
書籍名
シャルル・フーリエの新世界
判型など
420ページ、A5判、上製
言語
日本語
発行年月日
2024年7月
ISBN コード
978-4-8010-0817-5
出版社
水声社
出版社URL
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論文集『シャルル・フーリエの新世界』への寄稿者に過ぎない筆者 (塩塚) には、自著として本書を語る資格はありません。そこで、編者の福島知己さんに分担執筆をお願いしました。
〔福島さんによる自著紹介〕
かつて作家のレーモン・クノーは、フーリエを名乗る著名人が二人いるのを知って、驚愕したことがある。ひとりはジョゼフ・フーリエで、県知事や統計局長を務めた行政手腕もさることながら、フーリエ解析と呼ばれる数学の一分野を開拓したことで知られる。もうひとりのシャルル・フーリエは、人間情念についての独特の考え方を基礎に、世界的な社会調和の方法を提案した理論家である。
クノーがもともと知っていたのは前者だった。後者を少しも知らなかったというのは言葉のあやかも知れないが、知名度の差は当時もあったし、今日ではいっそう増した。工学やコンピュータサイエンス分野でフーリエ解析の応用可能性が広く知られるようになり、ジョゼフ・フーリエの名声がいよいよ高まったのに対して、シャルル・フーリエのほうはおよそ忘却の淵にあるようだ。
とはいえ、学術的研究を志す者にとっては、好機かもしれない。初期社会主義とか共同体主義といった、かつてフーリエに冠せられてきた形容を顧慮せず、自由な発想でその作品を読むことが、むしろ容易になるからだ。そもそも学術の任務の一つは、忘れられた思想や誤解されてきた考え方を再検討に付し、そのことを通じて、あまりに頑なになって融通の利かなくなった認識枠組を更新し、賦活させることではないだろうか。
哲学者のポール・リクールは、イデオロギーと比してユートピアの積極的機能を論じた。イデオロギーが現行秩序の正統化をめざすのに対して、ユートピアは秩序破壊的で、現にある状態の再考を促す。どちらも社会維持に不可欠だから、リクールにいわせれば、「ユートピアの死は社会の死である」。
だとすれば、フーリエの研究もまた、学術のユートピアの実践に相違ない。
本書にはさまざまな専門領域をもつ十四人による論考が掲載されている。いずれ劣らぬ力作である。内容も多岐にわたり、フーリエの思想が多彩な読解を許すことを示している。一読を乞う。
私、塩塚の論文「シャルル・フーリエと物書き狂人—レーモン・クノーの視点から」は、フーリエの独特な著述スタイルを、逸脱著述家たちとの比較を通じて考察しています。クノーは、フーリエの宇宙論が単なる奇想ではなく、社会改革のユートピア思想と結びついていた点を重視しつつも、その「思考の運動」や論理の遊戯性に注目していました。つまり、内容の真偽よりも、思考がどのように展開されていくかに価値を見出していたわけです。本論集の編者、福島知己さんの言葉が思い起こされます。「フーリエを笑いものにするとき、われわれが何を犠牲にしているのかを問うべきである」。これはクノーが抱いた問いでもあったように思います。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 塩塚 秀一郎 (一部、福島 知己) / 2025)
本の目次
第I部 フーリエとは誰か
嗜好の洗練による「文明」から「調和」へのパッサージュ――奢侈をめぐるフーリエと経済学的知……篠原洋治
アナロジー論と自然的平衡錘の理論――『産業の新世界』序文の一草稿の検討……福島知己
アソシエーションの二つの(失われた)起源――フーリエとサン゠シモン主義……金山 準
第II部 思想の諸相
フーリエの理想建築構想とその変貌……小澤京子
コンフィチュール/コンポートあるいは「調和世界」のパン――フーリエにおける子どもと食の問題……橋本周子
分人主義的結婚論の先駆者フーリエ――『愛の新世界』とヘーゲル『法の哲学』における遺産相続の問題……藤田尚志
密謀,あるいは産業のとばくち――フーリエからだいぶ離れて……森元庸介
第III部 フーリエはどう読まれたか
政治的なものの感覚的革命としてのファランステールの爆発的拡大について……フロラン・ペリエ
情念の社会学としての神学――クロソウスキーにおけるフーリエ……大森晋輔
シャルル・フーリエと物書き狂人――レーモン・クノーの視点から……塩塚秀一郎
【幕間】
21世紀におけるフーリエ研究の活力……トマ・ブシェ
第IV部 フーリエをどう読むか
詩「未来はオーレンカのもの」をめぐって……阿部日奈子
シャルル・フーリエの情念を天然知能的計算に転回する……郡司ペギオ幸夫
フーリエの未来の肉体としての反古墳――いや、墓とは?……中村恭子
関連情報
伊多波宗周 評 (『フランス哲学・思想研究』30巻p.401-404 2025年10月20日)
https://doi.org/10.51086/sfjp.30.0_401
(『社会思想史研究』No.49 2025年)
本よみうり堂:郷原佳以 (仏文学者・東京大教授) 評 (『読売新聞』 2024年11月1日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/reviews/20241028-OYT8T50063/
星野太 評 (『artscape』 2024年10月18日)
https://artscape.jp/article/23794/
イベント:
【本のあるところajiro】「フーリエを笑いものにするとき、われわれは何を犠牲にしているのか?」『フーリエの新世界』(水声社、二〇二四年)刊行記念 福島知己×小澤京子×逆卷しとねトーク (本のあるところajiro 2024年7月15日)
https://note.com/kankanbou_e/n/n12c637cabd75

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