難病「アミロイドーシス」に“光”を。 アミロイドの無毒化による治療効果を初めて実証 研究成果

東京大学 大学院薬学系研究科 有機合成化学教室 金井 求 教授と山根 三奈 特任助教、梅田大輝 大学院生、豊邉萌 大学院生らの研究グループは、同・機能病態学教室 富田 泰輔 教授、堀 由起子 准教授、熊本大学 発生医学研究所 山中 邦俊 准教授、筑波大学 医学医療系/トランスボーダー医学研究センター 広川 貴次 教授、京都大学 化学研究所 梶 弘典 教授、和歌山県立医科大学 相馬 洋平 教授、杉村会 杉村病院アミロイドーシス診療研究サポートセンター 安東 由喜雄 総長、熊本大学 大学院生命科学研究部 植田 光晴 教授、富山大学 学術研究部 薬学・和漢系(薬学)構造生物学研究室 水口 峰之 教授の研究グループと共同で、難病「トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)」に対し、新たな治療戦略を打ち出しました。
タンパク質の誤った折りたたみ(ミスフォールディング)とそれによる凝集は、加齢にともなって起こるタンパク質異常の代表的な現象です。特に、それらが不溶性の線維状構造となったものはアミロイドと呼ばれ、高い毒性を有することで知られています。アミロイドは体内で分解されにくく、組織や臓器に沈着することで様々な病気を引き起こす原因となります。中でも、ATTRアミロイドーシスは80歳以上の高齢者の約4人に1人に影響を及ぼすとも言われている難治性疾患ですが、本症に対する現在の治療法の多くは「病気の進行を止める」ことが中心で、一度蓄積したアミロイドの毒性を“消す”方法はありませんでした。そのため、一度発症すると根本的な治療が難しく、有効な治療薬がないまま命を落とす患者も少なくありません。
未だ救えない命を救うために、今回、研究チームはこの難題に対し“光”と“触媒”を使った独自のアプローチにより、アミロイドそのものを無毒化するという革新的な戦略で挑みました。小さな分子でありながら、アミロイド特有の構造に対して選択的に結合し、光によって活性化され、空気中の酸素からアミロイドに対して親水性の酸素原子を化学反応により導入(光酸素化)することができる触媒を開発し、アミロイドの無毒化を達成しました。またこの触媒は、世界唯一の本疾患モデル動物である線虫の体内でも機能し、初めて治療効果を得ることに成功しました。本研究は「触媒医療(Catalysis Medicine)」という新しい疾患治療概念――すなわち化学触媒を通じて生体内の化学反応ネットワークに能動的に介入した具体的な実証例でもあります。将来的にはアルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとした、他のアミロイド関連疾患への応用も期待されます。
タンパク質の誤った折りたたみ(ミスフォールディング)とそれによる凝集は、加齢にともなって起こるタンパク質異常の代表的な現象です。特に、それらが不溶性の線維状構造となったものはアミロイドと呼ばれ、高い毒性を有することで知られています。アミロイドは体内で分解されにくく、組織や臓器に沈着することで様々な病気を引き起こす原因となります。中でも、ATTRアミロイドーシスは80歳以上の高齢者の約4人に1人に影響を及ぼすとも言われている難治性疾患ですが、本症に対する現在の治療法の多くは「病気の進行を止める」ことが中心で、一度蓄積したアミロイドの毒性を“消す”方法はありませんでした。そのため、一度発症すると根本的な治療が難しく、有効な治療薬がないまま命を落とす患者も少なくありません。
未だ救えない命を救うために、今回、研究チームはこの難題に対し“光”と“触媒”を使った独自のアプローチにより、アミロイドそのものを無毒化するという革新的な戦略で挑みました。小さな分子でありながら、アミロイド特有の構造に対して選択的に結合し、光によって活性化され、空気中の酸素からアミロイドに対して親水性の酸素原子を化学反応により導入(光酸素化)することができる触媒を開発し、アミロイドの無毒化を達成しました。またこの触媒は、世界唯一の本疾患モデル動物である線虫の体内でも機能し、初めて治療効果を得ることに成功しました。本研究は「触媒医療(Catalysis Medicine)」という新しい疾患治療概念――すなわち化学触媒を通じて生体内の化学反応ネットワークに能動的に介入した具体的な実証例でもあります。将来的にはアルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとした、他のアミロイド関連疾患への応用も期待されます。
論文情報
Mina Yamane, Hiroki Umeda, Moe Toyobe, Atsushi Iwai, Kuraudo Ishihara, Genki Kudo, Harunobu Mitsunuma, Yukiko Hori, Taisuke Tomita, Mineyuki Mizuguchi, Masamitsu Okada, Mitsuharu Ueda, Yukio Ando, Shigehiro A. Kawashima, Youhei Sohma, Hironori Kaji, Takatsugu Hirokawa, Kunitoshi Yamanaka,* Motomu Kanai*, "Catalytic Photooxygenation Demonstrates Therapeutic Efficacy in Transthyretin Amyloidosis," Journal of the American Chemical Society: 2025年7月29日, doi:10.1021/jacs.5c06205.
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