
書籍名
気象データ分析の高度化とビジネス利用
判型など
252ページ、B5判
言語
日本語
発行年月日
2022年6月
ISBN コード
978-4-86043-794-7
出版社
エヌ・ティー・エス
出版社URL
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気象データは、私たちの日常生活を支える基盤的な情報であると同時に、社会のさまざまな分野において極めて重要な役割を果たしています。日々の天気予報として身近に利用されるだけでなく、社会全体の安全性や効率性を高めるための判断材料として、幅広く活用されています。
例えば、防災分野においては、気象データを活用することで、豪雨や台風、猛暑、大雪といった異常気象や自然災害の可能性を事前に予測し、避難計画や警戒体制の構築が可能となります。また、農業や漁業の分野では、気温や降水量、日照時間、海水温などの気象データが、作物の生育状況や漁場環境の把握に活用され、作況や漁獲量の予測精度向上に寄与します。さらに、物流や交通分野においても、気象条件を考慮した運送計画や航空・鉄道ダイヤの調整を通じて、効率的かつ安全な運行の実現を支えています。
近年では、こうした従来の活用分野に加え、気象データはビジネス分野においても一層の注目を集めています。特に、情報通信技術 (ICT) やデータ分析技術の急速な進展により、気象データの収集・蓄積・分析・解析がこれまで以上に高度化・高速化され、日常的なビジネス活動の中で実用的に活用される環境が整いつつあります。その結果、需要予測やマーケティング戦略の立案、サービスや商品の開発・改善において、より正確で信頼性の高い判断が可能となり、企業の競争力向上や新たな価値創出につながっています。
本書では、このような背景を踏まえ、気象データを取り巻く最新のビジネス展開や技術動向に焦点を当てながら、気象データが持つ有用性や、今後期待される潜在的な可能性について多角的に掘り下げています。執筆陣には、気象ビジネス推進コンソーシアム (WXBC) の会員を中心とした、実際に気象データの活用に携わる実務家が名を連ねており、それぞれの現場で培われた経験や知見が具体的な事例とともに紹介されています。読者は本書を通じて、気象データ活用が社会やビジネスに及ぼす多様な側面を体系的に理解するとともに、今後の気象ビジネスの展望や新たな可能性について深い洞察を得ることができるでしょう。
(紹介文執筆者: 情報学環 教授 越塚 登 / 2026)
本の目次
第1編 深刻化する気象災害とその予測・評価
第1章 変化する気象災害/極端現象《加藤輝之》
1.はじめに
2.大雨災害・事例数の推移
3.大雨と下層水蒸気との関係
4.集中豪雨と線状降水帯
5.台風と竜巻
第2章 領域気象・洪水統合モデルを用いた降雨・洪水計算《呉 修一》
1.はじめに
2.洪水リスク評価・予測の概要
3.入力値としての気象データ
4.領域気象・洪水統合モデル
5.今後の流域治水に向けた気象データの重要性
第2編 気象データ分析の高度化
第1章 データの基礎と可視化・分析
第1節 気象データの全体像,入手方法 (気象庁情報基盤部情報利用推進課)
1.気象データとは
2.気象観測データについて
3.気象予測データについて
4.海洋に関するデータ
5.地震・津波に関するデータ
6.火山に関するデータ
7.気象データの入手方法
第2節 気象データと業務データをかけ合わせたデータ分析の実践《吉野 純》
1.はじめに
2.気象データ分析の流れ
3.さまざまなデータ分析
4.気象×電力の分析の例
5.まとめ
第2章 新たな気象予測手法の開発
第1節 都市気象予測の現状と課題-都市気象予測の発展を目指して-《清野直子,澤田 謙,川端康弘,瀬古 弘》
1.はじめに
2.都市の暑熱化:都市ヒートアイランドの形成
3.都市の降水
4.都市気象の予測
5.おわりに
第2節 気象のデジタルツイン:微気象シミュレーション《中田亮太》
1.デジタルツインとは
2.都市のデジタルツインと気象のデジタルツイン:微気象
3.微気象シミュレーションとユースケース
4.微気象シミュレーションの課題
5.今後の取り組み
第3節 高解像度気候計算における広帯域放射伝達モデルの発展《関口美保》
1.はじめに
2.放射伝達モデルの諸過程
3.今後の展望
第3章 気象データデバイスの開発と活用
第1節 地上気象ビックデータ取得システムの開発《仲吉信人》
1.はじめに
2.ハードセンサ:気象5 因子の測定デバイス
3.ソフトセンサ:各種温熱感指標・温熱生理因子の算出
4.おわりに
第2節 気象センサーと気象センサークラウドの連携《王 玉冬》
1.はじめに
2.気象センサーの概要
3.気象センサーとクラウド連携のシステムソフトウェア構成
4.気象センサークラウドの連携
第3編 気象データのビジネス利用
第1章 農業支援
第1節 気象データを活用したIoP(Internet of Plants)の取り組み《仙石健介》
1.高知県の施設園芸農業
2.IoP クラウドの構築と気象データの取り込み
3.今後の展望
