令和8年度文化勲章受章

令和8年度文化勲章受章

黒岩 常祥 名誉教授、塩川 徹也 名誉教授が、令和8年度文化勲章を受章いたしました。

黒岩 常祥 大学院理学系研究科・理学部 名誉教授

黒岩 常祥 名誉教授

黒岩常祥名誉教授が、ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官の分裂増殖と遺伝の基本原理を解明した功績により、文化勲章を受章されました。

黒岩先生は、細胞のエネルギーを生み出すミトコンドリアと、光合成により酸素や有機物を作る植物の葉緑体が、細胞内で独自の核構造(核様体)をもち、多重リングからなる分裂装置を使って増殖することを発見しました。また、ペルオキシソームにも分裂装置を見いだしました。これらの基本現象とその分子基盤の解明のために、単細胞紅藻シゾンをモデル生物として開発し、真核生物で初めて100%のゲノム解読を達成しました。さらに、ミトコンドリアと葉緑体の基本的な遺伝様式である母性遺伝が、父方DNAの選択的分解により生じることも発見しました。これら一連の画期的な発見をもたらした、黒岩先生の独自の顕微鏡技術と多様な生物材料を駆使した研究は、生物科学に新たな道を数多く切り拓きました。

黒岩先生は1971年に本学大学院理学系研究科植物学専攻で博士の学位を取得され、1987年に本学理学部教授に着任、2003年まで研究教育と本学の運営に尽力されました。独創性を何よりも重んじ、現在も研究に打ち込む姿が、門下生を含めた多くの後進に大きな励みを与え続けています。また、名誉会員を務める日本植物学会や日本植物生理学会など、学術コミュニティーの発展にも大きく貢献されています。

その卓越した研究成果は、説得力に溢れる顕微鏡写真とともに多くの国際誌の表紙を飾り、国内外で高く評価されています。2008年に米国植物科学会C.R.バーンズ賞と紫綬褒章、2010年にみどりの学術賞と日本学士院賞を受賞・受章されました。2011年には文化功労者として顕彰され、2015年には瑞宝重光章を受章されています。2010年からは日本学士院会員としても学術の発展に貢献されています。

黒岩先生のご受章を心よりお慶び申し上げますとともに、ますますのご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(大学院理学系研究科・理学部 東山 哲也)

塩川 徹也 大学院人文社会系研究科・文学部 名誉教授

塩川 徹也 名誉教授

このほど、塩川徹也名誉教授が令和8年度文化勲章を受章されることになりました。1975年にパリ第四大学(ソルボンヌ)に提出された博士論文Pascal et les miracles(Paris, Nizet, 1977—邦訳『パスカル奇蹟と表徴』岩波書店、1985年)以来、半世紀にわたってたゆみなく積み重ねてこられた、パスカルと17世紀フランスの文学・思想・宗教に関する研究が顕彰されたものであり、心よりお慶び申し上げます。

先生は、上記の博士論文によって一躍日仏両国のパスカル研究の第一線に立たれたあとも、旺盛な研究の成果を日仏両国語で発表してこられました。『虹と秘蹟―パスカル〈見えないもの〉の認識』(1993年)、『パスカル考』(2003年、いずれも岩波書店)、Entre foi et raison : l’autorité. Études pascaliennes〔信仰と理性のあいだ―権威:パスカル研究〕(Paris, Champion, 2012)、独自編集に基づく『パンセ』新訳(岩波文庫全3冊、2015~2016年)は、その一端にすぎません。これらの業績により、2009年には日本学士院会員に選出され、2014年にはフランス学士院よりピエール=ジョルジュ・カステックス賞を授与されるなど、数々の栄誉にも浴してこられました。

しかし、われわれ後進にとって先生の最大の功績は、狭義のパスカル研究の枠にとどまらず、日本に身を置きながら、言語や文化の隔たりを越えて国際的に通用する高水準の研究が可能であることを、ご自身のお仕事で示してこられた点にあります。ことは日本におけるフランス文学研究、西洋文化研究のみにかかわるものではありません。テクストの一語一語を揺るがせにせず、その出所と来歴を厳密に問い質すことで、読むという行為がいかに豊かな認識をもたらしうるか―そのことを先生から学んだ者は少なくありません。深い感謝の念とともに、先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(大学院人文社会系研究科・文学部 王寺 賢太)

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