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真っ白の表紙

書籍名

マクロ経済動学 景気循環の起源の解明

著者名

楡井 誠

判型など

250ページ、A5判、並製カバー

言語

日本語

発行年月日

2023年11月21日

ISBN コード

9784641166219

出版社

有斐閣

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マクロ経済動学

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本書は、マクロ経済の短期的変動が内生的に発生する条件を考察した研究書です。第1部では、現代のマクロ経済学における標準的な枠組みである動学一般均衡理論を解説します。第2部では、その標準的な枠組みの中で、市場の働き自体が不必要な経済変動を引き起こしてしまう局面を提示しています。第1部が国際的に共有されている理論の紹介なのに対して、第2部はそれを土台にして取り組んできた著者の博士論文以来の研究を統一的に論じたものになっています。
 
第1部で見るように、経済変動に対するマクロ経済学の基本的な見方は、外的なマクロショックに対する市場の応答というものです。例えば、一国レベルの財供給システムの生産性が短期的に変化することによって生じる好況・不況の波は「実物的」「新古典派的」景気循環といえます。あるいは、貨幣や信用供給の変化に起因する変動は「マネタリスト的」景気循環といえます。これらの見方は大変有効です。現実に、世界経済にとっての2020年不況や日本経済にとっての2008年不況は、コロナパンデミックやリーマンショックといった外的なマクロレベルのショックが市場に及ぼした影響と捉えることができます。
 
しかし、景気変動には起点がはっきりしないことが多いのも事実です。工業化時代の設備投資の循環は、生産技術や貨幣供給のショックに帰せられないものも多く、これを説明するのにケインズは産業家たちの「アニマル・スピリッツ」(血気) なるものを召喚せずにはいられませんでした。物価水準も、膨大な種類の財・サービス価格の平均値であるにもかかわらず、十分に均されることなく短期的揺らぎを月々に示します。そして、資産価格の突発的な動きには、原因となる新しい情報が明らかでないケースが多々あります。
 
このように、明確な外的原因のないマクロ経済変動を理解しようとするのが本書の試みです。着目するのは、ミクロレベルの行動の相互補完性と離散性です。例えば、ある企業が自社の製品を値下げしたとします。この製品の値下げは、他の製品にとっては相対価格が上昇したことを意味します。需要を奪われた企業の中には、追随して値下げを選ぶものも出てくるでしょう。このような離散的行動の補完性は経済にありふれています。では、どのような条件下で補完性と離散性はマクロレベルの揺らぎを生むのでしょうか。
 
その数理は統計力学において整えられてきました。渋滞の数理を考えてみましょう。路上の密度が低いときは、車はスイスイと水のように流れます。逆に密度が非常に高いときは、流れは完全に止まってしまいます。車の密度が流体相と固体相のちょうど境目にあるときには、大小あらゆる規模の渋滞が起こりえます。このような境目では、1台のちょっとした挙動が、後続の車列に大規模な波及効果を持ちうることが知られています。これは臨界現象と呼ばれます。こうした統計力学の手法をマクロ経済理論に持ち込んだことが本書の一つの特徴です。
 
市場経済において、財貨の流れが渋滞を起こすような臨界点はあるのか、それが本書の問いです。臨界条件は動学一般均衡モデルのもとで数理的に特定することができます。その条件にはどのような経済的意味があるのか、それが本書の経済学的問いです。本書ではそのような臨界現象が起こる領域として、短中期における総固定資本形成、短期における物価、そして超短期における資産価格形成を提示しました。それらの臨界現象の背景をなす経済的条件として、規模に関する収穫一定生産技術、高インフレ下における貨幣中立性、そして高ノイズ下における投機家の情報読み合いゲームを挙げました。
 
経済変動が外生ショックではなく市場の働きによって内的に発生しているとして、それはなぜ考察に値するのでしょうか。この重要な問いかけには2つの点で答えることができます。1つは、外生変動と内生変動では効果の波及経路が異なるため、内生変動の可能性を踏まえることによって景気循環モデルを改善し、景気安定化政策に資することができます。もう1つは、市場自体が引き起こす不要な変動に注目することによって、市場の描像を問い直すことです。市場で形成される価格を観察することによって外界で起きている変化を読み取ることは、経済学が持つ大きな力です。しかし、マクロ経済の安定は市場が自ずと達成するものではなく、適切な制度の随伴を必要とする面があります。効率的な中にも不安定性をはらむ市場経済の姿は、自由市場か規制かという二元論ではなく、不断の調整を必要とすることを含意すると考えています。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 楡井 誠 / 2026)

本の目次

序 章 景気変動の起源

 第1部 マクロ経済モデル
第1章 景気循環理論
第2章 ニューケインジアン・モデル
第3章 マクロ経済の異質的個人モデル

 第2部 ミクロからマクロ振動へ
第4章 ミクロ起源の総投資振動
第5章 物価振動
第6章 資産価格とマクロ経済:準備
第7章 資産価格振動と市場による学習
終 章 自律変動する3つのマクロ経済変数
 

関連情報

受賞:
第67回日経・経済図書文化賞 特賞 (日本経済新聞社・日本経済研究センター 2024年11月3日)
https://www.jcer.or.jp/wp-content/uploads/2025/06/Bunka_All_67.pdf
https://www.mof.go.jp/pri/summary/hyosho3.htm
大竹文雄 (大阪大学特任教授) 評「直面する日本の課題 検証」
https://www.mof.go.jp/pri/summary/souhyou20241108.pdf
福田慎一 (東京大学教授) 評「景気循環 独自理論で解明」
https://www.mof.go.jp/pri//summary/syohyou20241108.pdf
 
自著解説:
自著を語る (『書斎の窓』No.692 2024年3月)
https://www.yuhikaku.co.jp/shosai_mado/2403/index.html?detailFlg=0&pNo=66
 
著者インタビュー:
インタビュー:楡井誠(東京大学)日本経済学会アウトリーチ企画 (日本経済学会アウトリーチWG | YouTube 2025年1月7日)
https://www.youtube.com/watch?v=VFJIOMbYDpI
 
PRI Open Campus~財務総研の研究・交流活動紹介~30
楡井 誠 特別研究官インタビュー (財務総合政策研究所『ファイナンス』 2024年4月号)
https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f10_30_1.pdf
 
書評:
経済学の書棚: 前田裕之 (学習院大学客員研究員,文筆家) 評「最先端のマクロ経済学研究から「景気変動」の原因に迫る1冊」 (『日経BOOK PLUS』 2024年4月11日)
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/122100175/032900032/
 
土居丈朗 (慶応義塾大学経済学部教授) 評「“なぜ景気は循環する?”という古い問いへの新しい答えを分かりやすく解説」 (『週刊エコノミスト』 2024年3月19・26日合併号)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20240326/se1/00m/020/011000c
 
 

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