蔵出し!文書館 第59回

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収蔵する貴重な学内資料から
140年を超える東大の歴史の一部をご紹介

第59回 坪井の謡本と文部省往復と

今から110年前の大正4(1915)年、大正天皇の即位礼にかかわる記念の催しが数々行われました。そのうち、12月7日と8日の2日間にわたって天覧能が催されました。初日は「翁」「高砂」「石橋」、2日目は「橋弁慶」「羽衣」「猩々乱」が、各流儀によって演じられることを、東京朝日新聞が事前に大々的に報じています。演目は、能の五番立てに基づく祝言性の高いものであったことがわかります。
 当館の寄贈資料、文科大学教授坪井九馬三(くまぞう)関係資料に、筆で「大正四、十二、八日夜 恩賜謡曲本(橋弁慶、羽衣、猩々乱)」と新聞紙(大正4年10月31日付「時事新報」)に書かれ、それに包まれていた謡本があります(F0006/S06/SS05/0013)。表紙中央には菊の御紋、表紙全体は金糸銀糸で調えられたものです。本文第1丁には、演目と出演者の一覧を記載し、第2丁以降は、3演目の詞章と胡麻章(節をあらわす記号)を記した、まさに“この日”のために調製された謡本でした。

「大礼使典儀部書類 恩賜謡曲本(橋弁慶、羽衣、猩々乱)」(F0006/S06/SS05/0013)

当館所蔵の、文部省と本学との往復文書「文部省往復 大正四年」では、文部大臣官房秘書課長から12月2日に大学に届いた「宮中ニ於テ催サルヽ夜宴召状伝達方ノ件」に対する、本学の出席者を取りまとめた文書に、坪井や、同じく文科大学教授井上〔哲次郎〕の名もありました(S0001/Mo141/0020)。井上の日記(「巽軒日記」)も当館に寄贈されており、同年12月8日には「夜、宮中の夜宴に赴き、能楽を陪観す」と記されていたのです(F0005/01/0023)。

「文部省往復 大正四年」(S0001/Mo141)

 当館所蔵の教員の個人資料と公文書で、110年前の出来事がここに共鳴し、あらためて資料の面白さを実感することとなりました。

(学術専門職員:星野 厚子)

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