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産学協創事業キヤノン東大ラボ第1回シンポジウム ―医療情報を利活用した研究開発から社会実装への課題と道筋―

掲載日:2026年5月12日

  2026年4月6日(月)、「医療情報を利活用した研究開発から社会実装への課題と道筋」と題したシンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、キヤノン株式会社との産学協創協定「個々人のQuality of Lifeを最大化し、病とも共生する社会の実現」に基づいて実施してきた活動によるもので、キヤノン東大ラボと東京大学臨床生命医工学連携研究機構が主催し、キヤノン株式会社が共催、内閣府、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の後援のもとに実施されました。会場およびウェビナー視聴者合わせて437名の参加者が集いました。
 医療情報の利活用においては、法制面(個人情報保護法、次世代医療基盤法等)の整備が進んでいますが、研究開発から社会実装までをスムーズに実現するには、まだ課題が残っています。本シンポジウムにおいては、個人情報や医療分野の研究開発に関わる法制度・倫理、医療規制、診療情報などにかかわる研究者・専門家、患者団体や行政関係者の講演やパネルディスカッションを通じて、医療情報をどのように医療の向上に役立てることができるか、さらに、研究開発から社会実装にどのように取り組んでいくべきか、様々な視点から、その方向性を探る議論が展開されました。 
当日は、藤井総長の開会挨拶に続き、キヤノン株式会社メディカルシステム医用研究開発センター古賀章浩上席により、「研究成果をいかに遵法的かつ円滑に製品化へと結びつけるか」、「医療データの提供者と利活用者との責任範囲と信頼構築をどう考えるか」の2点が本シンポジウムの課題として設定されました。
 続く講演では、東京大学Beyond AI 研究推進機構 山崎 知巳副機構長による「Beyond AI 連携事業での取組事例-臨床データ活用による事業展開を中心に-」、東京大学大学院法学政治学研究科 米村 滋人教授による「臨床データ利活用に関する法的課題と解決の方向性」、独立行政法人医薬品医療機器総合機構 石井 健介元執行役員による「医療機器承認審査における臨床データ利活用の留意点等」、東京大学大学院医学系研究科 河添 悦昌教授による「大学病院における臨床データの活用状況」の演目で、データ利活用の現在地が多角的に示されました。
 パネルディスカッションでは、講演者4名に加え、内閣府健康・医療戦略推進事務局の江澤正名次長、NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長、東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授が登壇し、医療機器ソフトウェアや医療用AIシステムの開発等に用いられる医療情報の利活用における課題や、研究開発時に配慮すべき事項について、活発な議論が行われました。特に、情報提供者に対する同意の在り方や、現行法のもとで利活用の対象外とされる匿名化できないゲノム情報の扱いなどが取り上げられ、患者の権利を守りつつ医療技術の向上に向けて最大限活用していくための、法制度および運用面の整備の重要性が改めて強調されました。
 最後に、佐久間一郎特命教授による総括が行われ、今後のキヤノン東大ラボの活動においては、政策動向を見据えつつ、小規模なシステムによるパイロットスタディを重ねながら、データ利活用の環境整備を進めていく方針が示されました。続いて、キヤノン株式会社の瀧口登志夫副社長による閉会の挨拶が行われました。当該課題に直面する多様な立場の関係者との信頼関係を醸成し、本議論の推進に資することへの期待が述べられ、本シンポジウムは盛会のうちに幕を閉じました。
次回は、一般市民,研究者を対象に、個人情報保護法の改正方針と研究者による適切な医療データ利活用体制や、医療データ利活用による医療用DX推進による医療サービスの向上をテーマに開催予定です。
 
産学協創事業キヤノン東大ラボ第1回シンポジウム
<パネルディスカッションの様子>
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