『ポケモンGO』が中高年の歩数を増やしていた
2016年7月にリリースされ、子供から大人まで一大ブームを巻き起こしたスマホ向け位置情報ゲーム『ポケモンGO』。
アイテムを取得する「ポケストップ」やポケモンを配置する「ジム」などが各所に置かれ、いつのまにか結構な距離を歩いていることも。
実際にプレイヤーの歩数は伸びたのかを調べた樋野公宏先生の研究を紹介します。
知らぬ間に歩いてしまうゲーム
工学系研究科准教授
HINO Kimihiro
私の専門は都市計画です。犯罪と身体活動の2テーマを軸に、安全で健康に暮らせるまちづくりに関する研究を行ってきました。その「スピンオフ研究」として取り組んだのが、位置情報ゲーム『ポケモンGO』の歩数への影響です。きっかけは、リリース約1か月後にたまたま行った上野公園で、大挙して歩き回るポケモンGOプレイヤーを見たことでした。一斉に同じ方向に歩き始めたと思ったら、今度は反対方向に進んでいく。人をいかに歩かせるか、ということを研究してきた私にとって衝撃でした。


横浜市の健康増進事業「よこはまウォーキングポイント事業」(YWP)参加者データを使い、リリース前1か月(2016年6月)とリリース後8か月(2016年8月から2017年3月)の位置情報ゲーム利用者と非利用者の歩数比較を行いました。対象者は流行のスパンが短い傾向にある若者ではなく、40歳以上の中高年です。YWP参加者に無作為でアンケート調査を送付し、回答してくれた人のデータを使いました。アンケートでは具体的なゲーム名を聞くことは認められなかったため、利用者か否かを確認する質問では「位置情報を使ったゲームアプリ(キャラクターを捕まえる、陣地を取るなど)」と表記。
同一の対象者から多時点にわたり繰り返し測定、比較する「繰り返しのある二元配置分散分析」という手法を使って歩数を比較したところ、10月までの歩数はほぼ同水準でしたが、それ以降は全ての月において位置情報ゲーム利用者の方が上回っていました。なかでも統計的に有意な差があったのは、11月、12月、2月。歩数の差は最大で583歩/日。非利用者グループが歩数を減らす冬でも利用者グループの歩数は維持されていました。属性別分析によると、特に両者の差が大きかったのは55-64歳の年代でした。ゲームに夢中になることによって知らず知らずのうちに歩いている。ゲームの要素を活用する「ゲーミフィケーション」の一例だと思います。

。歩数のポイントに応じて抽選で商品券などが当たります。樋野先生はこの歩数データを使い、横浜市と共同で居住環境と歩数の関係について研究しています。大都市の方が人は歩く
歩くことは身体活動の基本で健康維持にも欠かせません。厚生労働省の指針では成人男女の目標歩数は1日8,000歩、高齢者は1日6,000歩。これまでの研究で分かってきたことは、人口密度が高く駅に近い地区に住む人は歩数が多く、高台にある地区や公共交通が不便な地区の住民は歩数が少ないといったことなどです。
現在は民間企業と共同で、全国数百万人規模の歩数や位置情報といった人流データを分析しています。100人以上のデータがある約1,000市区町村の比較では、平均歩数が多いのは東京や横浜、大阪などの大都市。お店や施設が多く、公共交通も充実しているために出かけるにも便利といった「ウォーカビリティ」が高いとされているエリアで歩いているということ。位置情報ゲームのように、電車を乗り換える際に駅構内を知らず知らずのうちに歩かされているなどといったところもあるでしょう。
今後はこのデータを使って、まちの再開発や公共施設が新設される前後の歩数や人の動きの変化などを調べ、インパクト評価に取り組んでいきたいです。研究を通じて安全で快適に歩ける環境の実現に貢献できればと考えています。


- 樋野先生の推しゲー
- ロゲイニング

「地図を使って、エリア内に多数設置されたチェックポイントを制限時間内に巡るスポーツ。観光や魅力再発見をねらった「街ロゲ」も」


