東大の女性主務の歴史を拓いた紀州育ちの野球ガチ勢
東京六大学初の日本人女性投手を生んでから24年。
100年以上の歴史を擁する東大硬式野球部
に、初の女性主務が誕生しました。
和歌山から東大に来た先駆者は、やはり根っからの野球好きでした。
先達の記事を読んで開眼
OKUBATA Hikari
運動会硬式野球部 / 文学部4年
阪神ファンの父の影響で幼い頃から野球好きだった奥畑さん。強豪で知られる地元の中高一貫校、智辯和歌山の出身です。中学でテニス部に入ったのは、コートの隣で練習する野球部が見えるから。母校の応援に熱中する日々のなか、出会ったのは東京六大学野球でした。2018年に初の女性主務となった慶大野球部・小林由佳さんの記事を読み、憧れを抱いたのです。
「それまでは漠然と自宅から通える大学に行くイメージがありましたが、自分も東京六大学のマネージャーをやりたいと思いました」
高校生クイズの大会で上京し、東京でやっていけそうだと感じたことも後押しになりました。野球三昧から一転して高2の初めから受験勉強を始めた奥畑さんが東大を選んだのは、国立なら学費が抑えられるから。母校を応援するなかで芽生えた思いも関係していました。
「強豪チームの1ピースより、強豪を倒すチームの1ピースになるほうが、スタッフとしての貢献を実感できる気がしたんです」
コロナ禍で野球応援の機会が限られ、勉強に集中することができた奥畑さんは、現役で文IIIに合格。合格が判明して1時間もたたないうちに迷わず野球部に入部届を出したそうです。
選手に野球を続けてほしいから
野球部のスタッフ約35人を統括する主務は裏方のトップ。男子マネージャーから選ばれるのが通例で、候補がいない場合は選手がその役を務めてきました。ただし、主務と選手の兼任は不可。
「野球をやろうと思って入部した人が野球をできないなんて残念すぎます。それなら私が、と手を挙げました」
寮生活、合宿の部屋割りの都合、用具や人の運送など、男性主務が求められる理由は複数あります。1年の夏に同期と話し合って候補となりましたが、女性が主務だと話しにくいとの声を耳にし、自ら話しかけることを続け、速成コースに通って運転免許を取得。3年の秋季リーグ戦終了後に主務に就任しました。
苦労は多々ありました。明確だった男女の仕事配分が曖昧になり、疑問の声が出ました。同期の親友の留学時には帰国を指折り数えました。それでもずっと幸せだった、と奥畑さん。最高の思い出は、2025年秋の法大戦です。
「怪我で苦しんだ同期の酒井捷選手が活躍して……。それまでベストだと思っていた新人戦の早大戦を更新する幸せでした」
野球部には出身選手がいない県が一つだけありましたが、昨年度でそれは過去の話になりました。紀州の公立高校野球部を訪問して声をかけたのは、就活より部活に青春を捧げた主務。女性主務の歴史は新年度に引き継がれました。

に登録されています。
※学年・所属などは2026年3月時点のものです。


