
書籍名
猫社会学、はじめます どうして猫は私たちにとって特別な存在となったのか?
判型など
240ページ、四六判
言語
日本語
発行年月日
2024年6月26日
ISBN コード
978-4-480-86484-0
出版社
筑摩書房
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
『猫社会学、はじめます』は、「猫と人間の関係」を社会学の視点から捉え直した、日本ではまだ例の少ない研究の試みをまとめた本である。出発点にあるのは、「なぜ私たちは猫をこれほど可愛いと感じるのか」「なぜ猫は家族のような存在として受け止められるようになったのか」という、ごく身近でありながら説明の難しい問いである。
かつて猫は、ネズミを捕るなどの「役に立つ存在」として人間社会に受け入れられてきたが、現代では生活をともにする存在として、感情的にも大きな意味をもつようになっている。本書は、この変化を歴史的・社会的に捉え、人と猫の関係がどのように形づくられてきたのかを明らかにしようとする。
赤川学が担当した第1章では、インタビュー調査の語りを分析し、「猫はなぜ可愛いのか」という問いに具体的に迫る。そこでは、猫が散歩を必要とせず飼いやすい存在として認識されていること、優しく大人しい性格や外見の魅力が語られていること、さらに自由で気まぐれに振る舞いながら時に甘えてくる関係が人間に強い愛着を生むことなどが示される。こうした複数の要素が重なり合い、人は猫に対して心が通じているかのように感じ、見返りを求めない愛情を注ぐ関係が成立していることが明らかにされる。
本書ではさらに、猫カフェや猫島、マンガに描かれる猫など、さまざまな場面を通して、人と猫の関係が社会のなかでどのように位置づけられているのかが検討される。猫をめぐる実践や表象を追うことで、家族観や親密性、地域社会や観光のあり方までが見えてくる。
また、出口剛司教授の担当章では、猫を私たちの生活圏に存在する身近な「自然」として捉え、人間中心の社会のあり方を考える手がかりとして位置づける。猫との共生は、文明と自然、主体と他者の関係を問い直す契機にもなりうることが、批判理論の視点から論じられている。
本書の意義は、猫を特別な存在として称揚することではなく、猫という身近な存在を手がかりに、人間の生活や社会のあり方を考え直そうとする点にある。猫との関係を通して、家族、孤独、ケア、親密性といった現代的なテーマが具体的に浮かび上がる。
日常の小さな疑問から出発し、それを調査と分析によって社会的な問いへと育てていく――本書は、そのプロセスを示す入門書でもある。猫の本でありながら、同時に人間社会について考えるための一冊となっている。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 赤川 学 / 2026)
本の目次
第1章 猫はなぜ可愛いのか?(赤川 学)
「役立つ存在」から「家族の一員」へ/「猫の可愛さ」分析のための調査実習/七つの「猫の魅力」/七つの「魅力」の論理的な関係/猫とのあいだでしか「純粋な関係性」は存在しない?/「猫社会学」の可能性
第2章 私たちは猫カフェから何を得ているのか?(新島典子)
犬とは異なる出会い方/猫カフェの歴史を駆け足で/猫カフェとはどんな場所?/「猫カフェ」のイメージ/猫カフェをどう楽しんでいるのか?/「文化」としての猫カフェ/猫だけでなく人とも出会える「猫カフェ」
第3章 ふつうの猫しかいない「猫島」に人はなぜ訪れるのか?(柄本三代子)
人口54人の小さな離島/人気の「猫島」になるまで/猫島での体験をネットで「予習」/”猫旅“気分の醸成/人と猫のあいだに成立するアフォーダンス/猫島はなぜ人を移動させるのか?/見たいものだけ見えるメガネ/猫島と二つの法律/「猫はかわいい」のその先へ
第4章 猫から見た「サザエさん」―猫が「家族」の一員になったのはいつか?(秦美香子)
猫コミックエッセイが想定していること/「純粋なペット」から「家族ペット」へ/猫の視点から『サザエさん』を分析する/「猫のいる場所」「猫による迷惑」「猫と動物医療」/猫が人間社会の中へ入っていった高度成長期/「家族ペット」につながる猫の描写/「猫の家族化」をマンガ作品から読み解く可能性
第5章 人と猫は、いかにして互いを理解し合っているのか?(出口剛司)
身近な「自然」で、もっとも具体的な「他者」/人間の闇と猫との関係/批判理論とはなにか?/「コミュニケーションできている」とは?/言葉はいらない猫/「自己」をもつ猫/「猫と広がる社会学」の可能性
特別対談 猫が教えてくれた、「ただ、いるだけ」の価値(赤川 学×斎藤環)
深い喪失感/夢に出てきてほしい……/猫と「ふたりだけの時間」/猫社会学のきっかけ/「ただ、いるだけ」の価値/社会的孤立と猫/猫と人間の関係、これからどうなる?
