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白い表紙に絵画

書籍名

新・家族法 たそがれ時の民法学

著者名

大村 敦志

判型など

662ページ、A5判、上製カバー付き

言語

日本語

発行年月日

2025年7月

ISBN コード

978-4-641-23317-1

出版社

有斐閣

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新・家族法

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家族法とは、一般には民法の後2編(親族編・相続編)を指します。家族法については、日本国憲法の制定に伴い1947年に全面改正がなされています。全面改正前の家族法は「明治民法」と呼ばれていますが、全面改正後の家族法は「昭和民法」と呼ばれることもありました。1999年に私が刊行した『家族法』(相続編を含まない) は、この「昭和民法」(3度の小改正を受けているが、大きな変化はない) を対象とするものでした。
 
その後、1999年の成年後見法の改正を皮切りに、2011年には親権法、18年には相続法、19年には特別養子法、22年には実親子法・親権法、24年には離婚後養育法に関する改正がなされました。また、2018年の成年年齢引き下げによって婚姻法の一部が、2021年の所有者不明不動産に関する改正によって相続法の一部が改正されました (○○法と呼んでいるのは、民法中の○〇に関する部分を指しています)。平成期に着手された一連の改正によって、家族法の内容はかなり大きく変わりました。この間、債権法の改正のほか、民法総則や物権法の一部の改正もなされたので、今日では、「第3の民法」(「平成民法」) が登場していると捉えることもできます。2025年に出版された『新・家族法』(相続編の一部を含む) は、この「平成民法」の家族法を対象とするものであると言えます。
 
『家族法』と『新・家族法』とでは、内容だけでなく編成の仕方も異なっています。『家族法』が「婚姻家族の法」と「非婚姻家族の法」との対比を軸にしていたのに対して、『新・家族法』は「家族関係の内容」と「家族関係の形成・解消」とに分けた上で、「家族関係の内容」を「未成年者保護の法」から説き起こしています。一言で言えば、「婚姻」から「こども」へと重点を移したわけですが、この変化は、平成の家族法改正の大きな方向性を反映したものであると言えます。
 
『新・家族法』では、本体をなす第2部「家族法の体系」に先立ち、第1部「家族法の生成」を設けています。この部分では、「平成民法」の家族法が登場する過程を説明していますが、そこには、1999年改正から2024年改正まで、平成の家族法改正に継続的に関与して来た立法補助者としての私の経験に基づく考察が組み込まれています。第1部をまず読むことによって、第2部でより詳しく説明される「平成民法」の家族法の生成プロセスを知ることができるはずです。
 
最後に副題について触れておきましょう。『新・家族法』は「たそがれ時の民法学」という総題の下に刊行が予定されている4冊のうちの第1冊です。民法学がいま大きな転機を迎えつつあることも、あわせて感じとっていただけると幸いです。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 名誉教授 大村 敦志 / 2025)

本の目次

序 章
第1節「家族法」の体系──本書の対象
第2節「家族法」の歴史──本書の視点
第3節「家族法」の理論──本書の目標
 
第1編 家族法の生成
 序 言 民法改正システムと本編の検討方法
 第1章 婚 姻
  第1節 婚姻──1996年改正案(1)/第2節 離婚──1996年改正案(2)
 第2章 親 子
  第1節 実子1──2003年改正案/第2節 実子2──2022年改正/第3節 特別養子──2019年改正
 第3章 親 権
  第1節 親権1──2011年改正・2022年改正/第2節 親権2──2024年改正
 第4章 後 見──1999年改正
 第5章 相 続
  第1節 相続人・相続分──1996年改正案(3)・2018年改正(1)/第2節 遺産分割──2018年改正(2)・2021年改正/第3節 遺言──2018年改正(3)/第4節 遺留分ほか──2018年改正(4) 結 章 残された立法課題と改正システムの将来
 
第2編 家族法の体系
 序 言 民法の体系と本編の構成
 第1部 一般法としての「人の法」
  第1節 人の存在(人格)──人の共通性/第2節 人の同定(アイデンティティ)──人の多様性/第3節 人の行為(成年者保護)──人の脆弱性
 第2部 特別法としての「家族の法」
  第1章 家族関係の内容 第1節 親権法・未成年後見法──未成年保護の法/第2節 夫婦関係法・親族法──成年者共助の法
  第2章 家族関係の形成と解消 第1節 婚姻法──総合的な家族関係形成の法/第2節 親子法──垂直的な家族関係形成の法/第3節 共同生活の法──水平的な家族関係形成の法/補節1 家族法の再編──三つの試金石
 第3部 補完法としての相続法──人の生命=生活の法的延長
  第1節 対象としての家名・家産/第2節 手法としての相続・恵与/補節2 家産から公共財へ──「財産」の変容 結 語 「家族」の再定義と「家族法」の方向性
 
第3編 家族法の周辺 序 言 家族法の開放の必要性と本書の射程
 第1章 周辺諸法
  第1節 戸籍法/第2節 家事手続法/第3節 国際家族法/第4節 憲法および家族公法
 第2章 歴 史
  第1節 明治初期の家族法/第2節 旧民法の家族法/第3節 明治民法の家族法/第4節 昭和民法の家族法
 第3章 理 論
  第1節 家族法学の生成(理論の形成)──穂積重遠と中川善之助/第2節 家族法学の更新(価値の転換)──川島武宜/第3節 家族法学の展開(解釈の集成)──我妻栄/第4節 家族法学の転換(進路の模索)──現代の学説 結語1 遠心と求心の間で──概説書を書くということ 結語2 民法学者の領分──たそがれ時に考える 
 
 

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