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飛鳥宮跡の写真2点

書籍名

シリーズ 宮殿研究の最前線1 飛鳥宮の儀礼と空間構成

著者名

田島 公、 海野 聡、 鶴見 泰寿 (編)

判型など

226ページ、A5判、上製、カバー装

言語

日本語

発行年月日

2025年2月20日

ISBN コード

978-4-8406-2608-8

出版社

八木書店

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飛鳥宮の儀礼と空間構成

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七世紀の飛鳥宮は、岡本宮 (舒明天皇)、板蓋宮 (皇極天皇) 後岡元宮 (斉明天皇)、浄御原宮 (天武天皇) と同じ位置に王宮が営まれた重要な場所である。しかし日本古代国家の中枢でありながら、遺構の大半はいまも奈良県明日香村の地下に眠っている。訪れても広がるのは静かな田園風景である。そのため、教科書では名を知っていても、具体的な空間像を思い描ける人は多くない。
 
本書『飛鳥宮の儀礼と空間構成』(八木書店出版部、2025年) は、飛鳥時代の王宮・飛鳥宮を対象に、その空間構成と儀礼の実態を総合的に解明した研究書である。発掘調査で明らかになった遺構、古代史料の精読、そして建築史的な視座にもとづく空間復元の成果を横断的に組み合わせ、ひとつの宮殿空間を立体的に再構築することを試みた。
 
本書の特徴は、建築史・考古学・文献史学を分断せず、相互に往還させる学際的アプローチにある。正殿や前殿・後殿の配置、朝庭の構成、饗宴や外交儀礼の場のあり方を、遺構の寸法や柱配置、出土遺物の状況、そして『日本書紀』などの記事と照合しながら読み解く。図面と史料記述が対応した瞬間、儀礼が実際にどのような身体動作と空間体験を伴っていたのかが浮かび上がる。飛鳥宮の前の前期難波宮とも、後の藤原宮とも異なる独自性の強い空間が造り上げられている。とりわけ、大極殿という公的な儀礼のための建物が飛鳥宮で成立した点に古代宮殿の画期が見えるとともに、東アジアにおける宮殿という側面も見える。宮殿は単なる建物の集合ではなく、国内の政治や外交儀礼が交錯する舞台装置であったという性格が強く表れている。
 
さらに本書は、日本列島内部の問題に閉じない。飛鳥宮の空間秩序を、唐や朝鮮半島の王宮との比較という東アジア的視野のもとで検討し、大陸的制度の受容と在地的伝統の再編がどのように具体的な建築空間として結実したのかを論じた。国家形成期の日本を、東アジア世界のダイナミックな交流のなかに位置づけ直す試みでもある。
 
古代史に関心をもつ学生はもちろん、建築史や歴史考古を学ぶ学生にとっても、図面・遺構・史料を突き合わせながら空間を読み解くプロセスは刺激的なはずだ。宮殿という巨大な空間が、政治制度や思想とどのように結びつくのか。本書は、その問いに真正面から挑んだ一冊であり、未解明の古代宮殿の世界に興味を持ってもらえたら幸いである。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 海野 聡 / 2026)

本の目次

まえがき  海野 聡・田島 公
 
〔問題提起〕「飛鳥宮」時代の特殊性  田島 公
 —「天下」を喪失していた時代—
 
飛鳥の開発と飛鳥浄御原宮の内部構造  西本昌弘
はじめに/一 飛鳥と渡来人/二 桜井(豊浦)と小墾田の屯倉と蘇我氏邸/三 飛鳥浄御原宮の内部構造と皇后宮・御窟殿((1)皇后宮(2)御窟殿)/まとめ
 
飛鳥宮の空間構成とその系譜  鶴見泰寿
はじめに/一 飛鳥宮跡の発掘調査/二 飛鳥宮跡の空間構成((1)朝庭・朝堂(2)大極殿・前殿(3)内裏)/三 宮の系譜—飛鳥宮から平安宮まで—/おわりに
 
飛鳥の王宮と外交儀礼  田島 公
 —小墾田宮とエビノコ郭の機能—
はじめに—邪馬台国(卑弥呼)や「倭の五王」と外交儀礼—/一 推古朝の外交儀礼—小墾田宮の特殊性—((1)櫻井豊浦宮(2)小墾田宮での外交儀礼)/二 舒明朝・皇極朝の王宮を中心とした外交儀礼((1)小墾田宮での外交儀礼(2)飛鳥板蓋宮での外交儀礼(3)難波長柄豊碕宮での外交儀礼(4)斉明朝の飛鳥川原宮・飛鳥岡本宮と外交儀礼)/三 飛鳥寺西の(槻木)広場での「化外人」への「饗」—「饗」は夜に野外で行われた—/四 飛鳥浄御原宮の「エビノコ郭」の機能/むすび
 
飛鳥宮周辺の饗宴施設  小田裕樹
はじめに/一 古代における饗宴施設と空間構造((1)古代宮都中枢部の饗宴施設(2)平城宮東院地区の発掘調査成果とその意義(3)石神遺跡A三期遺構群の建物配置(4)古代における饗宴施設の空間構造)/二 飛鳥地域におけるロの字形配置の建物群と変遷について((1)飛鳥地域におけるロの字形配置の建物群(2)ロの字形配置の建物群の変遷と特質)/三 飛鳥宮周辺の饗宴施設とその特質((1)飛鳥宮周辺の饗宴施設(2)ロの字形空間の成立過程)/まとめ
 
飛鳥宮の空間構成とエビノコ郭正殿の建築的特質  海野 聡
はじめに/一 飛鳥宮の空間構成と儀礼((1)儀礼の成立と空間の設計(2)内郭前殿の出現と三つの主要殿舎(3)エビノコ郭の空間構成と朝堂院(4)朝庭と内郭南門・エビノコ郭西門)/二 飛鳥宮エビノコ郭正殿と内郭前殿・後殿の建築的特徴((1)身舎梁間三間のエビノコ郭正殿(2)妻入のエビノコ郭正殿(3)掘立柱・高床・非瓦葺のエビノコ郭正殿)/おわりに
 
飛鳥浄御原宮の建築遺構と殿舎名  小澤 毅
はじめに/一 III期の建築遺構の概要((1)内郭(2)東南郭(3)外郭)/二 III期の遺構変遷と年代観((1)東南郭の付設とその年代(2)内郭内部の時期差の有無)/三 殿舎名の比定((1)南門と西門(2)大極殿(3)朝庭と朝堂(庁)(4)大安殿(外安殿)・内安殿・向小殿(5)御窟殿(院))
 
前期難波宮と飛鳥宮の比較再検討  積山 洋
はじめに/一 難波長柄豊碕宮の構造と意義((1)内裏の構造(2)難波長柄豊碕宮の画期的意義)/二 前期難波宮と飛鳥宮((1)前期難波宮と飛鳥宮の比較(2)主要殿舎の比較)/おわりに
 
あとがき  海野 聡
 

関連情報

自著解説:
「飛鳥・藤原の宮都」の全貌に迫る「宮殿研究の最前線」 (『ALL REVIEWS』 2026年7月26日)
https://allreviews.jp/review/7838
 
著者インタビュー:
建築学と考古学を掛け合わせて8世紀の建物を次代へ「受け継ぐ」|海野 聡 (『淡青』vol.52 2026年3月)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z0508_00130.html

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