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生物の謎解明はポケモンへの関心から始まった|川口喬吾

掲載日:2026年1月7日

ゲームと東大 ゲームと東大

生物の謎解明はポケモンへの関心から始まった

1990年代に発売され、爆発的ブームになった初代ポケモンゲーム。
子供時代にこのゲームに夢中になった一人が川口喬吾先生です。
その知見はなぜ課題解決に役立つのか。
架空の生き物であるポケモンへの関心が生物への興味につながり、やがて研究者の道を歩むことになりました。小学生時代の思い出から、生物の謎に挑む研究までを紹介します。

ポケモンと生物の共通法則

川口喬吾 理学系研究科准教授
川口喬吾
理学系研究科准教授
KAWAGUCHI Kyogo

私の専門は生物物理学という生命現象を物理学的な手法を使って研究する学問です。生物に興味をもったきっかけは架空の生物、ポケモンでした。1996年に発売された、初代ゲームボーイ用のゲームソフト『ポケットモンスター赤』(任天堂)でポケモンと出会い、小学生から中学生になる頃まで夢中で遊んでいました。

ポケモンを捕まえ、育成し、進化させて図鑑を埋めていく。友達とポケモンを交換したり対戦したりしながら、強いポケモンの作り方などの情報交換もしていました。初代のポケモンは151種類で、それぞれに個性がありますが、特にバトルにおける強さの比較においては、攻撃力などのステータスや、覚えられるわざの種類といった、データだけが重要です。あるポケモンのステータスを別のポケモンにつけかえたり、覚えられるわざを改変してしまう「裏ワザ」があり、それを使って作ったポケモンを見せあって楽しむような文化がありました。

ポケモンはあくまで人の作ったデータですが、自然界にいる本当の生き物にも、実は似たような側面があります。まず、大腸菌から人間まで、全ての生物はDNA(デオキシリボ核酸)を持っています。生命の部品であるタンパク質を作る過程もほぼ同じ。遺伝情報がDNAからRNAに転写され、タンパク質が合成されますが、そこで使われている遺伝暗号のルールも基本的には共通です。それを実証できる一つの例が、2008年にノーベル賞を受賞した下村脩博士らがオワンクラゲから発見した「光るタンパク質」の遺伝子。大腸菌と人に入れると、どちらの細胞もその遺伝子をオワンクラゲの細胞と同じように解釈して、同じ波長の色を放つ蛍光タンパク質を作ります。生物は生きるルールの根本のようなものが同じで、場合によってはつけかえも可能だということです。そう考えると生物もポケモンのように同列にデータとして並べて比較可能で、編集可能な側面があります。

初代ポケットモンスター『赤』のカセット
ゲームボーイ用のポケモンゲームカセット(川口先生の私物)。初代ポケットモンスター『赤』と『緑』の2種類が1996年に発売され、人気を博しました。

哺乳類と鳥類の背骨数ルール

私はそのような生物に関する共通法則を発見したいと研究に取り組んできました。最近共同研究者と行った研究の一つが、哺乳類や鳥類の背骨数の分析です。魚を除く四肢動物の背骨は、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎、という5つの部位で構成されていますが、それぞれの部位の椎骨数は動物によって違います。例えば首にあたる頸椎は、哺乳類はおおむね7個。鳥類になると10個以下から20個以上までと種によって大きく異なります。古い文献などからデータを集め、世界の博物館に保存されている数百点の骨格標本などを分析したところ、哺乳類では、隣り合う部位の骨の合計数を一定に保とうとする「総数一定型制約」ルールがあり、鳥類では体の前方と後方の椎骨数を等しくしようとする「バランス型制約」ルールがあることを発見しました。

生物にも多くの未解決問題があります。私が一番関心を持っているのは細胞の多様性です。神経細胞や血球細胞など、体の中にある細胞はそれぞれ違う個性を持っています。形も違えば、細胞内で発現しているタンパク質も違う。しかし、全ての細胞は同じ遺伝暗号をもっています。人とバクテリアなどの共通性よりももっと完全な共通性です。それなのに混ざらずに、神経細胞は神経細胞であり続けているのはなぜか。細胞分化現象を支えている根本的なメカニズムががあるのではと考えています。そこを明らかにしたいというのが大きな目標です。

人間の背骨の模型
人間の背骨の模型。首の部分にあたる頸椎の骨は7個。ごくまれに8個ある人がいるそうです。「同じ生物種内でも生じるこのような揺らぎについても調べたいと思います」(川口)
スズメの白骨標本
スズメの白骨標本。スズメのように小さな鳥類になると、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎、それぞれの骨の数を正確に数えるのが難しく、特に博物館の骨格標本調査では共同研究者のサーバスさんが仙椎骨の数を数えるのに苦労したとか。
川口先生の推しゲー
ナナ別ウィンドウで開く』(Mob+)
「手札を少しずつ見せあって、数字のカードを3枚揃えるゲーム。単純なルールのため幼い子供から高齢者までいっしょに遊べますが、探り合い、騙し合いの戦略性もあるので、新しいコミュニケーションが生まれて面白いです」
ナナ

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