東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙にトランプの白黒写真

書籍名

U.P. Plus トランプのアメリカ 内政と外交、そして世界

判型など

248ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年8月18日

ISBN コード

978-4-13-033309-2

出版社

東京大学出版会

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トランプのアメリカ

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2025年1月に再スタートしたドナルド・トランプ政権は、アメリカのみならず世界を揺さぶっている。戦後アメリカは、人権や民主主義の観点から着実に進歩をみせてきていたが、現在の分極化は留まるところを知らない。そして、超大国として戦後国際秩序において中心的な役割を果たしてきたアメリカが、国際協調に背を向け、自国利益を追求し、また普遍的価値観を推進しようとしていないことに、世界は衝撃を受けている。
 
これまでの世界が過度にアメリカに依存してきたことは、トランプ政権の批判を受け入れるまでもなく歴然とした事実であり、アメリカのパワーが相対的に低下し、新興国の成長が著しい時代において、世界はアメリカのみに依存しない新たな秩序の形成に向けて動き始めたということもできるのかもしれない。しかし、トランプ政権の動きがあまりにも早いために、その動揺は大きく、また例えば国際援助体制が受けている打撃に見られるように、多くの人道的な問題も深刻化している。世界の自由貿易体制も大きく揺らいでおり、戦後経済の柱が揺さぶられているとも言える。仲介を好むトランプ大統領によって、仲介が成功した地域紛争もあるが、ウクライナ戦争や中東は依然として戦禍に苦しんでいる。
 
果たして、トランプ政権の動きと国際秩序の行方をどのように理解すればいいのか。なぜアメリカは急速に世界への向き合い方を変えたのか。それはトランプ政権後も続くのか。そもそもアメリカという国が内政において何を重視しようとしているのか。それを動かしている力は何か。どうしてトランプ政権のように前例にとらわれない政策の実行が可能なのか。トランプ政権を止められるものは、もはや何もないのか。
 
本書では、そのような疑問に答えるべく、15名の著者がさまざまな角度からトランプ政権の内政、外交、およびトランプ政権を見つめる各国の視線について議論した。
 
議論の中では、2024年のアメリカ大統領選挙がアメリカの民主主義や外交にどのような意味を持っているのか、現在のアメリカにおいて大統領権限はどれほど肥大化しているのか、議会や政策機関の役割とは何か、有権者、特に労働者は何を求めているのか、宗教の役割は何かなど、多様な角度から議論が展開されている。トランプ外交や、それに対する中国や北朝鮮、ヨーロッパ、ラテンアメリカの反応についても論考が寄せられており、多角的にアメリカと世界の関係について考察することができる。
 
本書は、「UP+」という東京大学出版会が展開している新たなシリーズの一冊として出版されている。過去には、同じ佐橋の編集による『バイデンのアメリカ』も出版されているが、このシリーズでは、学生が手に取りやすいように、読みやすい文体と今後の学習につながるような参考文献の提示をしている。2段組で250ページ弱と分量はあるが、本書を読んでいただければ、国際政治やアメリカ政治研究が現在どのような議論をしているのか理解することができるだろう。
 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 佐橋 亮 / 2025)

本の目次

はじめに (佐橋 亮)

【特別掲載】第二次トランプ政権を考える - 「空白の四年間」を視野に入れて(久保文明:防衛大学校長・東京大学名誉教授)
    1  「空白の四年間」
    2  四年の時差
    3  トランプIとトランプIIの違い
    4  未達成の課題と後悔
    5  MAGA運動の勢い
    6  報 復
    7  新規の政策
    8  トランプI対トランプII
    おわりに
 
内 政

1.  抑制と均衡? - 第二次トランプ政権の関税政策と大統領権限(梅川 健:東京大学法学部教授)
    はじめに
    1  現代アメリカ政治の構造と文脈
    2  大統領権限と関税
    3  第二次トランプ政権と関税政策
    おわりに

2.  分極化の時代の連邦議会 - 下院議長の役割に注目して(待鳥聡史:京都大学大学院法学研究科教授)
はじめに
    1  歴史からの検討
    2  制度からの分析
    3  第二期トランプ政権と下院議長
    おわりに

3.  二〇二四年米大統領選挙 - 民主党敗北と民主主義の危機(渡辺将人:慶應義塾大学総合政策学部教授)
    1   2024年大統領選挙とは何だったのか
    2  トランプの「圧勝」を許した民主党とその要因
    3  民主党への否定、候補者への否定
    4  党内競争なき指名「禅譲」と民主党指導層の主導権争い
    5  予備選なしの指名獲得と予備選の価値再考
    6  2024年カマラ・ハリスと民主党特有の問題
    7  共和党「トランプ連合」の形成
    8  キリスト教保守派と「ゲームチェンジャー」としてのイスラエル
    9  リバタリアンの再合流と「囚人のジレンマ」的状況
    10  民主主義への含意――結語にかえて
 
4.  労働者層をめぐる二大政党の変化(松井孝太:杏林大学総合政策学部准教授)
    はじめに
    1  労働者層と二大政党
    2  バイデン政権による労働者層支持回復の試みとその限界
    3  共和党は「労働者層の政党」に向かうのか
    おわりに

5.  トランプ2・0における宗教と文化戦争(藤本龍児:帝京大学文学部教授)
    はじめに
    1  トランプ2.0における宗教保守の作用
    2  文化戦争で見えなくなる世界
    3  ユダヤ――キリスト教的デモクラシー
    おわりに

