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落合団地商店街の写真

書籍名

人間のいる場所 3 ニュータウンに住み続ける

著者名

三浦 展 (編)

判型など

352ページ、四六判、並製

言語

日本語

発行年月日

2022年11月10日

ISBN コード

978-4-88059-437-8

出版社

而立書房

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

ニュータウンに住み続ける

本書は、東京都住宅供給公社の賃貸住宅の落合団地の中にある、店舗併用住宅によって構成される落合団地商店街でおこなわれた、三浦展さんの主催によって2019年から2020年まで行われた連続講演会をまとめたものである。会場は、この店舗併用住宅の1戸を借りている横溝惇さんが、奥さんと営まれている、スタジオメガネという建築設計事務所兼スナックであった。1975年頃に供給されてからすでに半世紀経というとしていた落合団地では、日本の他の長期経過した集合住宅団地の例に漏れず、団地全体が高齢化し、活気が低下し、当初に計画された商店街が衰退の一途をたどっていた。この本の「はじめに」で書かれているように、横溝さんは設計事務所とスナックという、近所の人々が立ち寄ることのできる居場所を運営するかたわら、この団地が立地する多摩ニュータウン全体において、大小のまちの活性プロジェクトに携わっている建築家だ。現在、日本中のニュータウンでは、まちの衰退をなんとかしようと、このようなまちづくりプロジェクトが盛んになりつつある。
 
では、どうして日本のニュータウンがこのような衰退に直面するようになったのか、他の国々のニュータウンではどうなのか、そして、ニュータウンばかりでなく日本全体が衰退しているのなら、そのような状態になっても生き延びていく方策はどのように探せるのか、こうした諸問題に光を当てるために、9名の専門家がリレートークをしたものを編集して出来上がったのが、本書である。
 
前半の5章は、私が担当した第1章の日本の団地やニュータウンの成り立ちと今後の住宅政策の方向性を議論することから始まり、ニュータウンを見ていくための新たな切り口が示されている。次の3章においては、ロンドン、パリ、ウィーンにおけるニュータウンの歴史と現状が紹介され、それぞれの国の事情をニュータウンが色濃く反映しながらも、諦めることなく次世代につなぐ活動が展開されている様子が描かれている。さらに、最後の2章においては、団地やニュータウンを更新していく方向性について、日本と世界の動向が示されている。
 
このようにして、本書は全体を通して「ニュータウンに住み続ける」ことを支援するための様々な情報に満ちたものとなっている。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 大月 敏雄 / 2025)

本の目次

はじめに(横溝 惇)
1章 「住宅」政策から「居住」政策へ(大月敏雄
2章 考現学から考える都市の貧困(黒石いずみ)
3章 郊外に居場所をつくる方法(渡 和由)
4章 ニュータウンと官能性(島原万丈)
5章 地域の「質感」としての建築(冨永美保・伊藤孝仁)
6章 ロンドン圏のニュータウンの現在(木下庸子)
7章 パリ郊外の移民(森千香子)
8章 ウィーン:カール・マルクス・ホーフのバルコニー(林 恭正)
9章 団地・マンションの再生を考える(田村誠邦)
10章 世界の郊外をとりまく二つのトレンド(服部圭郎)
ニュータウン世代・座談会(司会・三浦展)
編者あとがき ~ガラパゴス化する郊外(三浦 展)
 

関連情報

関連動画:
【動画】三浦展×藤村龍至「ニュータウンに住み続ける」刊行記念トーク!椿峰キッチンプロジェクト (ハロー!RENOVATION 2023年3月16日)
https://hello-renovation.jp/topics/detail/18696

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