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「擬似人流データ」を使って神戸市内のバス需要を推定する|関本義秀

掲載日:2026年6月9日

「擬似人流データ」を使って神戸市内のバス需要を推定する

兵庫県神戸市と共同で、コミュニティバスの需要予測研究を行った関本義秀先生。
2023年度から2年間、関本研究室に出向している神戸市の職員とともに取り組みました。
この研究に活用したのが擬似的に生成した人流データ。
共同研究の内容や、関本先生が長年取り組む人流研究について紹介してもらいます。

2023年10月から運行を開始した神戸市須磨区西須磨地区のコミュニティバス「はまちどり」(乗客定員6名/TOYOTAヴォクシー)。関本先生らが取り組んだ増便需要予測の結果を受けて、2025年8月に2台目が導入されました。

オープンデータで1日の行動パターンを再現

関本義秀
SEKIMOTO Yoshihide
空間情報科学研究センター 生産技術研究所 教授

人の流動に関する研究を20年近く行ってきました。その1つが、人の行動パターンをコンピューター上に再現した「擬似人流データ」の基盤構築です。「自宅→職場→自宅」あるいは「自宅→学校→売店→自宅」など典型的な平日1日の行動は人それぞれ。公開されている統計データや安価に入手できる建築物データなどを使って、それを擬似的に生成しています。2022年には、日本全国約1億2千万人分の擬似人流データが完成しました。

擬似人流の活用事例が、神戸市と共同で行なった須磨区西須磨地区のコミュニティバス「はまちどり」の増便需要予測です。2023年に運行が始まりましたが、利用者が増加し乗車できないケースが出てきていました。2台目を導入すべきか。その判断をするためのシミュレーションを行いました。

私たちの擬似人流データでは、国勢調査、労働力調査、建築物や交通などのデータを組み合わせて、家や職場、学校といった発着地点を一人一人に確率的に割り当てています。その上で、移動手段を決めます。移動にかかる時間をコストに換算し、バスや電車といった交通手段の費用と組み合わせて最適なものを選んでいます。このデータを使い、増便したらどのくらいの人が移動手段にバスを使うのかを推定しました。

シミュレーションでは、1時間に1本を30分に1本に増便すると、乗車人数は約1.5倍に増加。収支の見通しが分かり、導入検討の材料となった結果、2台目の車両導入が決まりました。増便前の実績に対しての再現精度を検証したところ、誤差は1~2割で許容範囲。現在は神戸市内の他の地域でも路線バスのシミュレーションを行なっています。

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乗車実績と乗車シミュレーションとの比較
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下車実績と乗車シミュレーションとの比較

1億2千万人分の擬似人流を無償で提供

ダイナミックに刻々と変化する人の流動は重要なデータインフラです。さまざまな研究に活用され、今回の神戸市のように政策検討にも役立てることができます。コロナ禍下では感染対策にも利用されました。

携帯電話が普及した現在は、民間企業が全地球測位システム(GPS)ベースの人流データを提供していますが、一般的に高価です。またGPSの活用にはプライバシー保護の問題も伴うため、研究目的で利用するのは難しい。推定ベースの人流データの方が使いやすいこともあるのではないかと考え、2008年に立ち上げた「人の流れプロジェクト」では日本全国の擬似人流データを研究者に無償で提供してきました。

擬似人流の精度は、いくつかの自治体で1kmの大きなメッシュを用い、GPSデータによる「実人流」と比較して検証したところ、相関係数は約0.7~0.8となり、大きなズレはないといえます(完全な一致は1.0)。データは定期的に見直し精度を高めていて、今年度末くらいにはver.3.0をリリースする予定です。

現在は大規模言語モデル(LLM)も組み合わせて、簡単なプロンプト(指示文)を入力するだけで擬似人流を生成する研究にも取り組んでいます。将来的には世界の様々な場所の人流をいくつかのプロンプトから生成できるようにしたいと考えています。

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関本先生の共著
『地理空間情報の基礎と活用』(放送大学教育振興会、2022年)別ウィンドウで開く
先端技術を使った地理空間情報システムを紹介(放送大学教材4257)。

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