東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

水色の表紙に地面沈没の写真

書籍名

インフラメンテナンス大変革 老朽化の危機を救う建設DX

著者名

石田 哲也、 岩城 一郎、日経コンストラクション (編)

判型など

320ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年4月21日

ISBN コード

9784296207848

出版社

日経BP

出版社URL

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インフラメンテナンス大変革

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橋、トンネル、上下水道など、社会を支えるインフラストラクチャー(インフラあるいは社会基盤施設とも言う)の老朽化が深刻な状況にあります。2025年1月に埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没事故は、その現実を私たちに突き付けました。高度経済成長期に一斉に整備されたインフラは、築後50年以上を迎えるものが急増しており、劣化は静かに、しかし確実に進行しています。普段は存在を意識しないインフラですが、ひとたび事故や障害が起これば、当たり前の日常生活や経済活動が瞬時に揺らぎます。今後さらに国家財政が厳しくなり、また熟練労働者の不足が深刻化する中で、インフラを良好な状態に維持することは、社会を支える根幹的な課題です。
 
本書は、この課題に挑む取り組みを記録したものです。すなわち、内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究プロジェクトにおける活動を中心にまとめています。SIPは、産学官の叡智を結集して社会課題を解決するための国家的な枠組みであり、本書で扱う「スマートインフラマネジメントシステム」の研究開発では、大学などに所属する研究者だけでなく、行政、産業界、スタートアップ企業までが一体となり、まさにオールジャパン体制で社会実装を目指しています。社会実装を進める過程は決して平坦ではなく、ビジョン形成から現場適用、制度や仕組みの整備に至るまで、数多くの試行錯誤が積み重ねられてきました。その軌跡を通じて、「大学での研究がどのように社会とつながっていくのか」を具体的に感じ取っていただけるでしょう。
 
インフラメンテナンスというと、「3K (きつい、汚い、危険)」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし本書で描いているのは、それを「3C (Cool, Creative, Challenging)」な行為へと転換する挑戦です。すなわち、デジタル技術を駆使し、従来にはなかった革新的な手法で、「カッコよく」、「創造的に」、「挑戦的に」、課題に取り組むことを狙っています。そのために、「箱庭」と呼ばれる実証の場を設定し、開発途上の技術を徹底的に検証し、改良を繰り返す。その積み重ねこそが、本格運用へと至るための確かな道筋となります。こうしたアプローチは、インフラメンテナンスを単なるルーチンワークから、挑戦的で創造的な活動へと変えていきます。
 
本書を通じて伝えたいのは、インフラは国の財産であり、その維持管理は未来に向けた投資であるということです。安全・安心な社会を築くだけでなく、インフラのストックを適切に維持することが、経済の持続可能性や生活の質の向上につながります。インフラメンテナンスは決して地味な営みではなく、未来を切り拓く力を持ったダイナミックな挑戦なのです。
 
これから社会基盤分野を学び、研究や実務の世界に飛び込もうとする学生の皆さんにとって、本書が「インフラの世界は面白い、自分も関わってみたい」と思うきっかけとなり、新しい仲間やプロジェクトが生まれていくことを願っています。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 石田 哲也 / 2025)

本の目次

はじめに
 
第1章 プロローグ
1-1 今求められるインフラメンテナンスの大転換
1-2 我々の目指す社会実装
1-3 社会実装のボトルネック
 
第2章 5大ニーズ・床版
2-1 コンセッション契約を生かした床版維持管理の革新
2-2 仙岩道路から考える技術のパッケージ化
 
第3章 5大ニーズ・塩害
3-1 レーザー技術でコンクリート表層の損傷を見る
3-2 妙高大橋旧橋で進んだ安全性の評価
3-3 日本有数の塩害環境にあるK橋での技術見本市
 
第4章 5大ニーズ・舗装
4-1 持続可能な道路へ -未来志向の舗装マネジメント―
 
第5章 5大ニーズ・新材料・新工法
5-1 施工現場が待ち望む本命・本丸の省人化
5-2 新材料の活用がもたらす未来
5-3 革新的要素技術のパッケージ化がもたらす未来
 
第6章 5大ニーズ・小規模自治体
6-1 デジタル技術を活用した橋のセルフメンテナンス
6-2 小規模自治体での事後保全から予防保全への転換
 
第7章 その他の重要ニーズ
7-1 見えないインフラ内部を四次元透視
7-2 インフラヘルス革命
7-3 水道管の劣化を掘らずに予測
 
第8章インフラメンテの社会実装
8-1 自治体の橋梁メンテナンスの新しいスキーム
8-2 インフラメンテナンス技術の社会実装
8-3 インフラメンテにおけるマネジメントの課題
8-4 ちょうどいい道具、ちょうどいいインフラ
 
第9章 若手座談会
9-1 建設インフラメンテナンスの仕事を次世代に
技術カタログ
 
おわりに

関連情報

出版社ページ:
毎日「はじめに」: 「はじめに」と「目次」紹介 (日経BOOK PLUS』 2026年1月23日)
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/040900901/
 
書評:
寿命が迫るインフラを救う「建設DX」、3Dプリンター活用や住民のセルフメンテナンスも (日刊工業新聞社『ニュースイッチ』 2025年8月24日)
https://newswitch.jp/p/46743
 
建設業界を知る~今月の一冊 (『CONCOM』 2025年6月2日)
https://concom.jp/contents/book/vol39.html
 
シンポジウム:
「インフラメンテナンス大変革 老朽化の危機を救う建設DX」シンポジウム (SIP第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」、サブ課題B「先進的なインフラメンテナンスサイクルの構築」 2025年7月1日)
https://www.pwri.go.jp/jpn/research/sip/R7_achieve/pdf/event-20250701.pdf
 
関連動画:
Addressing Challenges in Social Infrastructure
Innovation of Printing Construction (NHK WORLD JAPAN 2025年11月14日)
https://biz.jibtv.com/programs/addressing_challenges_in_social_infrastructure/
 

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