
書籍名
日本の分断はどこにあるのか スマートニュース・メディア価値観全国調査から検証する
判型など
304ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2024年10月
ISBN コード
978-4-326-60375-6
出版社
勁草書房
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
「分断」という言葉は、ニュースの見出しに頻繁に登場します。多くの場合、政治上の激しい対立を指しますが、その対立が経済的なものか、あるいは価値観をめぐるものかによって、当事者も、そして対立の広がりや深さも異なります。さらに、「分断」という言葉は専門用語ではなく、状況を直感的に表すために使われているのが実情です。したがって、「分断」と呼ばれる現象について、何をめぐって誰が対立しているのかを明らかにすることは、学術的な関心にとどまらず、現実の対立を融和へと導くためにも重要です。
一方で、「分断」の拡大にはソーシャルメディアの普及が関係しているという見解も広く共有されています。日常的にX (旧Twitter) やYouTubeの投稿やコメントを目にするだけでも、そのような印象を受けるかもしれません。しかし、政治を語るには印象や憶測だけでなく、確かな根拠が必要です。『日本の分断はどこにあるのか』は、大学に所属する研究者とスマートニュース メディア研究所が共同で実施した、全国規模のランダム・サンプリングに基づく社会調査データを分析した論文を収めています。
前半では、第1章で「分断」が早くから観察され、多くの議論が行われてきたアメリカ合衆国の状況を概観します。続いて、第2章では日本における伝統メディアとインターネットメディアの利用状況を、年齢による違いに着目して検討します。さらに第3章では、さまざまなメディア利用の選択パターンを分析しています。
後半では、「分断」の軸に沿った分析が提示されます。具体的には、(1) イデオロギーによる分断、(2) 政治との距離による分断、(3) 道徳的価値観による分断、(4) リーダーシップのスタイルによる分断、(5) 政治や社会に対する見通しと評価による分断、の5つを検討しています。日本における「分断」は、アメリカ合衆国のようにイデオロギー的に一元化されておらず、対立の程度も強くありません。日本ではイデオロギーの一貫性が低く、多元的な「分断」が生じています。しかし、このように分断が多元化すると、社会的に重要な対立や意見の相違が政治の場で代表されにくくなり、有権者の閉塞感が高まる傾向があります。
ただし、展望は必ずしも悲観的ではありません。アメリカと異なり、日本では伝統的なマスメディアへの信頼が比較的高く維持されており、支持政党や政治的イデオロギーとメディア利用パターンとの関係も強固ではありません。政治とメディアの関係は一方通行ではなく、相互に影響を与え合います。インターネットやソーシャルメディアの世界は変化が激しく、利用されるプラットフォームの種類も数年で大きく変わります。情報の発信や流通の仕組みをどう設計するかによって、政治的な対立が存在しても、より冷静に議論できる環境を整えることは可能だと考えられます。
(紹介文執筆者: 情報学環 教授 前田 幸男 / 2025)
本の目次
序章[池田謙一・前田幸男]
0.1 国・社会の分断軸の検討――「分断」のもつ多次元性を踏まえて
0.2 各章の概観
0.3 5つの軸とメディア情報環境を総覧して分かることは何か
第I部 日本の政治的分断の現在地と情報世界の動態
第1章 日米で分極化はどう異なるのか――SMPP調査とアメリカ世論調査の比較[山脇岳志・小林哲郎]
はじめに
1.1 アメリカにおける政治的分極化の現状とその原因
1.2 日本におけるイデオロギーと分極化の特徴
1.3 日米比較:同性婚・移民受け入れ・環境保護の争点態度にみる分極化
1.4 日米比較:ナショナリズムをめぐる認識についての分極化
1.5 日米比較:マスメディアをめぐる分極化
1.6 まとめ
コラム1 情報の偶発的接触とエコーチェンバー[笹原和俊]
第2章 SMPP調査が捉えたメディア接触の諸相――伝統メディア,そしてインターネットメディアをめぐる読者の選択[藤村厚夫]
はじめに
2.1 デジタルデバイスの浸透状況
2.2 新聞,テレビなど伝統メディアとの接触
2.3 インターネットメディアとの接触
2.4 (ニュース)メディアをめぐる価値認識
2.5 「何が重要なニュース」なのか
2.6 購読制インターネットメディアの拡大を阻むものは何か?
2.7 メディア選択と世代対立
おわりに――まとめとして
第3章 人々はメディアをどのように利用しているのか――メディア接触の6パターンとメディア利用意識から[大森翔子]
はじめに
3.1 複雑化する情報環境と本章の狙い
3.2 利用するデータ
3.3 メディア接触行動のグルーピング――6つのメディア接触パターン
3.4 メディア意識変数を従属変数とした多変量解析
3.5 結論と含意
補遺 SMPPインターネット調査データを用いた潜在クラス分析
コラム2 「ニュース回避傾向」はなぜ生まれるのか?[山脇岳志]
第II部 5つの分断軸と日本人の政治意識・行動
第4章 政治対立は日本社会の対立を規定しているか――イデオロギーによる分断[遠藤晶久・田部井滉平]
はじめに
4.1 日本におけるイデオロギー対立
4.2 イデオロギー自認と政策対立
4.3 主観的社会対立
4.4 結論
コラム3 メディア利用の自己効力感[前田幸男]
第5章 私生活志向は何をもたらすか――政治との距離による分断[小林哲郎]
はじめに
5.1 私生活志向とは何か?
