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日本列島のナウマンゾウ、絶滅年代は従来説より1万年古かった 化石と遺跡の年代比較による絶滅要因への新知見 研究成果

掲載日:2026年5月26日

東海大学(所在地:静岡県静岡市清水区折戸3-20-1、学長:木村 英樹)人文学部の日下宗一郎准教授および木村淳教授、ふじのくに地球環境史ミュージアム(所在地:静岡県静岡市駿河区大谷5762、館長:佐藤洋一郎)の西岡佑一郎准教授、東京都立大学(所在地:東京都八王子市南大沢1-1、学長:大橋 隆哉)人文社会学部の岩瀬彬助教らは、東京大学(所在地:東京都文京区本郷7-3-1、総長:藤井 輝夫)大学院人文社会系研究科の森先一貴准教授の研究プロジェクトの成果として、日本列島に生息したナウマンゾウの絶滅要因が主として気候変動にあり、人類の狩猟圧などの影響が限定的であることを明らかにしました。本研究成果は5月26日(火)18:00〔日本時間〕(イギリス夏時間10:00)に科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

【発表のポイント】
・日本列島のナウマンゾウの絶滅年代は従来の約2万4000年前より約1万年早い、約3万3000年前~3万5000年前であったことが明らかに
・日本列島における人類とナウマンゾウの共存期間は、従来よりも短い約4000~6000年間であり、人類の活動域と年代的・空間的に重なっていなかったと推定される
・ナウマンゾウの絶滅要因として、人類による狩猟よりも主に気候変動の影響が大きかった可能性が高い

【概要】
従来、日本列島に生息していたナウマンゾウは約2万4000年前に絶滅したと考えられてきました。しかし、先行研究で用いられたゼラチン化法では、微量の新しい炭素による汚染を除去しきれず、放射性炭素年代が実際より若く見積もられていた可能性がありました。そこで本研究では、より信頼性の高い長鎖コラーゲンのみを抽出する限外ろ過法を用い、化石の放射性炭素年代測定を行いました。
分析の結果、ナウマンゾウの絶滅年代は約3万3000~3万5000年前と推定され、従来説より約1万年古いことが明らかになりました。これにより、約3万8000年前に到達した現生人類との共存期間は、従来の想定より大幅に短い約4000~6000年間であったと修正されました。
また、人類遺跡の年代と分布から推定される人口動態との比較により、人類の活動域とナウマンゾウの生息域が年代的・空間的に一致していない可能性も示されました。以上の成果は、ナウマンゾウの絶滅要因として、気候変動(亜氷期〔⼩寒冷期〕・亜間氷期〔⼩温暖期〕の繰り返し)の影響が主であった可能性を示唆するものです。一方で、人類の狩猟圧の影響は限定的であったことを示しています。

【背景】
後期更新世(1万1700年前~12万9000年前)における大型哺乳類の絶滅は、気候変動と人類による狩猟活動のどちらが主因であったのか、世界的に議論されています。日本列島のナウマンゾウについては、従来の年代測定(ゼラチン化法)では約2万4000年前に絶滅したと推定されてきました。しかし、この手法は微量の新しい炭素による汚染を除去しきれず、後期更新世の化石年代を実際より若く見積もる可能性が指摘されてきました。一方で、日本列島への現生人類の到達時期は約3万8000年前と考えられており、絶滅要因を考察するには、両者の正確な共存期間の把握が不可欠です。
本研究では、愛媛県今治市周辺の瀬戸内海から産出した海揚がりナウマンゾウ化石について、新たな年代測定を行いました。化石骨から長鎖コラーゲンのみを抽出して不純物を効果的に取り除く限外ろ過法を用いた放射性炭素年代測定を行い、年代値を検討しました。その過程で、採用するコラーゲン抽出方法が年代値に大きく影響を与えることが明らかになりました。一方、これまでに報告された日本列島内の化石の分析方法を確認したところ、従来のゼラチン化法が多く採用されていました。そこで、列島各地で報告された化石の年代についても、限外ろ過法を用いて再測定を行いました。さらに、旧石器時代の人口動態との比較を通じて、現生人類とナウマンゾウの共存期間および絶滅のプロセスを考察しました。