6.  アメリカの連邦制と外交 - イスラエル国債への公金投資を拡大する州政府・地方政府(梅川葉菜:駒澤大学法学部准教授)
    はじめに
    1  イスラエル国債と州政府・地方政府
    2  イスラエル国債へ投資の背景にあるもの
    3  イスラエル国債へ投資の例外性と歴史
    4  イスラエル国債への投資という外交手段の位置付け
    おわりに

II アメリカにおける内政と外交の交錯

7.  トランプ外交とは何か - 米中対立と国際秩序の将来(佐橋 亮:東京大学東洋文化研究所教授)
    はじめに
    1  トランプ外交の特徴とは
    2  米中対立はどうなるのか
    3  米中関係と国際秩序の今後
    4  日本に求められる考え

8.  ガザ危機からみる二〇二四年アメリカ大統領選(三牧聖子:同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)
    1  「ガザを所有」発言の衝撃
    2  ガザ問題が大統領選に落とした影
    3  トランプを「平和の候補」に見せたハリスの失策
    4  日本外交に求められること

9.  国際主義の動揺とシンクタンクの変容(宮田智之:帝京大学法学部教授)
    はじめに
    1  外交エスタブリッシュメントとしてのシンクタンク
    2  イデオロギー系シンクタンクの拡大
    3  外交エスタブリッシュメントへの逆風
    4  抑制主義の台頭
    5  MAGA派インフラの拡充
    6  ヘリテージ財団の「変容」
    7  第二次トランプ政権とシンクタンク
    おわりに

10.通商政策から見るトランプ第二政権の内政と外交の交錯(舟津奈緒子:公益財団法人日本国際問題研究所研究員)
    はじめに
    1  2024年アメリカ大統領選挙
    2  トランプ大統領と貿易
    3  国内の反応
    おわりに

III アメリカをみつめる世界

11ランプ2.0と対峙する中国(山口信治:防衛省防衛研究所主任研究官)
    はじめに――第二次トランプ政権の始まり
    1  2017年と2025年
    2  中国はトランプ2.0をどう見るか
    3  予測される政策の方向性
    4  今後の注目点
    おわりに

12北朝鮮の対外認識と米朝関係 - 「新冷戦」・「多極化」認識と「国防五カ年計画」(倉田秀也:防衛大学校教授)
    はじめに――第二回首脳会談後の米朝関係
    1  バイデン政権と「モラトリアム」解除――二つの戦争想定下の「国防五カ年計画」
    2  金正恩の大国関係認識――「新冷戦」と「多極化」認識
    3  「戦略的・戦術的協働」――北朝鮮とウクライナの戦術的連動
    おわりに――「軍備管理」交渉の陥穽

13「アメリカ問題」に苦悩するヨーロッパ(合六 強:二松学舎大学国際政治経済学部准教授・政策研究大学院大学客員研究員)
    はじめに
    1  第一次トランプ政権と欧州安全保障秩序
    2  「米国問題」の浮上と「戦略的自律」をめぐる欧州の亀裂
    3  戦争が戻ってきた欧州
    4  第二次トランプ政権の衝撃
    おわりに――「米国問題」に直面する欧州
 
14ラテンアメリカにおける米中対立の展開 - 離れる米国、近づく中国(大澤 傑:愛知学院大学准教授)
    はじめに
    1  対立の兆し
    2  関心の逆転
    3  中国のラテンアメリカ進出に伴う安全保障上のリスク
    4  ラテンアメリカの自律性
    5  米国の視座
    おわりに――トランプ再登板を迎えて
 
あとがき(梅川 健)
 

関連情報

特設ページ:
トランプのアメリカ | 特設サイト
https://www.utp.or.jp/special/AmericaUnderTrump/
 
自著解説:
教員の著作が刊行されました (東洋文化研究所ホームページ 2025年10月31日)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=FriOct311030532025
 
書評:
山口航 評「(読書)トランプのアメリカ=佐橋亮・梅川健編/政権の構造的背景や影響にメス」 (『公明新聞』 2025年11月3日)
https://digital.komei-shimbun.jp/kmd/article/0298202511030501
 
短評 (『日本経済新聞』 2025年10月11日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91867660Q5A011C2MY6000/
 
上川孝夫 (横浜国立大学名誉教授) 評「米大統領権限やアメリカ社会の分断などを多数の専門家が分析」 (『週刊エコノミスト』10月14日・21日合併号 2025年10月3日)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20251021/se1/00m/020/010000c

書籍紹介:
オトナの教養 週末の一冊
熟読しておきたい2025年の「骨太書籍」5冊、日本や世界を知ろう (Wedge ONLINE  2025年12月20日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/39664

講義動画:
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序 (1)
国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊 (10min Academy 2025年6月23日)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5885
 
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(2)米中対立の現在地 (10min Academy 2025年8月14日)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5886
 
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性 (10min Academy 2025年8月21日)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5887
 
イベント:
『トランプのアメリカ――内政と外交、そして世界』刊行記念ウェビナー 第2弾 外交編/第3弾 国際関係編 (公益財団法人日本国際問題研究所 2025年12月17日)
https://www.jiia.or.jp/eventreport/cal20251217-01.html
 
「『トランプのアメリカ』刊行記念ウェビナー第1弾 内政編」 (公益財団法人日本国際問題研究所 2025年9月22日)
https://www.jiia.or.jp/eventreport/20250922-02.html
国問研『トランプのアメリカ』刊行記念ウェビナー第1弾 内政編 (The Japan Institute of International Affairs | YouTube  2025年9月30日)
https://www.youtube.com/watch?v=4PvlbQ-4aqo

【Webセミナー】ライブ配信
第二次トランプ政権が目指す米国内政・外交の姿 (公益社団法人日本経済研究センター 2025年8月27日)
https://www.jcer.or.jp/holding-seminar/20250827tokyo.html
 

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