UTokyo研究室発グッズ集
- UTokyo
- 研究室発
- グッズ集
第5回
演習林の木材から作られた、東京大学コミュニケーションセンター(UTCC)の「演習林のおはし」と「演習林のボールペン」。
演習林の目的や歴史、商品に使われている木材などについて農学生命科学研究科附属演習林の教育研究・管理運営に携わる蔵治先生に話を聞きました。
演習林が130年以上育ててきた木材から生まれた箸とボールペン
蔵治光一郎
KURAJI Koichiro
農学生命科学研究科教授
附属演習林企画部長

ウダイカンバ(上)
オオヤマザクラ(下)
演習林のおはし 各2,400円
北海道ウダイカンバ(上)
富士癒しの森ミズナラ(下)
木材の由来を価値につなげる
日本初の大学演習林として千葉演習林が房総半島に創設されたのは、1894年。今から約130年前のことです。教室だけでなく、実際の森で学ぶ必要があるとの考えのもとに始まった東大演習林
は、現在、北海道から愛知まで7か所に広がり、総面積は約33,000ヘクタールに達します。この演習林の木材から生まれたのが、UTCCの「演習林のおはし」と「演習林のボールペン」です。
「木材は市場で売った瞬間にトレーサビリティが失われ、産地がどこなのかわからなくなります。大学の森で育った木だと知ってもらうことで、木材に新たな価値が生まれるのではないかと考えました」と話すのは、農学生命科学研究科の蔵治先生。教育と研究に加えて木材の持続的な生産も演習林の大切な使命だと語ります。
かつては、土木工事、線路の枕木などさまざまな用途に使われ、財産としての価値も非常に高かった木材。その後、1970年頃から輸入材の拡大や素材の置き換えが進み、木材価格は下落しましたが、演習林では持続的に木材を生産しながら、森林を永続させるための研究を行ってきました。毎年、主に北海道演習林から約2万立方メートルの木材を生産していて、売上は概ね1億円。高価なウダイカンバは、丸太1本700万円以上の値がついたこともあるそうですが、安い木材は「立木1本=大根1本」とたとえられるほどだそう。「木材の価値を変えていかないと、森林を持続できない」と蔵治先生は指摘します。
「東大産」の箸とボールペンに使われている木材は、北海道演習林のウダイカンバのほかに、田無演習林のシラカシ、富士癒しの森研究所のミズナラ、秩父演習林のオオヤマザクラの3種。150年から200年くらいかけてゆっくりと硬い木に成長したウダイカンバ。同じく非常に硬い木材のシラカシは、支障木として伐採されたもの。ミズナラは枯れてしまった木の質が良い部分を使いました。そして、「たまたま手に入った」山に自生する原生的なオオヤマザクラ。すべて非常に貴重な木材です。


教育と研究を支える「森」
教育で蔵治先生が特に力を入れているのが、教養学部前期課程の学生への森林教育です。演習林では自然科学、社会科学、情報処理など多岐にわたる研究が行われていて、森林についての知識はどの分野でも役に立つと話します。 2023年度には、教養学部前期課程の約40科目で演習林が利用され、300人以上の学生が森を訪れました。森林水文学という森林の水の循環を研究する蔵治先生は、森林が人に与えてくれている恵みをずっと受け取れるように、未来に持続させていきたいと話します。
「このグッズを手に取った人が、商品の背景にはいろいろな世界があるということを感じてもらうことがその第一歩です。そこから、この木が生えていた山に行ってみようかと思ってもらえると嬉しいです」

