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プランクトンに未来を託す国際提言 国連海洋会議で各国の支持を求める「プランクトン・マニフェスト」日本語版を公開

掲載日:2025年8月19日

現在、私たちの地球は、気候変動、生物多様性の喪失、そして環境汚染という「三重の地球環境危機」に直面しています。これらの問題に対処するためには、陸上のみならず、地球表面の7割を占める海洋や淡水環境に対する理解と対応が不可欠です。とりわけ、海洋や淡水に広く生息する「プランクトン」は、酸素の生産、炭素の隔離、水質の浄化、食物連鎖の基盤など、地球環境を支える重要な機能を果たしています。こうした重要性にもかかわらず、プランクトンに対する科学的・政策的な関心はこれまで限定的でした。この問題意識から、国連グローバル・コンパクト(注1)の海洋スチュワードシップ連合が主導し、国際的な研究者や専門家の協力によって策定されたのが「プランクトン・マニフェスト」です。大気海洋研究所海洋生態系科学部門の濵﨑 恒二教授は、この国際編集チームの一員として本マニフェストの作成に携わり、あわせてその日本語版の作成も担当しました。

マニフェストでは、プランクトン活用型ソリューション(Plankton-Based Solutions:PBS)として、炭素吸収による気候変動緩和、水質浄化、生物多様性保全、さらには食糧・医薬・エネルギー資源としての活用可能性などを提案しています(図1)。また、AIやリモートセンシング、環境DNA解析といった最新技術を活用し、プランクトンの生態的機能を可視化・定量化する手法も取り入れられています。さらに、マニフェストでは10の重点提言が示されており、プランクトン研究への支援、政策決定への反映、国際連携の強化、市民参加型科学(シチズンサイエンス)や教育普及など、多面的な行動が求められています。


図1. 持続可能な開発目標に向けたプランクトン活用型ソリューション

このマニフェストは、2025年6月9日から13日にフランス・ニースで開催された国連海洋会議において、各国の支持を求めて提示されました。プランクトンという「見えない存在」に光を当て、地球環境と人類の共生に向けた新たなビジョンを示す本提言は、今後の海洋政策・環境政策における重要な礎となることが期待されています。

(注1)国連グローバルコンパクト
企業の営利活動に対し、人権・労働権・環境・腐敗防止に関する基本原則を順守し実践するよう求める国際的なイニシアチブ

■マニフェストに関する情報
雑誌名:UN Global Compact Report
題名:The Plankton Manifesto - A call for Plankton-Based Solutions to address The Triple Planetary Crisis (biodiversity, climate & pollution)
著者名: UN Global Compact
ダウンロードサイト:
英語版
https://unglobalcompact.org/library/6242
日本語版
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/PlanktonManifesto.html

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