第2節 衛星データと気象データを活用した農業支援《古賀新一郎,渡部靖之》
1.気象データと農業,特に稲作との関係
2.農家方々の気象データの使い方現状
3.衛星データと気象データを交えた農業支援の取り組み事例
4.今後の展望
第2章 食品・飲料
第1節 気象データを活用した商品需要予測《小越久美,松本健人,須長智洋》
1.まえがき
2.流通における課題
3.省エネ物流プロジェクト
4.事業化後の取り組み
5.気象予測の導入効果は1,800 億円
第2節 清涼飲料販売数と平均気温に基づいた需要予測の可能性《大江恵里》
1.清涼飲料業界の気象情報活用の現状
2.本プロジェクトの目的
3.検証内容(概要,データ前提,効果測定方法)
4.清涼飲料販売数と気象の相関
5.気象予想データを使った実証実験
-自動販売機のホット・コールド切り替え時期の判断に気象予報を活用した実験
6.おわりに
第3章 エネルギー・住宅・防災
第1節 電力需要予測・太陽光発電出力予測・電力取引価格予測《榎本佳靖》
1.はじめに
2.電力需要予測
3.太陽光発電出力予測
4.電力取引価格予測
第2節 気象予測とAI・IoT による快適・健康・低炭素型住宅《片山秀史,大庭みゆき》
1.実大住宅におけるエアコン使用実態
2.気温とエアコンのエネルギー消費量
3.気象予測とAI・IoT による快適・健康・低炭素型住宅
第3節 災害リスク情報サービス「DR Info(ディーアール・インフォ)」《橘 克憲》
1.はじめに
2.気象災害の脅威
3.パスコにおける自然災害への取組み
4.気象データを活用した「DR-Info」のサービス概要
5.DR-Info が提供する主な価値
6.台風や豪雨などの気象データを活用して災害リスクを通知
7.気象データを活用したクラウドサービスの拡大
第4章 物流・販売
第1節 天気に合わせたファッションレコメンドサービス《泉 浩人》
1.気象データを活用したファッションレコメンドサービス『TNQL』
2.気象データのビジネス活用における検討課題
3.TNQL API について
4.近未来予測としての気象データの可能性
第2節 気象データを用いた物流予測「AI-Buffalo-」《中川達生》
1.はじめに
2.需要予測のシステム開発やサービスにおける過去の課題とその解決
3.物流の業界の動向について触れる
4.物流業界における需要予測の必要性
5.物流予測AI-Buffalo- について
6.気象データの関連について
7.物流予測AI-Buffalo- で意識していること
8.今後の展望
第5章 保険・ヘルスケア
第1節 気象災害や異常気象等の影響をリスクヘッジする「天候デリバティブ」《伊藤 寛》
1.はじめに-天候リスクと天候デリバティブの誕生
2.天候デリバティブとはどのようなものか
3.天候リスクを取り巻く状況
4.天候デリバティブと保険
5.天候デリバティブにおける気象データの利用
6.天候デリバティブによるリスクヘッジ活用例
7.天候デリバティブの今後
第2節 医療ビッグデータと気象データの組み合わせによる片頭痛の発症予測《遠藤史博》
1.はじめに
2.レセプトとは
3.片頭痛の特徴
4.片頭痛発症予測モデルの構築
5.片頭痛発症患者数予測モデルの活用方法
6.おわりに
第6章 エンターテインメント×気象情報によるデータビジネスの可能性《冨永伸介》
1.公営競技の市場規模と動向
2.競艇における気象条件とレースの関係
3.競輪における雨と風のレースへの影響
4.競馬における天候とトラックバイアスの関係
5.気象情報のデータビジネス化
6.気象情報を生かしたゲーム(VR)開発
7.パイロット時代のエピソード
8.まさかの墜落―その時の状況
9.検証を通して見えた気象の重要性
10.バーチャルと現実が近くなる前に―求められる緻密な気象情報
第4編 産官学連携による気象ビジネスの展開
第1章 気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)の概要《気象庁情報基盤部情報利用推進課》
1.はじめに
2.WXBC の設立
3.WXBC の会員
4.WXBC の組織概要
5.気象データ利活用の現状とWXBC の活動
第2章 WXBC 新規気象ビジネス創出WG の活動《村上文洋》
1.データ活用で変わる社会
2.新規気象ビジネス創出WG の活動
第3章 WXBC 人材育成WG の活動-気象ビジネスを先導する人材の育成を目指して《田原春美》
1.はじめに
2.人材育成WG の活動方針と育成スキルについて
3.活動の概要
4.活動のさらなる進化と深化で次のステージへ-パンデミック下の活動展開-
5.おわりに
関連情報
【マイブック】『気象データ分析の高度化とビジネス利用』(越塚登 教授) (東京大学大学院 情報学環・学際情報学府ホームページ 2022年9月27日)
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/research/220927mybook

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