【研究の方法】
ナウマンゾウの正確な絶滅年代を明らかにするため、放射性炭素年代測定の前処理に「限外ろ過法」を採用し、従来のゼラチン化法による年代値と比較しました。分析対象として、愛媛県今治市の村上海賊ミュージアムに所蔵されている、瀬戸内海から新たに引き揚げられたナウマンゾウ化石標本と、本州・四国から産出した年代報告済みの標本を分析しました。
あわせて、国内約100カ所の旧石器時代遺跡から得られた約500点の炭化物年代データを集成し、合計確率分布(SPD)法により統計解析を行いました。そのうえで、ナウマンゾウの絶滅時期と現生人類の到達時期を統計的に算定し、両者の共存期間を検討しました。

【研究成果】
本研究の主要な成果は、日本列島におけるナウマンゾウの絶滅年代を更新し、現生人類との共存関係に新たな知見を示した点にあります。
まず、高確度な「限外ろ過法」を用いて化石を再測定した結果、ナウマンゾウの絶滅年代は約3万3000~3万5000年前と推定され、従来説の約2万4000年前よりも約1万年古いことが明らかになりました。これは、従来の測定法では除去しきれなかった微量の新しい炭素による汚染を、長鎖コラーゲンの抽出により効果的に排除できた成果です。
この絶滅年代の修正により、約3万8000~3万9000年前に日本列島へ到達した現生人類とナウマンゾウの共存期間は、想定より大幅に短い約4000~6000年間であったことが示されました。この期間、人類の人口は増加傾向にありましたが、遺跡の分布データを用いた解析では、人類の主な活動地域とナウマンゾウの生息域が、時間・空間的に重なっていない傾向が示されました。
さらに、当時の主要な狩猟具である台形様石器は、大型哺乳類の狩猟に不向きであった可能性も指摘されています。以上の証拠から、ナウマンゾウ絶滅の主因は、人類による狩猟圧よりも、亜氷期と亜間氷期が繰り返された気候変動に伴う生息環境の変化であった可能性が示唆されました。
本研究は、信頼性の高い年代データに基づいて、日本列島における大型哺乳類の絶滅プロセスを科学的に塗り替える重要な意義を持つ成果です。

【将来への展望】
今後は、他産地のナウマンゾウ化石に加え、ヤベオオツノジカ等の他種についても、年代の再測定を進める必要があります。本研究は、後期更新世の化石のコラーゲンを用いた放射性炭素年代測定に関して、適切なコラーゲン抽出法を選択すること、また分析結果を詳細に報告することの重要性を強調します。さらなる調査を通じて、ナウマンゾウの絶滅年代の推定を更新し、現生人類の日本列島への到達時期の精査も含め、大型哺乳類の絶滅プロセスの解明が進むことを期待されます。


【著者一覧】
・日下宗一郎(東海大学人文学部准教授、自然人類学)
・西岡佑一郎(ふじのくに地球環境史ミュージアム准教授、古生物学)
・木村 淳(東海大学人文学部教授、水中考古学)
・岩瀬 彬(東京都立大学人文社会学部助教、考古学)
・森先一貴(東京大学大学院人文社会系研究科准教授、考古学)

論文情報

Soichiro Kusaka, Yuichiro Nishioka, Jun Kimura, Akira Iwase, Kazuki Morisaki, " A refined chronology of the Naumann’s elephant (Palaeoloxodon naumanni) provides a new insight on factors of their extinction(和訳:ナウマンゾウ(Palaeoloxodon naumanni)の洗練された年代が示す絶滅要因への新知見)," Scientific Reports: 2026年5月26日, doi:10.1073/pnas.2512093122.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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