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ミャンマーの仏教徒が歩いている写真

書籍名

Contemporary Buddhism Living with the Vinaya An Ethnography of Monasticism in Myanmar

著者名

KURAMOTO Ryosuke

判型など

226ページ

言語

英語

発行年月日

2024年11月

ISBN コード

9780824897550

出版社

University of Hawai'i Press

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

Living with the Vinaya

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みなさんは「出家」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか。家庭や仕事といった社会的な役割から離れて、静かに修行する姿を思い浮かべるかもしれません。本書は、そんな出家者の暮らしを定める「律 (Vinaya)」という規範に注目し、それがどのように現代ミャンマーの社会や国家と関わりながら制度として成り立っているのかを追いかけた民族誌です。
 
じつは、出家者は社会から完全に切り離されて生きているわけではありません。僧院は在家者 (一般心と) の布施や国家の政策と深く結びついています。だからこそ「出家者・在家者・国家」がどう関わるかが、僧院のあり方を決めていくのです。私はこの三者の関係から成り立つ仕組みを「僧院制度」と呼び、その実態をフィールドワークによって明らかにしました。
 
本書は三つの視点から僧院制度を考察しています。まず第一部 (マクロ) では、11世紀から現代までの歴史をふり返りながら、律や仏教史書が出家者と王権の関係をどう規範化してきたのかを整理します。第二部 (メゾ) では、現代ヤンゴンの都市僧院を観察し、律の規定が出家者の財産の扱い、ライフコース、宗派形成、都市社会との関わりにどう影響しているのかを描きました。さらに第三部 (ミクロ) では、ヤンゴン郊外の「森の僧院」に入り込み、律を徹底して守ろうとする出家者たちの挑戦――社会から距離をとる、あるいは運営を在家者にゆだねる――を、自分自身が出家した経験も交えて分析しました。最後には、こうした分析から「聖典の人類学」という新しい研究の視点を提案しています。
 
本書の新しさは四つあります。第一に、現代ミャンマー僧院を長期調査した民族誌はきわめて少なく、Spiro (1970) やMendelson (1975) 以来の成果となりました。第二に、仏教学が経典中心、人類学が在家者中心になりがちだった研究状況の中で、出家者の実際の生活に迫った点です。第三に、僧院の運営が国家や社会のガバナンスと不可分であることを示し、宗教を「社会を動かす仕組み」として捉え直した点です。第四に、日本の研究成果を国際的な学術対話へとつなげた点です。
 
本書で伝えたいのは、宗教は単に信じるものではなく、人々の生き方や社会の秩序を形づくる制度でもあるということです。僧院を窓口にしてみると、宗教と社会が交わりながら新しい秩序を生み出していく姿が見えてきます。本書を通じて、「聖典」や「制度」を通じて社会を考えることの面白さを感じていただければうれしいです。
 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 藏本 龍介 / 2025)

本の目次

Explanatory Notes
Preface
Acknowledgments
Part 1: Macro-Level Monasticism
    Chapter 1: Introduction
    Chapter 2: History of Macro-Level Monasticism in Myanmar
Part 2: Characteristics of Meso-Level Monasticism
    Chapter 3: The Dynamics of Gaing and Life Course of Monks in Myanmar
    Chapter 4: City-Dwelling Monks
    Chapter 5: Monasteries: Present Conditions and Problems
Part 3: Dynamics of Micro-Level Monasticism
    Chapter 6: Two Scholarly Forest Monasteries
    Chapter 7: Challenge to Renounce Society
    Chapter 8: Challenge of Self-Governance
    Chapter 9: Conclusion
References
 

関連情報

受賞:
第15回 (2025年度) 地域研究コンソーシアム賞 研究作品賞 (JCAS - 地域研究コンソーシアム 2025年)
https://jcas.jp/award/
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0203_00033.html
 
自著解説:
教員の著作が刊行されました (東洋文化研究所ホームページ 2024年11月29日)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=ThuNov281126002024
 
書評:
Living with the Vinaya is an exceptionally strong book that will set a standard for ethnography of Theravada monasticism. It is an insightful exploration of issues of monastic governance and how the support of monks shapes Burmese society as a whole.
—Alicia Turner, York University

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