本書は、大学1年生向けの社会学の入門書である。特に、社会学に興味を持つ「新入者」や「新人」を対象に、社会学のこれまでのあゆみを示すことを意図している。
社会学のよく整理された教科書は、日本語でもこれまでに数多く出版されている。そのなかでも、特に本書では、次の二点に注意して書かれた。
第一に、「何をどのように考えてきたのか」という本書の副題に示されているように、社会学者の基本的な概念と社会学者の思考の道筋をたどる点にある。社会学の主要な論点を、「個人と社会」、「家族と親密圏」、「犯罪と逸脱」、「仕事と産業」「福祉と貧困」などの、13のトピックスに分けて基礎的な概念の関連性や、つながりをたどれるようにした。
第二に、そのような道筋をなるべくコンパクトに提示しようとした点にある。著者のあいだで、社会学を学ぶうえで、基本的概念を共有し、それらをできるだけわかりやすく、できるだけ平易に示そうとした。本書は社会学者によって生み出された主要な概念のつながりの見取り図を提示したものだといえる。
社会学における新入者の役割は、ほかの学問とは少し異なっているかもしれない。新しい現象が、多様に生じる近代以降の社会では、その当事者はベテランの社会学者よりも、新入者のほうが社会の変化を敏感に捉えることは多いだろう。実際に、社会学の発展は、それぞれの時代の新しい社会現象を理解しようとしてきた、社会学の新入者たちの手によって担われてきた。
一方で、新しい社会現象の理解は、社会学が作り出した諸概念を用いることで、よりよく理解される (と、多くの社会学者は信じている)。だから、社会学の導入のためには、社会学の基本的概念を流れのなかで理解してもらうことが求められる。このような基本的な概念のつながりを簡潔に示すことは簡単ではなかった。社会学者の主要な概念が何かは、ある程度の合意ができると考えられるが、必ずしも、概念間のつながりは同じとはならない。これは本書の執筆過程における共著者間のやりとりでも何度も気づかされた点であった。社会学の重要な概念の結びつけ方には自由度があり、本書はそのひとつに過ぎない。
本書は以上のように、社会学の軌跡をたどることとコンパクトさの両立を試みたものである。それ達成されたかは読者の評価にゆだねられる。新しく社会学に興味を持つ人が、新しい社会現象と社会学的文脈とを結びつけ、新しい社会学の概念を付け加えてもらえる一歩になることを願っている。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 准教授 米澤 旦 / 2025)
本の目次
第1章 個人と社会
第2章 自己と他者
第3章 家族と親密圏
第4章 仕事と産業
第5章 病と医療
第6章 福祉と貧困
第7章 犯罪と逸脱
第8章 グローバル化と開発
第9章 メディアと文化
第10章 社会階層と不平等
第11章 ジェンダー
第12章 都市・地域
第13章 権力と自由
終 章 方法としての社会学

書籍検索