5.2 2000年代からの私生活志向の変化
5.3 誰が政治への関与を避けているのか
5.4 政治非関与者の情報環境
5.5 政治非関与と自助努力志向の親和性
5.6 私生活を重視するがゆえの権威主義的志向
さいごに――「私生活志向のゆくえ」再考
第6章 日本人の道徳的な傾向は分断に結びついているのか――道徳的価値観による分断[笹原和俊・松尾朗子]
はじめに
6.1 日本人の道徳的価値観――個人志向と連帯志向
6.2 日本人の神聖基盤の特異性
おわりに
第7章 首相への好悪は有権者における対立を深めたのか――リーダーシップのスタイルによる分断[前田幸男]
はじめに
7.1 問題関心と仮説
7.2 利用するデータと記述統計
7.3 歴代首相好感度の回帰分析
7.4 首相好感度から派生する野党に対する嫌悪感
7.5 結論と考察
第8章 人々の「統治の不安」はどのような行動につながるのか――政治や社会に対する見通しと評価による分断[池田謙一]
はじめに
8.1 「統治の不安」とは
8.2 統治の不安と政治参加をめぐる仮説
8.3 分断軸5をめぐる諸要因――従属変数・独立変数の選択と分析手続き
8.4 統治の不安に関わる仮説の検証
8.5 政治参加に関わる仮説の検証
8.6 メディア接触パターンと統治の不安の連関性
8.7 メディア接触パターンと政治参加の連関性
8.8 ネット調査データによるロバストネスチェック
8.9 仮説およびRQの全体のまとめ
結 語
コラム4 日本の国力認知と統治の不安・社会の分断[池田謙一]
あとがき[山脇岳志]
索 引
編著者・執筆者略歴
関連情報
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/2023-1/
書籍紹介:
あとがきたちよみ『日本の分断はどこにあるのか――スマートニュース・メディア価値観全国調査から検証する』 (けいそうビブリオフィル 2024年10月15日)
https://keisobiblio.com/2024/10/15/atogakitachiyomi_nihonnobundan/
著者インタビュー・コラム:
第1回SMPP調査の見取り図(上)
スマートニュース・メディア価値観全国調査は、どう受け止められたのか? (スマートニュース メディア研究所 2024年12月30日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-2534/
第1回SMPP調査の見取り図(下)
スマートニュース・メディア価値観全国調査は、どう受け止められたのか? (スマートニュース メディア研究所 2024年12月30日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-2541/
メディア価値観調査から見えた日本の分断・分極化の実態 (『宣伝会議』 2024年11月27日)
https://www.sendenkaigi.com/marketing/media/sendenkaigi/031061/
書評:
渡部晶 評 (『ファイナンス』No.713, p.63) 2025年4月号)
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/denshi/202504/index.html#page=67
浅野正彦 (拓殖大学教授) 評「バイアスのないエビデンスを提供」 (『公明新聞』 2025年1月20日)
https://digital.komei-shimbun.jp/ex-keyword/reading/0126202501200501
吉田徹 (同志社大学教授) 評「2024年回顧総特集 政治学」 (『週刊読書人』 2024年12月20日号)
https://dokushojin.net/news/820/
解説 (『読売新聞』 2024年12月4日)
藤田結子 (東京大学准教授) 評「「ともに語らう」出発点のために」 (『朝日新聞』 2024年11月9日)
https://book.asahi.com/article/15500408
武田徹 評「メディアの風景 「政治非関与層」の棄権 民主主義、守る戦略が急務」 (『毎日新聞』 2024年11月5日)
https://mainichi.jp/articles/20241105/ddm/004/070/001000c
佐藤卓己 (上智大学教授) (共同通信配信コラム「東奥日報」 11月2日)
石澤靖治 (学習院女子大学 国際文化交流学部 教授・元学長) 評「日本の分断を読むための教科書」 (スマートニュース メディア研究所 2024年10月21日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-2487/
関連記事:
69% of Japanese Public Trusts the Media, Says Survey; Trust Highest in Older Generations (The Japan News 2025年6月11日)
https://japannews.yomiuri.co.jp/society/general-news/20250611-262610/
「統治の不安と分断がもたらす政治参加」池田謙一 (スマートニュース メディア研究所 2024年4月1日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-1761/
「『政治と関わりたくない人たち』がもたらす政治的帰結」小林哲郎 (スマートニュース メディア研究所 2024年4月1日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-1758/
メディア接触の新潮流...『ニュース回避傾向』が強い層の特徴とは?」大森翔子 (スマートニュース メディア研究所 2024年4月1日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-1754/
「日本人の道徳的価値観と分断の萌芽」笹原和俊 (スマートニュース メディア研究所 2024年4月1日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-1749/
「『イデオロギーの対立』は社会にどれくらい根付いているか?」遠藤晶久 (スマートニュース メディア研究所 2024年4月1日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-1742/
「首相への好悪から見る『分極化の起点』」前田幸男 (スマートニュース メディア研究所 2024年4月1日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-1733/
「日本の『分断』を追う10年プロジェクト始動──第1回調査で垣間見えた日米の差異」山脇岳志 (スマートニュース メディア研究所 2024年4月1日)
https://smartnews-smri.com/smppsurvey/media_value_research-1715/
シンポジウム:
この2年で日本の分断はどう変わったのか?現在地を計測する 「スマートニュース・メディア価値観全国調査2025」 メディア向けシンポジウムを実施しました (スマートニュース メディア研究所 2025年10月24日)
https://about.smartnews.com/ja/news/2421.html

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