978-4-13-031205-9

出版社

東京大学出版会

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企業法学の方法

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本書は、著者がこれまで公表してきた研究論文のうち、「企業法学の方法」というテーマに関連するものを選んでまとめた論文集である。
 
企業法学の方法論を追求する
 
著者はこれまで、会社法を中心とした企業法の分野において、解釈論や立法論をどのような方法論で行うことが望ましいのかを追求してきた。本書は、この方法論を論じた論文 (第1部) と、この問題意識のもと、会社法、担保法、倒産法などの具体的な企業法の諸問題について論じた論文 (第2部) を収録している。
 
本書の執筆の背景には、伝統的な法学の方法論に対する著者の問題意識がある。
 
著者は、法解釈の方法論として有力であった利益衡 (考) 量論に長らく賛同してきた。しかし、法制度の設計をする際に、どのような人のどのような利益が実現・保護されるのかを「徹底的につきつめる」ための分析ツールが、従来の法学には不足していたという点に不満を感じていた。法制度が人々の行動、ひいては利益にどのような影響を及ぼすかという間接的な効果を分析するための体系的な方法論が欠けていたのである。
 
この不満を解消するため、著者は法制度を経済学の手法を用いて分析する「法と経済学」という学問分野の知見を積極的に取り入れ、自身の研究に活用してきた。法と経済学は、法制度が人々の利益に与える効果の予測や事後的な検証のための有用なツールを発展させている。拙著に収録した論文は、すべてそうした研究成果を取り入れたものである。
 
「効率性」基準の重要性
 
伝統的な法学の方法論である利益衡 (考) 量論に対するもう一つの筆者の不満は、解釈論や立法論の「決め手」であるとされる価値判断をどのように行うのかを明らかにしてこなかった点にある。
 
法制度の設計は、必ず利益を得る人と不利益を被る人を出す。その中で、誰の利益を優先することが望ましいのか、その判断方法が必要となる。
 
本書全体を通じて強く打ち出している立場は、法制度の望ましさの判断にとって、「法制度が社会の人々に対し、全体としてより多くの利益をもたらすか」ということが、非常に重要な考慮要素になるという点である。すなわち、利益も不利益 (マイナスの利益) も、誰に生じるかを問わず合算したとき、ネットの利益が大きくなる法制度が望ましいということである。
 
この利益の大きさを測る基準として、著者は法と経済学で有力な「効率性 (efficiency)」基準を、欠点に留意しながらも企業法の分野では基本的に適切だと考えて採用している。効率性基準は、利益の大きさを、その人がその利益に対してつける金銭評価額によって測るという立場をとる。
 
公正・正義との関係
 
以上のような著者の立場に対しては、「効率性」基準だけで法制度の望ましさを判断できるのか、社会正義や公正といった観点は重要ではないか、という疑問は当然生じるだろう。これに対し、著者は企業法を研究してきた実感から、次の2点を強調したい。

1. 一般に公正や正義の観点から支持される法制度は、その制度が社会に普及することで、社会の人々に生じるネットの利益が増大すると期待できるため、効率性の観点からも支持できることが多い。例えば、詐欺を禁じる法制度は、社会の取引における非効率な事態を防ぐという点で効率性からも正当化される。
 
2. 敵対的買収への防衛策の是非や倒産手続きにおける担保権の効力の制限など、具体的な法律問題の多くは、公正の観点からは何が言えるのかがはっきりしない場合が多い。そうした問題についても、効率性を基準に経済学の知見を踏まえることで、どのような法制度が望ましいかについて、有益な洞察が得られる場合が多かった。

本書は、こうした方法論に関する著者の考えと、それを具体的な問題に適用した結果をまとめたものである。本書の冒頭に収録した「序論」では、著者が企業法学の方法に関してどのような問題意識のもとに研究を行い、現在どのような考えを持つに至ったかを説明している。「効率性」といった経済学の概念についても解説しているので、まず序論に目を通してもらえれば幸いである。

著者としては、一人でも多くの読者が、本書で用いているような分析手法が、少なくとも企業法の分野では、法制度の望ましさを判断するための有力な分析手法であると認めてくれることを願っている。
 

(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 田中 亘 / 2025)

本の目次

[序論] 企業法学の方法

第1部 方法論
[1] 商法学における法解釈の方法
[2] 経済分析は法学の発展にどのように寄与するか
[3] 会社法学における実証研究の意義
[4] わかりやすい会社法と法の評価基準を求めて
[5] なぜ法律家は数理的分析を学ぶべきなのか

第2部 その実践
(1)会社法
[6] 上場会社のパラドックス
[7] 株主第一主義の合理性と限界
[8] 忠実義務に関する一考察
[9] 従業員と会社法についての一試論
[10] 自己株式規制の過去・現在・未来

(2)諸法
[11] 担保権消滅請求制度の経済学
[12] 事業担保に関する一考察
[13] 公益通報者保護制度の意義と課題
[14] 財産権と経済活動
 

関連情報

著者インタビュー:
会社法改正中間試案「株主が見えない」問題にどう応えるか―東京大学・田中亘教授が語るオプションの拡大と資本市場の活用 (BUSINESS LAWYERS 2026年6月5日)
https://www.businesslawyers.jp/articles/1547
 
新刊著者訪問 第46回 (東京大学社会科学研究所ホームページ 2025年1月10日)
https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/interview/publishment/tanakaw_2025_01.html

書評:
齊藤真紀 評 (『ジュリスト』No.1611, p.89 2025年6月)
https://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/021520
 

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