関連情報
因為貓咪很可愛:有時愛你有時不理你,神秘又有趣的貓社會學 (PCuSER電腦人文化 2026年4月16日刊行)
https://www.books.com.tw/products/0011048055
著者インタビュー:
午後1時台 ひとのわ 新しい学問!?「猫社会学」って何? (『NHK まんまる』 2025年5月22日)
https://www.nhk.jp/p/manmaru/rs/GNWPP74MG4/episode/re/JZRM5K5NN8/
「猫はどうして可愛いのか」東大教授が大真面目に研究したら・・・ (いぬじかん&ねこ自慢【BS-TBS】 2025年3月18日)
https://www.youtube.com/watch?v=HrBY-pSqzV0
《猫と暮らす》特別対談 小川哲×赤川学(社会学者)「身近で小さな他者たちと」 (集英社文芸ステーション | 「小説すばる」2025年3月号転載)
https://www.bungei.shueisha.co.jp/interview/nekotaidan/
語る:「猫社会学」を提唱 東大大学院教授 赤川学さん ブームや課題、広く「学問」 (『毎日新聞』 2025年3月11日)
https://mainichi.jp/articles/20250311/ddm/014/040/038000c
なぜ猫はかわいいのか? 「猫社会学」の東大教授に話を聞いてみた (『となりのカインズさん』 2025年3月3日)
https://magazine.cainz.com/article/215308
毎日がネコ曜日 日曜日版 ゲスト:東京大学 大学院人文社会系研究科 文学部 社会学研究室 教授 赤川学先生 & Cat a log『ひょっこりネコ』 (川上麻衣子ねこと今日neko-to-kyo | YouTube 2924年4月7日)
https://www.youtube.com/watch?v=vt179-nNPQg
プラスインタビュー: 猫社会学とは?人間社会をネコから考えるおもしろさ猫社会学研究代表者・赤川学氏インタビュー (集英社新書プラス 2023年10月3日)
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/%E7%8C%AB%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E8%80%85%E3%83%BB%E8%B5%A4%E5%B7%9D%E5%AD%A6/24576
「にゃんこ先生がいないこの世にいても…」東大教授が語るペットロス猫の魅力知りたくて調査実習まで開始、その結果は? (『withnews』 2022年2月22日)
https://withnews.jp/article/f0220222001qq000000000000000G00110101qq000024352A
飼い主との間にある独特な関係性とは? 猫ブームの理由 (東京大学広報誌『淡青』37号 2018年9月)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00007.html
書評:
横石愛 評「猫から教わる「ただ、いるだけ」の価値。」 (『CORECOLER.JP』 2024年11月17日)
https://corecolor.jp/12748
横尾忠則 評「芸術家の条件を兼ね備える存在」 (『朝日新聞』 2024年8月17日)
https://book.asahi.com/article/15390994
書籍紹介:
動物人間関係学科 新島 典子教授 共著『猫社会学、はじめます―どうして猫は私たちにとって特別な存在となったのか?』(筑摩書房) (ヤマザキ動物大学看大学ホームページ 2026年5月16日)
https://univ.yamazaki.ac.jp/univ/news/?itemid=1617&dispmid=758
東野ひろあき「ノマドの窓~渡る世間はネタばかり~」 「猫」に関する社会学の書がおもしろい 「猫から見た『サザエさん』」「私たちは猫カフェから何を得ているのか?」 (ZAKZAK 2024年9月4日)
https://www.zakzak.co.jp/article/20240904-YD2GK5T4GRMBRFOQRTXEHRHKFI/
生まれたばかりの学問、猫社会学とは? (webちくま(筑摩書房の読みものサイト) 2024年6月28日)
https://www.webchikuma.com/n/na508f7501f6f

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