
書籍名
大地とまちのタイムライン ドキュメントブック 楢葉町×東京大学総合研究博物館連携ミュージアムができるまで
判型など
130ページ、B5変形
言語
日本語
発行年月日
2024年4月22日
ISBN コード
978-4-13-063852-4
出版社
東京大学出版会
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
楢葉町 x 東京大学総合研究博物館連携ミュージアム「大地とまちのタイムライン」は、2011年の東日本大震災被災以来休館していた楢葉町歴史資料館を全面リニューアルし、2023年4月に福島県楢葉町にオープンした施設である。震災復興事業の一環で東京大学と楢葉町との連携が開始し、収蔵庫不足の問題を抱えていた総合研究博物館へ楢葉町内に収蔵施設が提供される一方、移設した学術標本と歴史資料館所蔵資料を活かすミュージアムを設立した。本書は、その構想からデザイン、設計、施工までのプロセスの詳細な記録である。設立に関わった楢葉町、東京大学、展示の受託会社がそれぞれの立場から協働して執筆したもので、公・学・民が連携して製作した書籍である点に特徴がある。
本事業は震災を契機に始まった公学連携により生み出されたリソースを活かし、震災復興に資するミュージアムを実現する、という実験研究的な側面を持つものであった。町からの受託研究として大学で行ったミュージアムの実現に向けた研究成果をもとに、企業も参加しながらミュージアムを建設するという公学民連携の類例の少ないスキムによるものであった。そのため、その過程と成果をあらゆる角度から記録することにより、「ミュージアムをつくる」という事業の始動から完成までの過程そのものが研究となり得るとの考えから本書製作を構想した。
本書は基本的に時系列で完成までのプロセスを綴り、大きく3章で構成している。第I章ではミュージアムの前身である楢葉町歴史資料館の建設に始まり、本事業の背景、ミュージアムのビジョンや設立の目的、コンテンツ・ゾーニング構成など、設計や製作の前段階の作業プロセスについて記した。「危機と再生」というテーマを悠久の時間軸で捉え、まちの未来創造へつなげるという独自のテーマを掲げることで、展示の方向性を確立した。
第II章では、ミュージアムをつくりあげる資料や情報について、担当した研究者と学芸員による論考形式で記述した。復興支援事業の成り立ち、展示構成の特徴、大学所有の展示資料の選定と概要の解説、町の歴史展示の制作過程、本施設リニューアルの意義、ミュージアムが教育や交流に果たす役割などを、各担当者が執筆した。
第III章では、ミュージアムの展示をつくり上げる具体的なプロセスである設計と製作をまとめた。展示は資料を見せ、情報を伝えることを主たる目的に空間を設えるが、それに加え展示を観賞する効果を高めるために展示空間のビジュアル計画などが行われる。展示設計のプロセスや、展示情報をわかりやすく解説するために工夫した点なども記載した。
以上、本書は一つのミュージアムの構想から完成までのプロセスを備に記録した書籍であり、「ミュージアムをつくる」とは何か、そのために必要なことを余すことなく解き明かした。今後ミュージアムを手がける、あるいはミュージアムの展示をつくるうえでの参考として活用されることを期待している。
(紹介文執筆者: 総合研究博物館 客員教授 洪 恒夫、特任教授 松本 文夫、特任助教 白石 愛 / 2025)
本の目次
連携ミュージアムの創設 西秋良宏
第I章 ビジョン&プロセス
事業の背景―歴史資料館の建設から本ミュージアムの整備まで
未来創造のプラットフォーム―「大地とまちのタイムライン」の基本ビジョン
MISSION
大学の受託研究によって始動したミュージアム―施設実現までの経緯
構想趣旨を明確にした展示のシナリオ―ストーリー重視の展示構成を描く
展示をかたちづくる資料―ストーリーを語るのにふさわしいコンテンツの構成
ハイライト標本と資料紹介
図面への展開
世界観の創出―展示鑑賞の効果を引き出すデザイン
PHOTOS
第II章 アーティクルズ
連携ミュージアムへの道のり―支援から協働へ 秋光信佳
オリジナリティーの高い展示ストーリーの具現化に向けて―効果を発現する施設計画の模索 洪 恒夫
「石」からつながる楢葉町へのタイムライン 三河内岳
化石と生命のタイムライン 佐々木猛智
大地とまちのタイムライン―考古資料から地域史をみる 坂本和也
楢葉の「まちのタイムライン」―近世・近代の歴史コーナーの制作過程 白石 愛
建築のリノベーション 松本文夫
ミュージアムを活用した教育(仮) 青木 洋
震災により失われた交流と震災によりできた交流 三浦寛己
開館後の来館者調査―アンケート調査および「わたしたちのメッセージ」より 白石 愛
第III章 デザイン&プロダクション
コミュニケーションVI計画
展示意匠設計
ミュージアムの製作現場
展示資料を魅せる―演示具の製作と展示資料の取り付け作業
ヘッドラインコピー―物語りを効果的に伝える施策
展示映像制作
普及に向けて―展示観覧用補助ツールの製作
プロジェクト・タイムライン
プロジェクトメンバー一覧
関連情報
楢葉町×東京大学総合研究博物館 連携ミュージアム
大地とまちのタイムライン
開館時間:午前9時00分から午後4時30分
休館日:毎週月曜日・国民の祝日・年末年始
入館料:無料
住所: 福島県双葉郡楢葉町大字北田字鐘突堂5番地の4 楢葉町コミュニティセンター1階
https://www.um.u-tokyo.ac.jp/naraha/index.html
受賞:
第42回ディスプレイ産業賞2023 ディスプレイ産業奨励賞 (日本ディスプレイ業団体連合会賞) 受賞 (一般社団法人日本ディスプレイ業団体連合会 2023年)
https://www.display.or.jp/awards/archives/3220
日本空間デザイン賞2023 Longlist (博物館・文化空間) 入選 (一般社団法人日本商環境デザイン協会、一般社団法人日本空間デザイン協会 2023年)
https://kukan.design/award/2023_c08_0198/
第57回サインデザイン賞 入選 (公益社団法人日本サインデザイン協会 2023年)
https://www.sign.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/57th_SDA_JudgingResults_N3.pdf
関連記事:
福島県楢葉町の町歴史資料館が東大と連携 ミュージアム「大地とまちのタイムライン」に様変わり (『福島民報』 2023年4月22日)
https://www.minpo.jp/news/moredetail/20230422106587
関連イベント:
大阪・関西万博「福島復興展示」 (大阪・関西万博EXPOメッセ 2025年5月20日 – 5月24日)
https://www.meti.go.jp/earthquake/fukushima-expo2025/
https://www.town.naraha.lg.jp/kanko/highlights/008529.html